コラム

第三十八回目の専門家コラムは、西村あさひ法律事務所の湯川雄介先生に執筆していただきました。湯川先生の略歴を文末に掲載させていただきます。
今回のコラムにおいては、ミャンマーで昨年11月に成立した新外国投資法について取りまとめていただいております。ご参考にしていただければ幸甚です。

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ミャンマーの新外国投資法
西村あさひ法律事務所 アソシエイト 湯川雄介
2013/1/15

 新外国投資法(以下単に「法」ともいう。)は当初の見通しより大幅に遅れ、2012年11月2日に漸く成立した。同法は20章・57箇条からなり、ミャンマーに投資をする外国企業に対する各種の優遇措置及び義務等を定めるものである。新外国投資法の成立は、ミャンマーへの投資を検討している本邦企業にとって大きな前進ではあるものの、本年制定される規則等に委ねられている事項やミャンマー投資委員会(「MIC」)の判断による事項も少なからず存在し、日本企業が投資判断をするに当たっては当該規則等を詳細に検証する必要があろう。なお、本稿脱稿時点において上記規則のドラフトは策定済みとの情報を得ているが、正式発表には至っていないため、以下においては、新外国投資法の重要ポイントについて概説するにとどめ、規則等の詳細については別の機会に委ねることとしたい。

1.適用対象事業

 新外国投資法の適用対象は、委員会が通知によって随時定める経済活動である旨定められており、11の事業については原則として制限又は禁止することとされている。具体的には、伝統文化・健康・環境等に悪影響を与えうるといった公益的見地から、農業・畜産業・漁業といった国内産業保護的見地から制限・禁止活動が定められているが、そのうち日本企業が投資を行う際にもっとも問題となりうるのは「国民により遂行可能な製造業及びサービス業」という項目である。当該項目は、文言上はその適用範囲が非常に広く、具体的内容については今後制定される規則に委ねられているため、その当該規則の内容・解釈次第では、広汎な事業が外資規制の対象となる可能性がある。そのため、今後制定される規則の動向及び実務上の運用については注視していく必要があろう(なお、外国投資法に基づく制限・禁止事業とは別に、一定の分野の事業については民間企業の参入制限や許認可の対象となるものがあるため、実際の投資に当たっては当該参入制限等についても考慮する必要がある。)。

2.投資形態・手続

 外国からの投資形態としては、100%外国資本による投資の他、ミャンマー国民又は政府機関・組織との合弁、及び当事者間の契約により合意された方法の3種類が認められている。合弁形態による出資につき、法は外国資本の出資比率に関する定めは設けておらず、当事者間の合意によるものとしている。また、最低資本金の額に関する定めはなく、最低資本金は、その事業の性質に応じて、MICが連邦政府の承認を得た上で定めることとされており、現時点では明らかにはされていない(なお、旧外国投資法に基づく最低資本金は製造業が50万米ドル、サービス業が30万米ドルであった。)。
 なお、投資について検討する際には、当該投資からの撤退(いわゆるエグジット)についても想定しておくことが肝要であるが、外国投資法との関連においては、事業期間内に投資に係る株式・事業を第三者に譲渡する場合にはMICの承認が必要とされていること、外国会社につきその全株式を譲渡する場合には事業許可を返還する必要があること等には留意を要する。
 また、法に基づく外国投資の手続としては、外国投資を行う者は、MICに対して許可を得るための申請を提出し、MICは、90日以内(但し起算点は必ずしも法文上は明確ではない。)に当該申請の諾否を判断しなければならないものとされている。もっとも、申請が拒絶された場合の不服申立手続等に関する記載はなく、実務上はMIC/国家計画経済開発省・投資企業管理局(「DICA」)と密に協議しながら申請を行うことが想定される。

3.現地従業員の雇用等

 外国投資家は(熟練)技術(Skill)を要する事業につき、技術を有する従業員を雇用する場合には、原則として、事業開始後当初2年間は最低25%、翌2年間は最低50%、その次の2年間は最低75%のミャンマー国民を雇用しなければならないものとされている。また、(熟練)技術を要しない業務に関しては、ミャンマー国民のみを雇用しなければならないこととされている。もっとも、法文上、いかなる事業・業務が技術を要するかどうかに関する規定は存在しないため、今後制定される規則等に照らして個別の事案に応じて上記規制の適用の有無を検討する必要がある。
 また、一定のレベルの従業員について、ミャンマー国民と外国人との賃金水準に違いを設けないようにすべきという趣旨が窺える規定も存在するため、当該規定の具体的意味を検証しつつ、人材の配置について検討する必要もあるであろう。

4.各種優遇措置

 上記の他、新外国投資法に基づく投資事業については、以下や外貨送金の権利を含む各種優遇措置がある
(1) 税制上の優遇措置
 税制上の優遇措置としては、事業の開始年から5年間の所得税の免除、事業用資産の償却、輸出により生じた所得の減税、損失を最大3年間連続しての繰越・相殺、一定の機械機器・資材等に係る輸入関税等の減免等がある。
(2) 事業の非国有化保証等
 外国投資法に基づく許可による事業については、非国有化の保証、許可された期間の満了前に十分な理由なくして中止されないこと等が保証されている。
(3) 土地の使用
 ミャンマーにおいては、現状、外国投資法の適用がある場合を除き、外国人による土地所有が認めてられておらず、かつ、賃貸する場合の期間も原則1年とされており、製造業、流通業等不動産を長期にわたって安定的に利用するための制度的インフラが整っていないが、外国投資法に基づく事業に用いる場合には、最長50年(更に最長で10年を2回延長しうる。また、未発達地域においては個別の承認の上で更に長期になりうる。)の土地の使用が認められうるため、不動産の長期安定的な使用が必要な業態においては、事実上、外国投資法に基づく投資が第一次的な候補となるであろう。

5.終わりに

 以上の通り、新外国投資法の概要について整理したが、ミャンマーに進出するにあたっては新外国投資法に基づくルートを用いることは必ずしもマストではなく、未だ明らかにはされていない最低資本金規制や上述の雇用規制、許可を取得するために一定期間が見込まれる等、同法の適用があることによる制約面も存在する。従って、 事業内容、形態、規模等に照らして新外国投資法ルートも含めていかなる方法が自社にとってベストであるかを各種専門家の助言等を得つつ、見極める必要があろう。

執筆者紹介

  • 西村あさひ法律事務所 アソシエイト
    湯川雄介

略歴

1998年
慶応義塾大学法学部法律学科卒業
2000年
東京弁護士会登録
2007年
スタンフォード大学ロースクール卒業(LL.M.)

主な著書

2012年9月
「金融債権者から働きかける法的整理の実務」 経済法令研究会
2012年10月
「CROSS-BORDER INSOLVENCY II: A Guide to Recognition and Enforcement (Japan Chapter) 」 CROSS-BORDER INSOLVENCY II: A Guide to Recognition and Enforcement
2012年10月
「国際並行倒産における「主たる利益の中心」(COMI)について - COMIについての本邦初の決定を素材として 」 NBL No.987(2012年10月15日号)

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