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株式会社パルコに係る資本と経営について(その2)
株式会社アミダスパートナーズ マネージャー 木村 真也
2012/4/4

1.はじめに

 2012年2月24日に、J. フロントリテイリング株式会社(以下、「Jフロント」といいます。)による株式会社パルコ(以下、「パルコ」といいます。)の株式取得が発表されました。森トラスト株式会社(以下、「森トラスト」といいます。)が保有していたパルコ株式33.2%を譲受けるとのことです。

 これまでの経緯については、以前のコラム(http://www.amidaspartners.com/column/38.html)に、イオン株式会社(以下、「イオン」といいます。)によるパルコ株式の取得を発端としたパルコのガバナンスを巡る動向を取り纏めていますので、ご参照頂ければ幸いです。

 本コラムでは、Jフロントによるパルコ株式の取得による状況の変化を纏め、いくつかの論点についての若干の私見を述べさせて頂きたいと思います。

主な経緯

2.現状の整理

 2010年8月のパルコと株式会社日本政策投資銀行(以下、「DBJ」といいます。)との資本・業務提携、2011年2月のイオンによるパルコ株式取得及び2012年3月のJフロントによるパルコ株式(森トラスト保有分)取得により、パルコの資本関係は下図の様になっています。

パルコ資本関係図

 イオンは、2011年5月のパルコ株主総会以降、継続的にパルコと業務提携内容を協議してきましたが、Jフロントの登場によって今後のパルコとの協業の実現性が不透明さを増しました。一方、森トラストとしては、2010年に行われたパルコとDBJの資本・業務提携以降、パルコの提携相手というよりは、投資家としての姿勢を強めており、保有株式を早い段階、かつ、好条件で譲渡できたと見ることができます。森トラスト森章社長のインタビュー(*1)によれば、2012年1月頃から、複数の可能性を探る中で、イオンへの株式譲渡を優先的に検討したとのことです。しかし、イオンがその段階での追加投資を見送ったことから、Jフロントとの取引を前に進めたとのことです。

*1 東洋経済オンライン、2012年3月8日、「パルコの“嫁入り”先が見つかってよかった――森トラスト社長が語る、パルコ騒動の舞台裏」

3.関係各社の状況

 パルコのガバナンスを巡り、パルコ、森トラスト、DBJ、イオン、Jフロントの各社がそれぞれの思惑に基づき施策打ってきました。以下では、現時点での各社の状況を簡潔に取り纏めたいと思います。

 パルコとしては、Jフロントによるパルコ株式取得を、プレスリリース等では都市部商業での協業を例に挙げて好意的に評価しています(*2) 。Jフロントとの業務提携については今後協議されることと思いますが、既に半年以上継続されているイオンとの業務提携協議についても、その他のパルコ少数株主に対して然るべき説明がなされる必要があると考えられます。Jフロントを”ホワイトナイト”とする報道(*3) も散見されますが、パルコの企業価値向上に資する取組みとはどのようなものなのか、判断には時間を要すると考えます。

 森トラストは、Jフロントへのパルコ株式売却により、ある程度のリターンを確保できたと考えられます。Jフロントへの譲渡価格は一株当たり1,100円であり、当該案件の発表日前日終値(2月23日)682円に61.3%のプレミアム、森トラストのパルコ株式平均取得株価644円に70.7%のプレミアムを加算した価格となっています(下表参照)。また、パルコとも良好な関係を維持していることが伺われ、本取引によって実利を得た企業の一つと考えます。

パルコ株式の株価推移(2011年4月~2012年3月)

 DBJは、継続してパルコの転換社債型新株予約権付社債を保有しており、全て株式に転換すれば、18.7%の議決権を保有することになります。当該転換社債の動向は、パルコのガバナンスを巡る次の焦点として注目されます。一方で、パルコとの資本・業務提携時に掲げた中期経営計画(*4) の達成はまだ不確実な部分が多く、転換・譲渡のタイミングは難しい判断が求められるものと考えられます。

 イオンは、今後厳しい選択を迫られることになると思われます。筆頭株主が業務上中立的な森トラストから、主体的にパルコとの業務提携を目指すJフロントに代わったことによって、イオンがパルコ株式を買い増せる可能性が狭められました。また、イオンが現在の保有比率を維持し、投資金額に見合うシナジー効果を実現できるかは未知数です。パルコがJフロントとの取組みを優先させた場合、イオンとの取組みが遅れることは十分考えられます。この段階で、保有株式を売却しパルコを巡る一連の動きから撤退することも考えられます。一方、より強硬な手段として、Jフロントによる今後のパルコ株式の買い増しにはTOBが必要なことから、JフロントによるTOBよりも高い価格での対抗的TOBを実施する可能性が残されています。イオン自身の株主への説明責任を果たしながら、どのような選択をされるのか注目したいと考えています。

 Jフロントは、一先ずパルコ株式の33.2%を保有する筆頭株主となりましたが、マイノリティ出資であり、その投資金額に見合うシナジー効果を実現できるかわかりません。現時点では、Jフロントによる今後の公開買付(TOB)や他の株主等からの株式や新株予約権付社債などの取得予定はないとのことですが(*5)、業務提携効果とガバナンスの支配力を勘案し様々な可能性を検討していくものと思われます。場合によっては、イオンと協働する可能性も残されているのではないかと考えます。

*2 パルコ、2012年2月24日、「株式の売出し、主要株主及び主要株主である筆頭株主の異動の予定及びその他の関係会社の移動の予定に関するお知らせ」
*3 日経MJ、2012年2月27日、「Jフロント、パルコ買収 『奥田改革』最終章へ」
*4 パルコ、2010年8月17日、「パルコグループ 中期経営計画(2010-2012年度)、株式会社日本政策投資銀行との資本・業務提携」
*5 Jフロント、2012年2月24日、「株式会社パルコの株式取得(持分法適用関連会社化)に関するお知らせ」

4.考察

 上記の様な状況を踏まえ、M&Aを検討する上で示唆を得られると考えた点をいくつか述べさせて頂きます。

 先ず、マイノリティ出資の是非については、長期的な展開(シナジーの実現、経営権の段階的取得など)を慎重に検討する必要があると再認識させられました。マイノリティ出資から両社の関係を構築し始め、シナジー効果を実現し、両社の統合に至った案件は、数多くあります。しかし、本件を通じてマイノリティ出資の難しさを改めて考えさせられました。特に、出資先マネジメントとのコミュニケーションが不十分な場合には、リスクが高い投資となる可能性があると考えられます。現状、イオンにとってこのリスクが顕在化しつつある状況ですが、Jフロントも今後慎重な検討が必要になると考えます。

 一方で、マイノリティ出資をする企業側だけでなく、マイノリティ出資をされた企業側も、自社の株主への説明責任を果たす必要があると考えられます。特に上場企業の場合、マイノリティ出資をされた企業も出資元企業との真摯な対話をオープンに行い、企業価値向上の選択肢の一つとして捉えることが望ましいと思われます。

 2012年5月に開催予定のパルコ株主総会を一つの目処として、パルコのガバナンスを巡る新たな動きが予想されます。引き続き、本件に注目していきたいと思います。

以上

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