コラム

第四十四回目の専門家コラムは、西村あさひ法律事務所の中山龍太郎先生に執筆していただきました。中山先生の略歴を文末に掲載させていただきます。今回のコラムにおいては、成長が続くアフリカ大陸の今後の可能性について取りまとめていただいております。ご参考にしていただければ幸甚です。

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「新大陸」アフリカに潜むチャンスとリスク
西村あさひ法律事務所 パートナー 弁護士・ニューヨーク州弁護士 中山龍太郎
2013/7/16

 先月、横浜で第5回アフリカ開発会議(TICAD V)が開催され、アフリカの54カ国のうち51カ国が参加し、39カ国から首脳が来日し、安倍首相は国際機関の要人も含め約50の首脳会談をこなしたとされる。

 これは、史上最大級のアフリカを主題とした国際会議であり、世界からも多くの注目を集め、最終日である6月3日には「『横浜宣言2013』躍動のアフリカと手を携えて」及び「TICAD V横浜行動計画」が採択されると共に、日本もTICAD Vの行動計画に基づいて今後5年間でODA約1.4兆円(140億ドル)を含む最大約3.2兆円(320億ドル)の支援をコミットした(これらのTICAD Vの成果文書については、外務省のホームページ( http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/page2_000016.html )に掲載されているので、適宜参照されたい)。

 このような動きに遅れて、6月末には、米国のオバマ大統領も南部アフリカを訪問するなど、一気にアフリカに注目が集まり、アフリカに関する情報量も飛躍的に増えてきた。

 その中で、従来、我々が持ってきたアフリカのイメージと実像のギャップが明らかになりつつある。

1.「投資」対象としてのアフリカ

 アフリカという地域に対して我々が従来典型的に有していたイメージは、飢餓とAIDSに苛まれる「貧困」の支配する大陸というものだったのではなかろうか。

  もちろん、今でもアフリカが世界で最も貧しい地域の一つであることに変わりはない。しかしながら、アフリカにおける1人当たりGDPは、ここ10年で既に2倍以上になっている上に、更に成長を続けている。また、自由裁量所得を有する世帯年間所得5000米ドル以上の所得層も、既に2008年には8000万世帯以上あり、2020年には1億2800万世帯となり、5000万米ドル未満の世帯数を上回ることが予測されている。

  より実感の湧くところで言えば、ケニアでは既に人口の3割にあたる1300万人が携帯電話を用いたモバイルバンキング・サービスを利用し、セネガルの首都ダカールにはドイツ車のディーラーやフランスのスーパーマーケットが出店し、スマートフォンが普及している。

  既にアフリカは単なる支援対象や資源産出国ではなく、10億人以上の潜在的な顧客を抱える巨大な潜在的消費市場として動き始めている。もちろん、それに伴う急激な都市化や近代化を支えるためのインフラ投資の上でも極めて魅力的な投資対象である(上記の日本による320億ドルの支援のうち65億ドルはインフラ整備に向けてのものである)。

  アフリカへの投資については、中国が先行していることはよく知られているが、日本企業も既に350社以上がアフリカ各地に進出しており、また、昨年豊田通商がアフリカ専門のフランス最大手商社CFAO社を買収したことに象徴されるように、アフリカは既に日本企業にとっても重要な戦略目標地となっており、前述した320億ドルの日本政府による支援枠を追い風として益々日本企業のアフリカへの投資は進むことが予想される。

2.アフリカ投資のリスク・マネジメント

 とはいえ、アフリカは日本企業にとってのみならず、他の先進国企業にとっても尚不確実性の高い地域である。こうした不確実性は、アフリカが米国、中国、ヨーロッパ(除ロシア)、インドを足した面積よりも大きく、そこに54カ国もの国がひしめいているという多様性によって更に高まることとなる。

  実際の投資や進出にあたっては、個別国の情報を丁寧に集めることが必要となるが、とりわけリーガル・リスクという観点からは、以下の点を念頭に置いておくことが有用である。

① 経済ブロックの把握

 前述のようにアフリカには54カ国もの国が存在するが、経済的には、複数の国々が形成している経済ブロックが存在する。これらは、地理的な距離や、旧宗主国の共通性に応じて形成されているが、これらの経済ブロック間では、程度の差こそあれ経済的な法規制について規制の共通化がなされている。

  例えば、カメルーンやコンゴが参加するCEMACやセネガルやトーゴ等が参加するUEMOAにおいては経済ブロックの共通立法が各国法に優先するとされており、また、これらを含めたOHADA(Organization for the Harmonisation of Business Law of Africa)加盟国では商取引法等について統一法(Uniform Act)が制定されている。

  従って、例えば投資を検討している国について十分な法的な情報がない場合でも、当該対象国が加盟している経済ブロックを把握していれば、同一の経済ブロック内での法律情報や先例を応用することでリーガル・リスクを把握することが可能となる。

② 紛争解決手段の確認

 アフリカ諸国は、単に法制度自体が未整備ないし不確実のみならず、往々にして裁判所等の司法制度も十分に機能していないことがある。このような場合には、法制度を把握したり、あるいは、契約上の手当を行うだけでは、必ずしも実際に権利が侵害された場合に救済を受けることが困難な場合も出てくる。

  このような問題はアジア等でも生じ、多くの場合は仲裁が利用されるが、アフリカについては仲裁についての基本的な条約であるニューヨーク条約を批准している国が未だ少なく、単純に従来の新興国投資において用いている仲裁規定を用いるだけでは十分な保護を受けられない可能性がある。

  前述した経済ブロックの中には、経済ブロック内で適用される仲裁ルールを有している場合がある。仲裁地や仲裁ルールについて、完全に先進国と同様とはいかないものの、慎重に仲裁地を選択することにより、一定程度、個別国の司法制度の不備に伴うリスクを補うことが可能となる。

③ 直接投資か第三国経由投資か?

 魅力的な投資対象となりつつあるアフリカではあるが、一方で、大きなリスクを抱える中で、リーガル・リスクをコントロールする上では投資形態も重要である。

  例えば、インド洋に浮かぶモーリシャスは東京都とほぼ同じ程度の面積の小さな島国であるが、政治的、法制度的にも極めて近代的であり、東南部・南部アフリカの経済共同体(SADC,COMESA)に所属している他、二国間投資条約も多く締結している。そこで、例えば、アフリカへの投資にあたって、モーリシャスに中間持株会社を置くことによって、アフリカ各国への投資にあたって契約上の紛争解決手段として仲裁を用いたり、また、二国間条約上の投資仲裁を用いるという選択肢も可能となる。

  加えて、モーリシャスはアフリカ域内の13カ国を含む38カ国との二重課税防止条約を締結しており、配当やキャピタルゲイン課税を回避しながら、アフリカ投資を行うといった税務ストラクチャリング上の利便性も有する。

  近時、シンガポールを経由したインド投資等がリーガル・リスクや税務上の効率性の観点から注目されているが、アフリカ投資にあたっても、こうした初期の投資ストラクチャーの検討が重要である。

3.「暗黒大陸」から「希望の大陸」へ

  筆者自身、アフリカ案件については、まだまだ勉強を始めた段階であり、専門家を名乗れるような状態ではないが、ここ数ヶ月、多くのアフリカ関係の実務家と会い、情報を収集する中で、アフリカの持つ大きな可能性にすっかり魅了され、このコラムを書いている。

  もし、このコラムを読まれた方の中で、同じようにアフリカの可能性に魅了され、未知の大陸にチャレンジされようという方がいれば、まずは情報交換ということでもお声がけ頂ければ幸いである。

以上

執筆者紹介

  • 西村あさひ法律事務所 パートナー
    弁護士・ニューヨーク州弁護士
    中山龍太郎

略歴

1995年
東京大学法学部第二類卒業
1997年
東京大学法学政治学研究科修士課程(研究者養成コース)修了
2004年-2005年
ニューヨークのワイル・ゴッチェル・マンジェス法律事務所
2006年
ニューヨーク大学ロースクール卒業(LL.M.)
2007年-
中央大学法科大学院 非常勤講師
2008年-2009年
成蹊大学法科大学院 非常勤講師

主な著書

「私的整理計画策定の実務」商事法務(共著)
「金商法大系1 - 公開買付け(1)」商事法務
「金融商品取引法セミナー 公開買付け・大量保有報告編」有斐閣
「ファンド法制 -ファンドをめぐる現状と規制上の諸課題- 」財経詳報社(共著)
「資金調達ハンドブック」商事法務
「敵対的買収の最前線 -アクティビスト・ファンド対応を中心として- 」商事法務
「企業買収防衛戦略II」商事法務
「敵対的M&A対応の最先端」商事法務
「企業買収防衛戦略」商事法務
「ゼミナール 会社法現代化」商事法務
「新しい株式制度 -実務・解釈上の論点を中心に- 」有斐閣

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