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グループ経営における業績管理とM&A
株式会社アミダスパートナーズ
2012/8/1

1.はじめに

 いまや上場企業のみならず多くの企業にとって、グループ全体の業績を様々な角度から管理・評価し、迅速かつ適切な意思決定を行っていくことがますます重要となってきています。

 本稿では、「グループ経営における業績管理とM&A」というテーマで、業績管理のプロセスや評価指標、M&A案件のモニタリングなどについて取り上げたいと思います。

2.グループ業績管理: 概観 ~決算早期化と業績評価指標~

 まず、グループ全体での業績管理に関する実務の一般的な状況について、制度会計と管理会計の視点から概観いたします。

 いわゆる制度会計(財務会計)の領域については、言うまでもなく経理部門(単体・連結)がその中心となり、日々の経理処理、および決算期ごとの決算処理や財務諸表・開示情報の作成等が行われます。「決算早期化」というテーマが経理部門における課題として取り上げられ始めて久しいですが、会計基準や開示情報等に関するルールの追加や変更、上場証券取引所や投資家からの要請などといった外部の状況変化に加えて、M&A(グループ内再編含む)によるグループ構成の変化などといった内部的な要因も重なり、今なお「決算早期化」への取り組みは多くの企業(グループ)にとって重要課題のひとつとなっているものと思われます。 決算業務は大きく「単体決算」「連結決算」「開示情報の作成」といったプロセスに分けられますが、グループの業績管理という視点からは、とりわけ連結決算と(連結)開示情報の作成に関わる部分を中心に、より迅速かつ正確な実績の把握・開示を実現するため、グループでの会計処理方法の統一や非会計データ収集方法の確立など、各社の実情に応じた様々な業務改善の取り組みが行われているものと思われます。

 一方、プランニング(事業計画・予算策定)や予実対比分析、セグメント別(事業・商品・地域など)損益管理などといった領域については、同じく経理部門が担当しているケースや、外資系企業によくみられるように、経理とは別の部門(FP&A / Controlling / Management Accountingなど)が担っているケースもみられます。一般的にこれらの領域は管理会計と呼ばれ、その内容は企業(グループ)の実態によってまさに多種多様でありますが、財務的な業績評価指標という点においては、P/L(損益計算書)項目を中心とした指標(利益額や売上高利益率など)の利用がまだまだ多いのではないかと感じています。

 後述するように、M&Aにおける価値評価の視点が制度会計上にも取り入れられつつあるという状況などに鑑みると、既存の事業に関しても、より価値評価に近い視点から業績管理を行うために、P/L項目だけでなくB/S(貸借対照表)項目や資本コスト(事業ごとのリスクを評価のうえ設定)などの要素を取り入れた指標の選定および活用が、今後一層重要となってくることが考えられます。

(B/S項目と資本コストを取り入れた評価指標の例: 経済付加価値)

3.M&Aと業績管理 ~のれん減損テストを中心に~

 既に広く知られているところではありますが、現行の日本の会計基準(企業結合会計)において、のれんは規則的に償却を行うこととされており(但し減損会計の適用あり)、のれん非償却で毎期の減損テストが要求されるというIFRS(国際会計基準)の規定とは大きく異なっています。

 現時点において、日本企業に対するIFRSの強制適用の行方はまだ明確になっておりませんが(*1) 、ここでは、既にIFRSの任意適用を行っている日本板硝子様の開示情報を参考に、M&Aとその後の業績管理(モニタリング)のあり方について考えてみたいと思います。

第一部 企業情報  第5 経理の状況

 ご確認いただける通り、のれんの減損テストにおいては、のれんを各資金生成単位に配分したうえで、資金生成単位毎の帳簿価額(当該資金生成単位に配分されたのれんの額を含む)と当該資金生成単位の「使用価値」との比較が行われています。また「使用価値」は、各資金生成単位の将来営業キャッシュ・フロー(グループの予算及び計画を基礎としている)を、一定の仮定のもとに算出した割引率により割り引いた現在価値として算定されています。

 減損テストの基本的な考え方は一般的な減損会計と特に異なるところはないものと思われますが、当該手続の内容は、のれんの発生要因となった過去の企業買収等の案件を各期末に再評価するものであり、M&Aの統合効果に関するモニタリング作業ということができるものと思われます。

 また、同社開示情報にも記載の通り、これらの手続にあたっては、対象事業の数値計画、市場動向等の外部環境に関する将来予測、当該事業のリスク評価(割引率に反映)などが重要なファクターとなることから、経理部門のみならず、前述した管理会計部門および各事業部(買収側・被買収側)の企画部門など、多くの関係者の関与が必要となることが考えられます。

 のれんの減損リスクの軽減のためには、M&A案件の実行段階(予備的分析含む)において、統合効果の定量的分析やリスクの洗い出し・評価などを可能な限り綿密に実施することが重要であることは言うまでもありませんが、統合後の定期的な評価を行うための手続や体制の整備も、統合効果を事後的に検証し必要な対策を打ち出していくために、事前評価と同等もしくはそれ以上に重要となってくるものと思われます。

*1 2012年7月2日に金融庁企業会計審議会より「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方についてのこれまでの議論(中間的論点整理)」が公表されました。ここでは、「現時点において、いくつかの論点について委員の意見になおかなりの隔たりがあり、最終的な結論が出ているわけではなく、さらに審議を継続して議論を深める必要がある」との現状認識のもと、「今後とも、国際的な情勢等を踏まえ、会計基準の国際的な調和に向けた努力を継続していく必要がある」としたうえで、「わが国会計基準のあり方を踏まえた主体的コンバージェンス、任意適用の積上げを図りつつ、国際会計基準の適用のあり方について、その目的やわが国の経済や制度などにもたらす影響を十分に勘案し、最もふさわしい対応を検討すべきである」と述べられています。

4.終わりに

 昨今M&Aが事業戦略遂行のための手段としてより一般的なものとなると同時に、会計制度の変更などの要因も重なって、業績管理・モニタリングの場においても企業(事業)価値評価の視点が一層身近なものとなってきています。

 また、M&Aへの積極性如何によってはグループ内の企業・事業構成が頻繁に変化するといったことさえも決して珍しくない状況の中、一方で、迅速な意思決定に資する有用な情報を経営者に提供するという役割に関しては、ますますその重要性が高まっています。経理部門、管理会計部門、企画部門など関係部署が連携し、業績評価指標の選定、定期的な評価・管理のための体制の整備、内外含めた各ステークホルダーへの報告・開示プロセスの確立、などといった課題に取り組むことが、グループ経営における大きな支えになるものと思います。

以上

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