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金融円滑化法後の事業再生を巡る動向
株式会社アミダスパートナーズ
2013/5/1

1. はじめに

 2009年12月に施行された中小企業金融円滑化法は、当初時限立法として制定されたものの、その後の欧州危機や東日本大震災などにより、とりわけ中小企業を取り巻く経営環境が一段と悪化したことを受けて2度にわたり延長措置がなされることとなりましたが、本年(2013年)3月末をもってついに終了することとなりました。同法の期限切れによって、金融機関に対する返済猶予等の申請が困難となり、経営破綻する中小企業が急増するのではないかとの懸念が取り沙汰される一方で、同法の期限切れを見据えた各種支援策の整備の動きも本格化しています。
 本稿では、中小企業金融円滑化法に基づく貸付条件の変更等の状況、および、同法期限切れ後に向けた事業再生(とりわけ中小企業に対する)を巡る動向について概観してみたいと思います(執筆時点:2013年4月上旬)。

2. 金融円滑化法に基づく貸付条件変更等の状況

 金融庁の公表資料によると、金融円滑化法施行日から2012(平成24)年9月末までに、同法に基づく貸付条件の変更等が行われた件数(貸付債権ベース)は340万件超、金額にすると95.7兆円にのぼる状況となっています(下表の「実行(B)」欄参照)。同資料からは、実際に貸付条件の変更等を受けている企業の数は直接読み取ることはできませんが、推定では30万~40万社とも、さらにはまた50万~60万社ともいわれています。正確な数字がいずれかはさておいても、全国の中小企業の数が約400万社といわれる中にあって、およそ1割近くの企業が、借入金の返済猶予を含めた何らかの条件変更を受けてきたことを意味しているものといえます。
 このように、金融円滑化法は、いわゆるリーマン・ショックから続く国内景気の急激な悪化に伴う中小企業の経営危機に対し、その安全網として一定程度の役割を果たしたと考えられる一方で、本来であれば再編・淘汰されるべき産業や企業を延命させることによって、わが国におけるデフレ脱却の遅れを招く大きな要因のひとつとなったという批判もみられます。本年3月末で同法が期限切れとなったことに伴い、真の意味での中小企業および地域経済の再生に向けた取り組みが求められるものと考えられます。

中小企業金融円滑化法に基づく貸付条件の変更等の状況について (施行日から平成24年9月末までの実績)

3. 「金融円滑化法後」に向けた動き

金融行政の動き
 金融円滑法施行から1年あまりが経過した2011年4月、金融庁より「中小企業等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律に基づく金融監督に関する指針(コンサルティング機能の発揮にあたり金融機関が果たすべき具体的な役割)」が公表されました。これは、金融機関が、金融円滑法により貸付条件の変更等を行った債務者に対し、経営再建計画の策定支援、貸付条件の変更等を行った後の継続的なモニタリング、経営相談、指導といったコンサルティング機能を発揮することによって、債務者の経営改善・事業再生等に向けた自助努力を最大限支援していくことを求めるものであり、債務者の経営課題を把握・分析したうえで、最適なソリューションを提案・実行することとされています。
 特に、事業再生や業種転換が必要とされる債務者に対しては、企業再生支援機構や中小企業再生支援協議会等との連携や、企業再生ファンドの組成・活用などを行いながら、DES(債務の株式化)・DDS(債務の劣後化)やDIPファイナンスの活用、および債権放棄といったソリューションを提案することが例として挙げられています。

(参考) 事業の持続可能性等に応じて提案するソリューション(例)

 その後、2012年4月には、内閣府・金融庁・中小企業庁の連名により「中小企業金融円滑法の最終延長を踏まえた中小企業の経営支援のための政策パッケージ」が公表されました。ここでは、「1. 金融機関によるコンサルティング機能の一層の発揮」「2. 企業再生支援機構及び中小企業再生支援協議会の機能及び連携の強化」「3. その他経営改善・事業再生支援の環境整備」の3点が大きな柱とされ、特に上記3.については、金融機関や事業再生の実務家・各種専門家および国・地方公共団体等からなる「中小企業支援ネットワーク」の構築、地域金融機関と中小企業基盤整備機構との連携による事業再生ファンドの設立の促進、資本性借入金を活用した事業再生支援の強化、などといった環境整備のための施策が掲げられています。

地域再生ファンドの組成
 こうした状況の中、全国各地域において、中小企業を対象とした企業再生ファンドの新規組成が再び活発化しており、地域金融機関が事業再生の請負会社などと共同でファンドを設立するケースや、または中小企業基盤整備機構と共同でいわゆる官民ファンドを設立するケースが相次いでいます。2012年度の企業再生ファンドの新規設定額は1000億円を超える見通しであるとされています(日本経済新聞 2013/2/13付)。
 また、日本経済新聞が実施した「地域経済500調査」によると、金融円滑法に備える対応として地域金融機関の55%が再生ファンド設立を挙げており、今後、これらファンドを通じた中小企業の再生支援が全国各地域において本格化するものと考えられます(日本経済新聞 2013/3/25付)。

主な中小企業再生ファンドと出資者

地域経済活性化支援機構の発足
 2013年3月18日に、企業再生支援機構が改組され新たに「地域経済活性化支援機構」が発足しました。同機構による再生支援に関しては、個別の中小企業の事業再生を手がける手法と、地域や複数の企業を一体で再生する手法の2つのケースが想定されており、前者については「事業再生ファンド」として全国に計20基金を、後者については「地域再生ファンド」として47都道府県に1基金ずつを、いずれも地域金融機関など民間との共同出資を通じて設立することが予定されています。また、ファンドとは別に手がける機構の直接支援では、中小企業向けの出融資枠を1兆円に拡充するとともに、再生計画の策定や債権買取りなどを決定できる期限を2018年3月末までとすることとなっています(日本経済新聞 2013/3/19付)。

4. 事業再生スキーム~企業再生支援機構の例~

 債務者企業の事業のうち収益性のあるものを会社分割や事業譲渡等の手法によって別会社に承継させ、旧会社(債務者企業)を特別清算手続や破産手続によって清算させる手法は、特に「第二会社方式」と呼ばれ、近年では事業再生手法として定着しています。金融機関など債権者側にとっては、実質的に債権放棄と同様の効果をもたらすものとして、これに代替する手法として利用が進んでおり、また、いわゆる産活法に基づく第二会社方式による再生計画の認定制度(中小企業承継事業再生計画)も制定されるなど、事業再生スキームとしての第二会社方式の利用は、特に中小企業の再生支援において広く用いられてきているものと思われます。
 旧企業再生支援機構による再生支援案件といえば、JALグループやウィルコムといった大型案件が注目を集めましたが、公表されている再生支援案件事例集(平成24年11月)によると、医療法人や学校法人なども含め合計28の案件が支援対象として挙げられています。それぞれの再生スキームを整理しますと、下表の通り、第二会社方式を用いたものが非常に多くみられることが分かります。
 第二会社方式は、会社分割や事業譲渡といったM&Aの手法(事業移転手続)を採るほか、移転事業の価値評価(のれんの評価)、許認可の継承、登録免許税や不動産取得税といった移転コストなど、様々な論点が存在することから、その実施にあたっては、金融機関等との同意を得ながら進めていくことはもちろん、各種専門家による支援も適宜得ながら進めていくことが重要であると考えられます。

旧企業再生支援機構による再生支援案件における再生スキーム

5. 終わりに

 「モラトリアム法」とも呼ばれた中小企業金融円滑化法の期限切れを迎えるにあたっては、「同法の期限切れ到来後も貸付条件の変更等や円滑な資金供給に努めるべきという金融機関の役割は何ら変わらない」という趣旨の金融担当大臣談話が発表されるなど、これまでの状況が全く変わらないかのような印象を与える行政側の対応もみられています。もちろん、債務者企業にとって急激な事態の悪化が生じないような配慮は必要と考えられますが、とはいえ、本来行われるべき経営改善がなされないままに返済猶予だけが続くといったような状況は、当該債務者企業や貸手である金融機関、ひいては地域経済にとっても好ましいものではありません。
 その意味で、前述のように、地域の中小企業を支援するための様々なインフラや政策の整備が進んでいることは、中小企業の再生に向けた重要な一歩であると考えられます。また、地域経済活性化支援機構が掲げている「地域や複数の企業を一体で再生する手法」についても、地域経済の再生のためには欠かすことのできない視点であると考えられるため、今後の取り組みが注目されるところであります。
 このように再生ファンドを中心とするリスクマネーの提供者が各地域で揃ってきたことにより、今後は、中小企業の事業再生の可能性の見極め、必要とされる金融支援策や再生スキームの検討、経営再建計画の策定、ハンズオンによる経営支援やモニタリングなど、事業再生に関するノウハウや専門家等の全国的な展開が必要となるものと考えられます。特に、前述の「政策パッケージ」が掲げるように、各地域において金融機関や各種専門家等が互いに連携を深めながら、中小企業の各種支援に向けたネットワークを構築しそれを実効性のあるものにしていくことが、非常に重要になってくるものと思います。

以上

執筆者紹介

  • 仁木中小企業診断士事務所
    弊社社外パートナー
    仁木淳二

略歴

大手コンピュータ関連会社に勤務後、プライスウォーターハウスコンサルタント(株)(現 IBM BCS(株))にて、連結経営等に関する業務改善支援業務、ベンチャー企業支援業務、(株)グローバル・マネジメント・ディレクションズ(現 (株)KPMG FAS)にてM&Aアドバイザリー業務などに従事。

その後、外資系事業会社にて管理会計業務(事業計画策定等)、独立系コンサルティング会社にて内部統制構築支援業務(J-SOX法対応)などに従事し、2009年に個人事務所を開業、現在に至る。
主要業務は、事業計画策定支援、M&A/事業再生等実行支援、業務改善/内部管理体制等構築支援など。

中小企業診断士
社団法人日本証券アナリスト協会検定会員
米国公認会計士試験合格(ハワイ州)

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