コラム

第五十三回目の専門家コラムは、西村あさひ法律事務所の髙木弘明氏に執筆していただきました。髙木氏の略歴を文末に掲載させていただきます。今回のコラムにおいては、今通常国会で成立する予定の「会社法の一部を改正する法律案」に関して、企業統治に関する改正について取りまとめていただいております。ご参考にしていただければ幸甚です。

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会社法改正法案の概要
西村あさひ法律事務所 弁護士 髙木弘明
2014/4/15

1.はじめに

 「会社法の一部を改正する法律案」(以下「改正法」といいます。)が今通常国会で成立することが見込まれています。改正法の施行日は公布の日から1年6月以内とされていますが、来年前半にも施行される可能性があります。改正法の内容は、大きく企業統治に関するものと企業結合法制に関するものに区別されますが、本稿では、企業統治に関する改正の主な内容について解説します。

2.社外取締役を置いていない場合の理由の開示

 改正法では、事業年度の末日において、監査役会設置会社(公開会社かつ大会社であるものに限る。)であって、株式につき有価証券報告書を提出しなければならないもの(典型的には上場会社)が社外取締役を置いていない場合には、取締役は、当該事業年度に関する定時株主総会において、社外取締役を置くことが相当でない理由を説明しなければならないものとされます(327条の2)。法務省令の改正により、同様の事項について事業報告での開示事項とされることが予定されており、実際には、事業報告の該当箇所に言及する形で説明がされることが予想されます。

 「社外取締役を置くことが相当でない理由」の具体的内容については、東京証券取引所の有価証券上場規程445条の4が「取締役である独立役員」を1名以上確保することの努力義務を定めていることを踏まえ、慎重に検討する必要があります。また、同条については、経過措置が設けられていません。そのため、3月決算の会社の場合、早ければ来年6月開催の定時株主総会からこの説明が求められる可能性がありますので、注意が必要です。

 なお、社外取締役設置のの義務付け等に関しては、附則において、改正法の施行後2年を経過した場合の見直し条項が設けられています(附則25条)。

3.監査等委員会設置会社制度

 改正法では、新たな機関設計として、監査等委員会設置会社制度が導入されます。監査等委員会は、社外取締役が過半数を占める監査等委員会を設け、そこに監査機能及び監督機能を持たせることにより、取締役会の監督機能をより充実させようとする制度です。

 監査等委員は取締役で、その過半数は社外取締役である必要があります(399条の2第2項、331条6項)。監査等委員である取締役とそれ以外の取締役は、選任や報酬決定において区別されます(329条2項、361条2項)。また、監査等委員である取締役の任期は2年とされ、定款又は株主総会決議による任期短縮ができないこととされています(332条3項、4項。他の取締役の任期は1年で、短縮可能です)。監査等委員会及び各監査等委員の権限としては、指名委員会等設置会社(現行法の委員会設置会社)の監査委員会及び各監査委員の権限と同様、(a)取締役の職務の執行の監査及び監査報告の作成、(b)会計監査人の選解任等に関する株主総会議案の内容の決定があります(399条の2以下参照)が、それに加え、(c)監査等委員である取締役以外の取締役の選解任等及び報酬について株主総会で意見を述べる権限も有するものとされています(342条の2第4項、361条6項)。

 現行法の下で、監査役会設置会社については、最低2名の社外監査役の選任が義務付けられており、社外監査役に加えて社外取締役を選任したときに両者の機能が重複するとの指摘があります。監査等委員会設置会社では、監査役が設置されず、社外者として社外取締役2名以上を選任すれば足りることとされますので、社外取締役及び社外監査役の重複を回避することができます。

 また、監査役会設置会社では、取締役会決議事項として法定されている範囲が広いため、取締役会が業務執行の決定をしなければならない場面が多すぎて、監督機能を十分に果たせていないとの指摘もされています。監査等委員会設置会社では、定款の定めにより取締役会決議事項を軽減することができますので(399条の13第6項)、監査等委員会及び取締役会が経営の監督により専念することができるとともに、会社の意思決定の機動性を高めることもできます。このことは、上場会社にとって監査等委員会設置会社へ移行する大きなインセンティブになると考えられます。

4.社外取締役及び社外監査役の要件

 社外取締役及び社外監査役(以下併せて「社外役員」といいます。)の社外性の要件として、①親会社等又は兄弟会社の関係者でないこと及び②当該株式会社の関係者(重要な使用人を含みます。)の配偶者又は二親等内の親族でないことが追加されます。他方で、社外性の要件のうち、いわゆる過去要件の対象期間については、社外役員に就任する前10年間に限定するものとされています(潜脱を防ぐための手当てもされています)。

 特に監査役会設置会社(監査役の半数以上が社外監査役でなければなりません。)においては、現在の社外監査役が改正後の社外要件を満たすかについて、慎重に調査することが必要となります。現行法の下では、子会社の社外監査役に親会社の従業員が就任している事例も少なくないと思われますが、改正法施行後は、そのような者は社外性の要件を満たさないこととなりますので、親会社や兄弟会社以外から新たに社外監査役候補者を招く必要があります。

 社外役員の要件については経過措置が設けられており、改正法の施行の際現に社外役員を置いている会社においては、改正法の施行後最初に終了する事業年度に関する定時株主総会の終結の時まではなお従前の例によることとされています(附則4条)。

5.会計監査人の選任等に関する議案の内容の決定

 現行法では、株主総会に提出する会計監査人の選解任等に関する議案の内容は、監査役(監査役会設置会社にあっては、監査役会)の同意を経て、取締役会が決定することとされていますが、改正法では、監査役(会)が当該議案内容を決定することとなります(344条)。他方、会計監査人の報酬については、監査役(会)は、従前どおり同意権を有します。

 改正に伴い、監査役(会)による当該議案の決定や報酬への同意の理由を、事業報告や監査報告において開示する旨の会社法施行規則改正が行われることが予定されています。

6.まとめ

 このように、改正法は、企業統治に関し、実務に影響を与える重要な事項を含んでいます。また、改正法の成立後に予定されている会社法施行規則等の改正では、事業報告記載事項の拡充等重要な事項が盛り込まれることも予想されますので、その改正動向にも引き続き留意が必要です。

以上

執筆者紹介

  • 西村あさひ法律事務所 アソシエイト
    弁護士・ニューヨーク州弁護士 髙木 弘明

略歴

2001年
東京大学法学部第一類卒業
2005年
早稲田大学大学院アジア太平洋研究科 非常勤講師
2008年
シカゴ大学ロースクール卒業(LL.M.)
2008年-2009年
ニューヨークのポール・ワイス・リフキンド・ワートン・アンド・ガリソン法律事務所
2009年-2013年
法務省民事局参事官室出向(2010-2013年法務省民事局商事課併任)

主な著書

2014年2月
「会社法改正法案の概要と実務対応」
国税速報6300号(2014年2月10日号)
2013年12月
「産業競争力強化法の要点」
ビジネス法務2014年2月号
2013年12月
「取締役の説明義務」
ジュリスト増刊『実務に効くコーポレート・ガバナンス判例精選』

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