コラム

第五十一回目の専門家コラムは、日本税制研究所の代表理事であり、税理士である朝長英樹先生に執筆していただきました。朝長先生の略歴を文末に掲載させていただきます。今回のコラムにおいては、仮装経理に関する税制について取りまとめていただいております。ご参考にしていただければ幸甚です。

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仮装経理の場合の更正の特例
日本税制研究所
代表理事/税理士 朝長英樹
2014/2/14
仮装経理を行って過大申告を行った場合には、修正経理を行わない限り、税務署長は減額更正を行わないことができるものとされています。

 この定めは、法人税法129条1項(仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に関する特例)に設けられていますが、同項について、連結納税に関する部分を削除して引用すると、次のとおりです。

  第129条 内国法人の提出した確定申告書に記載された各事業年度の所得の金額が当該事業年度の課税標準とされるべき所得の金額を超えている場合において、その超える金額のうちに事実を仮装して経理したところに基づくものがあるときは、税務署長は、当該事業年度の所得に対する法人税につき、当該事実を仮装して経理した内国法人が当該事業年度後の各事業年度において当該事実に係る修正の経理をし、かつ、当該修正の経理をした事業年度の確定申告書を提出するまでの間は、更正をしないことができる。

 この定めは、昭和41年度税制改正において、更正の特例として創設されたものです。

 この更正の特例は、粉飾決算による法人税を還付することと還付加算金を付すことに対する制限の必要性から措置したものとされており、現在も、上記の法人税法129条1項は、135条1項(仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う法人税額の還付の特例)と一体の仕組みと理解されています。

 創設時の解説は、次のように述べています。

  「最近においては、会社が粉飾決算を行って、かつ、その決算に基づいて一たん過大に法人税を納付し後日その決算による納付額は過大であることを申出でて過大税額の還付を求め、かつ、これに還付加算金を付するなどの事態が生じています。」(大蔵省主税局『昭和41年 改正税法のすべて』(大蔵財務協会)66頁)

「なお、この基本的な考え方としては、粉飾決算によって過大申告が行われた場合においては、その粉飾事業年度における過大申告分はそのままとし、その過大申告分はじ後の確定した決算において修正したところに基づいて更正が行われた事業年度の損失とみなすという考え方に立っているのである。つまり、更正の日前一年以内に開始した事業年度に納付した法人税について繰戻し1年、繰越5年という方式に拠っているわけです。ただ、このような発想によったものではありますが、改正法は、これを税額の還付の問題として上述の発想を具体化したわけです。」(同前67頁)

 この仮装経理に基づく過大申告に関する取扱いは、(1)更正、(2)還付、(3)還付加算金という3つの取扱いに分けて捉えることができますが、これらの3つの取扱いは、不可分一体のものというわけではありません。(1)更正の取扱いが設けられない場合であっても、(2)還付と(3)還付加算金に関して仮装経理に基づく過大申告の更正を行う場合の特例を設けることは、当然、可能です。

 このため、仮装経理に基づく過大申告の場合に、(1)更正の特例を設ける必要があったのかということに関して、(2)還付と(3)還付加算金の取扱いと切り離して検討することが可能です。

 換言すれば、(1)更正の特例を設けるということであれば、(2)還付と(3)還付加算金に関する立法措置の必要性とは別に、その理由を説明しなければならない、ということです。

 この(1)更正の特例を設ける理由とされたと思われるものを当時の解説から探ってみると、次のような記述が存在します。

  「ただ、減額更正は全く誤謬に基づく以外は本来納税者が故意に税額を過大に納付することはありえないことであります。」(同前67頁)

「粉飾決算による過大納付については、現在の税法は減額更正すべきことについては予想されていないところであって、」(同前67頁)

「この趣旨は、粉飾決算をして過大納付した税額を本来の財務諸表において修正してはじめて課税官庁としては、一般の計算誤謬等の善意の納税者と同列に取り扱うこととしているのであります。」(同前69頁)

 これらの記述に対しては、仮に「現に、故意に税額を過大に納付するということがあるわけであり、善意の納税者より以上に納税を行っているわけであるから、課税官庁としては、「有り難う!」と言えばよいだけである。」と反論を行ったとすれば、果たして、どのような再反論が返ってくることとなるのでしょうか。

 「粉飾決算による過大納付については、現在の税法は減額更正すべきことについては予想されていない」ということですが、現在の税法における減額更正の要件(通法23(1))においては、そもそも更正が必要となる事由に関する 動機 は問題とされていませんので、動機に関する「予想」を問題とする必要はありません。

 また、法人税法129条1項においては、企業会計上の「修正の経理」を要件として減額更正を行うこととされていますが、税法上の必要性に基づいて講じた措置において、企業会計上の処理を要件とするということになれば、措置の創設理由と要件に整合性が無いという指摘を免れ得ないと考えます。

 ところで、この「修正の経理」に関しても、疑問があります。

 この「修正の経理」は、創設当時から、次のように説明されています。

  「この場合の修正の経理というのは、その粉飾した事業年度についてさかのぼって修正することはできませんから、当期において、たとえば「前期損益修正」というようにして修正することとなるのであります。」(同前69頁)

 しかし、周知のとおり、法人税基本通達2-2-16(前期損益修正)においては、次のとおり述べて、前期損益修正損に関しては、遡って損失の額を前期以前の損金の額とするのではなく、当期の損金の額とすることを明らかにしています。

  「2-2-16 当該事業年度前の各事業年度(その事業年度が連結事業年度に該当する場合には、当該連結事業年度)においてその収益の額を益金の額に算入した資産の販売又は譲渡、役務の提供その他の取引について当該事業年度において契約の解除又は取消し、値引き、返品等の事実が生じた場合でも、これらの事実に基づいて生じた損失の額は、当該事業年度の損金の額に算入するのであるから留意する。」


 仮装経理に係る「修正の経理」における「前期損益修正」は、上記通達の「前期損益修正」と同じく、企業会計上の同じ用語を用いながら、いずれの時期に損金の額に算入するのかという最も重要な点で、正反対の処理をすることとしているわけです。仮装経理に係る「修正の経理」に関する上記の説明によれば、「前期損益修正損」は、前期以前の損金の額とするべきものであり、他方、上記通達によれば、「前期損益修正損」は当期の損金の額とするべきものであるということになります。

 素直に考えれば、当期の損金の額としないものは、「「前期損益修正」というようにして修正することとなる」ということにはならないのではないか、という疑問が生じてきますが、そもそも仮装経理に対処するに当たって「修正の経理」を求めること自体が不要なことではないのか、という制度の根本に関する疑問も生じて来ざるを得ないように思われます。

 また、近年は、多数のみなし事業年度が存在する状態となっており、「決算」のない申告を求める場面が数多く存在します。

 加えて、企業会計においては、昭和41年当時とは異なり、「前期損益修正損」等を計上せずに過年度の財務諸表を修正する「修正再表示」の仕組みも導入されています。

 以上のような事情を勘案すれば、現在に至っては、この法人税法129条1項の規定は、廃止を検討してもよいのではないかと考えます。

執筆者紹介

略歴

1982年4月
東京国税局入局
1982年4月-1995年7月
成田・京橋税務署、東京国税局調査部において、主に法人税調査・審理に従事
1995年7月-2003年7月
財務省主税局において、金融取引に係る法人税制の改正(2000年)、組織再編成税制の創設(2001年)、連結納税制度の創設(2002年)などの改正を主導
2003年7月-2006年7月
税務大学校勤務、税務大学校教授を最後に退官
2007年3月-
日本税制研究所代表理事
2011年4月-
朝長英樹税理士事務所所長

主な著書

「企業組織再編成に係る税制についての講演録集」日本租税研究協会
「日本型連結納税制度の基本的な考え方と法令等の概要」日本租税研究協会
「公益法人税制」法令出版(共著)
「精説 公益法人の税務」公益法人協会(共著)
「リース税制」法令出版(編著)
「国際的二重課税排除の制度と実務 -外国税額控除制度・外国子会社配当等益金不算入制度-」法令出版(編著)
「会社合併実務必携」法令出版(共著)
「グループ法人税制」法令出版(編著)
「外国子会社合算税制(タックス・ヘイブン対策税制)」法令出版(編著)
「連結納税制度」法令出版(編著)
「組織再編成をめぐる包括否認と税務訴訟」清文社(編著)
「会社分割実務必携」法令出版(編著)
「株式交換・株式移転 実務必携」法令出版(編著)
「解散・清算 実務必携」法令出版(編著)

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