コラム

第五十四回目の専門家コラムは、日本税制研究所の代表理事であり、税理士である朝長英樹先生に執筆していただきました。朝長先生の略歴を文末に掲載させていただきます。今回のコラムにおいては、 国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入について取りまとめていただいております。ご参考にしていただければ幸甚です。

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国庫補助金の圧縮記帳の時期
日本税制研究所
代表理事/税理士 朝長英樹
2014/5/15
国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入の定めが法人税法42条に設けられていることは、周知のとおりです。この定めにおいては、「(国庫補助金等)の交付を受け、当該事業年度においてその国庫補助金等をもつてその交付の目的に適合した固定資産の取得又は改良をした場合(その国庫補助金等の返還を要しないことが当該事業年度終了の時までに確定した場合に限る。)」に圧縮額の損金算入を行うことができることとされています。

 国庫補助金の交付を受ける通常のケースを考えてみると、まず、交付の前に通知を受け、その後、交付を受けることになります。

 国庫補助金の交付を受ける法人は、この通知によって収益が確定したものと解されますので、この交付の通知を受けた場合には、益金の額の計上を行わなければなりません。

 この国庫補助金の通知を受けた時点の益金の額の計上は、法人税法42条の圧縮記帳を行うのか否かとは関係なく、22条2項の定めにより行われることになります。

 このため、国庫補助金の交付の通知を受けた事業年度と実際に交付を受けた事業年度が異なる場合には、いずれの事業年度において圧縮記帳を行うべきかという疑問が生ずることになります。

 以下、固定資産を取得した事業年度が国庫補助金の交付の通知を受けた事業年度であるケースについて検討を行うこととします。

 現在、このようなケースにおいてどのように処理するのかということに関する法令や通達は存在しませんが、昭和40年に制定された次の通達が参考になるものと考えます。

  (返還を要しないことが確定した事業年度終了の日までに固定資産を取得しなかった場合の仮受経理等)

117  国庫補助金等(その返還を要しないことが当該国庫補助金等の交付を受けた事業年度終了の時までに確定したものに限る。)の交付を受けた日の属する事業年度後の事業年度において、その交付の目的に適合する固定資産の取得または改良(以下124までにおいて「取得等」という。)を行う場合には、国庫補助金等について仮勘定として経理し、その取得等をした日の属する事業年度において当該固定資産について、法第42条第1項の規定に準じて圧縮記帳をすることができるものとする。この場合において、仮勘定として経理されている金額は、法人が当該固定資産について圧縮記帳をするとしないとにかかわらず、当該固定資産の取得等をした日の属する事業年度において取りくずして益金の額に算入するものとする。

 この通達には、「法第42条第1項の規定に準じて圧縮記帳をすることができる」というように、法令に準じた効力を通達に持たせることとしている点などに疑問が残らざるを得ませんが、国庫補助金を益金の額に計上する事業年度を後送りして国庫補助金に課税が先行することを避ける実務的な配慮が存在することを確認することができます。

 この通達は、本文中にあるとおり、国庫補助金の交付を受けた日の属する事業年度後の事業年度において固定資産の取得等を行う場合の取扱いであって、本稿のケースにそのまま当てはまるものではありません。

 しかし、この通達において、国庫補助金を益金の額に計上する時期を後送りし、法人税法22条2項による国庫補助金の益金計上時期よりも、42条が設けられた趣旨を重視する解釈を採用することとしている点に注目する必要があります。これは、法人税法42条の趣旨を考慮すれば、少なくとも、結果には妥当性がある、と言ってよいと考えます。

 この通達は、昭和44年の通達改正において廃止されていますが、その廃止理由は、法令の解釈上疑義がないか又は条理上明らかである、というものです。

  この廃止理由に関しても、やや疑問が残らざるを得ませんが、いずれにしても、この通達の取扱いが変更されるということでないことは、間違いありません。

 また、公認会計士協会からの次のような照会に対して「貴見のとおりで差し支えない」とした国税庁の昭和51年5月15日の回答(圧縮記帳に関する会計処理及び表示について(昭51.4.7付調51第2号照会に対する回答))も、上記の通達と同じ考え方を採るものと考えられます。

  3. 国庫補助金、工事負担金等の受入れ、若しくは、収用又は特定の資産の譲渡等のあった事業年度後の事業年度において、これに見合う圧縮対象資産を取得する見込のあるときは、当該圧縮損に相当する金額以内の金額を利益に計上することなく未決算特別勘定等適当な経過科目で処理し、これを国庫補助金等の受入れ等のあった事業年度に係る貸借対照表の負債の部に表示する。

当該未決算特別勘定の残高について、これに見合う圧縮対象資産を取得したとき又は税法に規定する指定期間の経過等により、当該残高の一部又は全部について精算すべき事由が生じたときは、当該事由の生じた事業年度において、当該精算すべき金額に相当する金額を当該残高から取崩し、これを固定資産売却益等の適当な科目をもって利益に計上し、また、これに伴う資産の圧縮損があるときは、当該圧縮損に相当する金額を損失に計上するとともに当該圧縮対象資産の取得価額から減額する。この結果、1に準じて財務諸表の記載を行う。

 このような点からすると、本稿のケースに関しては、法人税法42条の趣旨を勘案し、通知を受けた事業年度で国庫補助金を益金計上せずに交付を受けた事業年度で国庫補助金の益金計上と圧縮記帳とを行うという選択肢と、通知を受けた事業年度で国庫補助金の益金計上と圧縮記帳とを行うという選択肢がある、ということになるものと考えます。

 この後者の選択肢に関しては、上記の通達等から直接に導かれるものではありませんが、法人税基本通達10-2-2(固定資産の取得等の後に国庫補助金等を受けた場合の圧縮記帳)の先行取得に圧縮記帳を認める解釈が冒頭に引用した法人税法42条の「(国庫補助金等)の交付を受け、当該事業年度においてその国庫補助金等をもつてその交付の目的に適合した固定資産の取得又は改良をした場合(中略)」をかなり柔軟に解釈していること、法人税法22条2項の益金の額の計上時期の考え方に即したものであること、課税上の弊害がないことなどから、本稿のケースのように、通知を受けた事業年度と固定資産を取得した事業年度が同一の場合に選択肢としての妥当性があると判断されるものです。

執筆者紹介

略歴

1982年4月
東京国税局入局
1982年4月-1995年7月
成田・京橋税務署、東京国税局調査部において、主に法人税調査・審理に従事
1995年7月-2003年7月
財務省主税局において、金融取引に係る法人税制の改正(2000年)、組織再編成税制の創設(2001年)、連結納税制度の創設(2002年)などの改正を主導
2003年7月-2006年7月
税務大学校勤務、税務大学校教授を最後に退官
2007年3月-
日本税制研究所代表理事
2011年4月-
朝長英樹税理士事務所所長

主な著書

「企業組織再編成に係る税制についての講演録集」日本租税研究協会
「日本型連結納税制度の基本的な考え方と法令等の概要」日本租税研究協会
「公益法人税制」法令出版(共著)
「精説 公益法人の税務」公益法人協会(共著)
「リース税制」法令出版(編著)
「国際的二重課税排除の制度と実務 -外国税額控除制度・外国子会社配当等益金不算入制度-」法令出版(編著)
「会社合併実務必携」法令出版(共著)
「グループ法人税制」法令出版(編著)
「外国子会社合算税制(タックス・ヘイブン対策税制)」法令出版(編著)
「連結納税制度」法令出版(編著)
「組織再編成をめぐる包括否認と税務訴訟」清文社(編著)
「会社分割実務必携」法令出版(編著)
「株式交換・株式移転 実務必携」法令出版(編著)
「解散・清算 実務必携」法令出版(編著)

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