コラム

第四十五回目の専門家コラムは、日本税制研究所の代表理事であり、税理士である朝長英樹先生に執筆していただきました。朝長先生の略歴を文末に掲載させていただきます。今回のコラムにおいては、平成23年度の税制改正における「当初申告要件についての改正」について取りまとめていただいております。ご参考にしていただければ幸甚です。

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当初申告要件は廃止されたのか
日本税制研究所
代表理事/税理士 朝長英樹
2013/8/15

 平成23年度改正において、いわゆる当初申告要件について改正が行われたわけですが、更正処分の場合に、当初申告の金額までしか税額控除等が認められない状態となっていることに、次のような疑問の声が出ています。
 「法人税が増加するという点では変わらないのに、修正申告や更正請求では追加の税額控除が認められて、更正処分では認められないのはおかしいのではないか」(T&Aマスター No.501 2013.6.3)
 この平成23年度における当初申告要件の改正を振り返ってみましょう。

1.「平成23年度税制改正大綱」における当初申告要件の改正部分の記載

 「平成23年度税制改正大綱」(財務省。以下、「大綱」といいます。)においては、当初申告要件に関する改正部分について、次のように記載されています。

「(1) 更正の請求の範囲の拡大
当該申告時に選択した場合に限り適用が可能な「当初申告要件」がある措置について、次のとおり見直し、更正の請求範囲を拡大します。
現行、当初申告要件がある措置について、下記(イ)及び(ロ)のいずれにも該当しない措置(別紙1参照)については、「当初申告要件」を廃止します(所要の書類の添付を求めることとします。)。
(イ) インセンティブ措置(例:設備投資に係る特別償却)
(ロ) 利用するかしないかで、有利にも不利にもなる操作可能な措置(例:各種引当金)

控除等の金額が当初申告の際に記載された金額に限定される「控除額の制限」がある措置(別紙2参照)について、更正の請求により、適正に計算された正当額まで当初申告時の控除額を増額させることができることとします。」

上記の「別紙1」には、受取配当等の益金不算入制度における当初申告要件(法法23(7))などが掲げられており、「別紙2」にも、受取配当等の益金不算入制度における当初申告要件(同前)などが掲げられています。

上記引用中の「イ」において、「「当初申告要件」を廃止します」と述べて受取配当等の益金不算入制度における当初申告要件を別紙1に掲げておきながら、「ロ」において「更正の請求により、適正に計算された正当額まで当初申告時の控除額を増額させることができることとします」と述べて別紙2に再び受取配当等の益金不算入制度における当初申告要件を掲げていることに疑問を感ずる方も少なくないと思われますが、これは、「当初申告要件」を一般に解されているものよりも狭く解しているためです。

すなわち、大綱においては、「当初申告要件」とは「申告時に選択した場合に限り適用が可能」とする要件と解し、「控除等の金額が当初申告の際に記載された金額に限定される」ものを「控除額の制限」と解して「当初申告要件」とは分けて捉えています。

2.平成23年度の受取配当等の益金不算入制度の改正

 平成23年度改正において、法人税法23条7項は、次のように改正されています。

<改正前>
「7 第一項の規定は、確定申告書に益金の額に算入されない配当等の額及びその計算に関する明細の記載がある場合に限り、適用する。この場合において、同項の規定により益金の額に算入されない金額は、当該金額として記載された金額を限度とする。」
 
<改正後>
「7 第一項の規定は、確定申告書、修正申告書又は更正請求書に益金の額に算入されない配当等の額及びその計算に関する明細を記載した書類の添付がある場合に限り、適用する。この場合において、同項の規定により益金の額に算入されない金額は、当該金額として記載された金額を限度とする。」

平成23年度改正においては、上記の改正の前後を比較してみると分かるとおり、「確定申告書」に「明細の記載」がある場合にだけ、受取配当等を益金不算入とすることが認められていたものを、「確定申告書、修正申告書又は更正請求書」に「明細を記載した書類の添付」がある場合にだけ、受取配当等を益金不算入とすることを認めることに改めています。

3.平成23年度の当初申告要件に係る改正の検討

 上記1の大綱の記載と上記2の改正を突き合わせてみると、大綱の記載どおりに改正が行われていないことが分かります。

 上記1において引用した大綱の「イ」においては、「「当初申告要件」を廃止します」と述べていますが、「当初申告要件」(大綱における整理に従えば、「「申告時に選択した場合に限り適用が可能」とする要件」)は、上記2において引用した平成23年度改正後の法人税法23条7項の規定を見ると分かるとおり、改正前の「確定申告書」が「確定申告書、修正申告書又は更正請求書」に拡大されて「当初申告等要件」となり、その中に含まれて残った状態となっています。

 「当初申告要件」を廃止するということであれば、当初申告時に適用することを選択していない場合であっても適用が認められるようにならなければなりません。

 例えば、当初申告において、受取配当等の益金不算入の制度の適用を選択していない場合であっても、同制度を適用して減額更正が行われる、ということにならなければならないわけです。

 これは、大綱のように、「当初申告要件」を「「申告時に選択した場合に限り適用が可能」とする要件」と捉えたとしても、何ら変わるものではありません。

 このように、大綱では「「当初申告要件」を廃止します」と述べておきながら、実際には、「当初申告要件」を廃止していないために、冒頭のような疑問の声が出てくることとなっているわけです。

 上記1に引用した大綱の「ロ」を見ると、「控除等の金額が当初申告の際に記載された金額に限定される「控除額の制限」がある措置(別紙2参照)について、更正の請求により、適正に計算された正当額まで当初申告時の控除額を増額させることができることとします。」と述べて、別紙2において、受取配当等の益金不算入制度を掲げていますが、「イ」において「「当初申告要件」を廃止します」と述べておきながら、「ロ」において、このように更正の請求により当初申告時の控除額を増額させることができるようにする、ということ自体が、そもそもおかしいわけです。「当初申告要件」を廃止するのであれば、控除額を増額する更正が認められるようになることは当然であり、わざわざ「更正の請求により、・・・」とする必要はありません。

 しかも、更正の請求は、何度でも提出することが可能ですから、「更正の請求により、適正に計算された正当額まで当初申告時の控除額を増額させることができる」ということであれば、控除額を増額したいという納税者は、更正の請求を行えばよいわけです。

 税務調査によって更正処分が行われてその更正処分の際には控除額を増額してもらえなかったとしても、その更正処分の後に更正の請求を行えば、控除額を増額してもらうことができることになります。

 控除額の増額を行ってもらっては困るという納税者は居ないわけですから、税務調査による更正処分で控除額を増額しなかったとしても、更正の請求によって控除額を増額することになるということであれば、税務調査による更正処分の際に控除額を増額できるようにする、というのが常識的な立法判断であると考えます。

 このように、「更正の請求により、適正に計算された正当額まで当初申告時の控除額を増額させることができる」という制度は、そもそも制度としての合理性を欠く、と言わざるを得ません。

執筆者紹介

略歴

1982年4月
東京国税局入局
1982年4月-1995年7月
成田・京橋税務署、東京国税局調査部において、主に法人税調査・審理に従事
1995年7月-2003年7月
財務省主税局において、金融取引に係る法人税制の改正(2000年)、組織再編成税制の創設(2001年)、連結納税制度の創設(2002年)などの改正を主導
2003年7月-2006年7月
税務大学校勤務、税務大学校教授を最後に退官
2007年3月-
日本税制研究所代表理事
2011年4月-
朝長英樹税理士事務所所長

主な著書

「企業組織再編成に係る税制についての講演録集」日本租税研究協会
「日本型連結納税制度の基本的な考え方と法令等の概要」日本租税研究協会
「公益法人税制」法令出版(共著)
「精説 公益法人の税務」公益法人協会(共著)
「リース税制」法令出版(編著)
「国際的二重課税排除の制度と実務 -外国税額控除制度・外国子会社配当等益金不算入制度-」法令出版(編著)
「会社合併実務必携」法令出版(共著)
「グループ法人税制」法令出版(編著)
「外国子会社合算税制(タックス・ヘイブン対策税制)」法令出版(編著)
「連結納税制度」法令出版(編著)
「組織再編成をめぐる包括否認と税務訴訟」清文社(編著)
「会社分割実務必携」法令出版(編著)
「株式交換・株式移転 実務必携」法令出版(編著)
「解散・清算 実務必携」法令出版(編著)

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