コラム

本コラムへのご質問やお問合せは弊社までご連絡下さい。
電子メール:info@amidaspartners.com ※全角「@」を、半角「@」に置き換えて、送信してください。

M&Aマーケット調査会社について
株式会社アミダスパートナーズ
2011/9/1

1.はじめに

 日本企業が関わるM&Aの年間総案件数やその総金額は、度々メディアに取り上げられています。これらメディアやレポートに掲載されるM&A案件数等の統計は、主に金融・M&A専門情報サービス会社が、収集したものになります。代表的なものに、レコフデータ様の提供するレコフM&Aデータベース、トムソンロイター様やディールロジック様が公表するリーグ・テーブルがあります(*1)。海外では、上述の3社以外に、米国の主要な州に特化した情報サービス会社や東南アジア等において国内M&Aデータに特化した情報サービス会社等が存在しています。日本国内のM&A統計に関しては、上述の3社が代表的な情報提供会社となっています。

 しかし、これら情報サービス会社が集計する案件数等の集計対象・方法は様々であり、公表数値に相違が見られます。本稿では、その計数的相違が何故生まれるのかについて、各社の集計対象サンプルの選定方法等を含めて概説させていただきます。

*1 ブルームバーグ様の集計する日本国内M&A案件数やリーグ・テーブルは原則として日本の証券市場に上場する企業のプレスリリースのみを集計対象としているため、マーケット情報の一部としてM&Aの動向を把握するには適いますが、M&Aの統計を提供する他の情報サービス会社とは明らかに異なるため、本稿では取り上げておりません。

2.情報サービス会社間の公表数値の相違

(1)公表数値

 最初に、実際に各情報サービス会社が公表している2011年上半期(1~6月)に日本企業が関わったM&A総案件数及び総金額を見てみたいと思います。

 レコフデータ様が公表する2011年上半期の日本国内企業が関わったM&A総案件数は822件、総金額は約4.5兆円、ディールロジック様が公表する総案件数は1,463件、総金額は約7.5兆円、トムソンロイター様は総案件数1,277件、総金額6.3兆円と報告されており、各社の集計する数値に違いがあることがわかります。これらの統計は、日本企業が関わるM&Aという共通したテーマのもとに集計された数値にもかかわらず、なぜ違いがあるのでしょうか。

(2)集計方法

 各社の公表する上記数値に相違がある一つの要因として、各社の採用する案件集計方法の相違が挙げられます。上記情報サービス会社3社へのヒアリングに よると、レコフデータ様は、会社リリース、日経4紙、一般紙、地方紙、専門紙、経済誌、東京証券取引所等のメディアによって公表された日本国内企業が関わる全案件を集計対象としており、メディアによって公表されていない案件等は集計対象としていません。一方、トムソンロイター様は独自のM&A選定基準を設けており、当該選定基準を満たす公表案件に加え、M&Aフィナンシャル・アドバイザーから直接提供されるデータを集計対象としています。ディールロジック様についてもトムソンロイター様と同様に独自の選定基準を設けており、その基準を満たす公表案件、M&Aフィナンシャル・アドバイザーから提供される未公表案件を集計対象としています。また、ディールロジック様は上記データに加えて、その他にフィナンシャルスポンサー(ファンド等の投資会社)や事業会社から直接提供される未公開案件も集計対象としているため、3社の中では案件総数及び総金額が最大になる傾向があります。

 なお、前述のトムソンロイター様とディールロジック様における独自の選定基準には、M&A形態(買収、合併、株式取得、合弁会社設立、スピン・オフ、エクイティー・カーブアウト、民営化、3社間の合弁等)ごとに詳細な取り扱い方法が設けられています。当該取扱い方法については、各社に問い合わせることでガイドラインを入手することが可能ですが、本稿では、一例として株式取得に関する両社の選定基準をご紹介させていただきます。

 トムソンロイター様は株式取得案件に関して以下のいずれかに該当する案件を集計対象としています:
(1)5%以上の取得
(2)3%以上かつ取引金額100万米ドル超の取得
(3)取得持分比率3%以下であっても、買手が被買収側企業を100%取得する意図を表明している、もしくは結果持分比率が50%超となる取得
(4)取得の結果、持分比率が100%となる取得

ディールロジック様は株式取得案件に関して以下のいずれかに該当する案件を集計対象としています:
(1)5%以上の取得
(2)取引金額5,000万米ドル超の取得
(3)持分比率が50%の閾値を越える取得
(4)取得の結果、持分比率が100%となる取得

 上記基準における両社の相違点は(2)及び(3)にあります。(2)に関しては(1)の基準を勘案すると、持分比率3%以上~5%未満かつ取引金額100万米ドル超~5,000万米ドル以下の案件は、トムソンロイター様は集計対象としていますが、ディールロジック様は集計対象外としていることが分かります。また、(3)に関しましては買手が被買収側企業を100%取得する意図を表明していることがトムソンロイター様の基準に明記されており、実際に100%取得を行っていなくとも、将来的な100%取得を目的とした段階的株式取得は、初期段階からその取得持分比率の大小に関わらず集計対象となっていることが分かります。

(3)企業国籍の分類

 各社の公表する上記数値に相違があるもう一つの要因として、「日本企業」の定義の違いが上げられます。レコフデータ様は企業の国籍をその資本構成によって判断しており、「日本企業」とは日本資本が原則として50%超の法人としています。具体的には日本の証券市場に上場している法人、未上場の法人、海外で法人登記をしている海外法人の3つを集計対象としています。一方、トムソンロイター様とディールロッジ様については原則として企業国籍は、企業が本社機能を置く所在地を基に分類されています。

 このように、情報サービス会社の集計方法や独自に設けるM&A案件選定基準の内容には様々な違いがあり、一言に日本国内のM&A案件数や総金額といっても、日本企業とはどのような企業を指し、また、どのような集計方法に基づいて統計されたものかを理解することがM&Aに関するメディア・リテラシーにおいて非常に重要になると考えます。

(4)アドバイザリー・ランキング

 トムソンロイター様とディールロジック様が公表する統計にアドバイザリー・ランキングというものがあります。このランキングはフィナンシャル・アドバイザーとして関わった案件数やその総金額によって、弊社のようなM&Aアドバイザリー・ファーム、会計事務所、証券会社等を順位付けするものです。

 ランキングデータの集計方法については、トムソンロイター様は各アドバイザーからの申告制を採っており、自主的に申告していないM&Aアドバイザーは集計対象外となります。一方、ディールロジック様は申告制と並行して、公表されているフィナンシャル・アドバイザーをメディア等から独自に集計する方法を採っているため、案件に関わったフィナンシャル・アドバイザーが何らかの形で公表されている限りは集計の対象となります。

  しかし、ここで問題となるのは、アドバイザーがクライアントに対してどの程度のアドバイスを行うことによって、当該アドバイザーに評価(クレジット)が与えられるのかということです。トムソンロイター様とディールロジック様は共に申告制によってアドバイザーから提供されたデータに関する選定基準を設けてはいますが、原則として下記の図のように共同アドバイザーとして、アドバイザーAとBが案件に関わり、実質アドバイザーAが8割以上の業務を行ったとしても、アドバイザーBにもアドバイザーAやCと同様のクレジットが付与されます。

  そのため、このアドバイザー・ランキングを参照する際には、アドバイザーとして一部しか案件に関わっていなくとも、集計時に100%実績として積み上げられる可能性があり、アドバイザーの実力をそのまま反映したランキングではないことに留意する必要があります。また、大型案件に複数のアドバイザーが関わる傾向にあるのは、案件の成功には多くの労力を必要とするうえ、その複雑性からという側面に加えて、他社にランキングで差をつけられないよう少しでも案件に関わろうとするアドバイザーがいる可能性も否定できません。

M&Aマーケット調査会社について

 なお、上記のようなアドバイザーBへのクレジット付与にアドバイザーAやアドバイザーCが疑問を感じた場合は、情報サービス会社に対して異議を申し立てる(チャレンジ)ことができ、異議申立ての条件を満たせば、他のアドバイザーに対するクレジット付与額などの再検討を行うことができます。しかし、実際にはこのシステムが利用されることは稀であり、各アドバイザーから申請されるデータがそのまま選定基準を基に検証・採用されているようです。

3.まとめ

 3社の公表するM&A年間案件数や総金額等の統計数値は、日本経済新聞様をはじめ様々なメディアに取り上げられ、その統計の正確性や信用性が高いことはいうまでもありません。しかし、その公表数値は、各情報サービス会社が独自に設ける選定基準やそのデータの入手方法が違うため、3社間で必ずしも一致するものではありません。したがって、当該統計を参照する際には、見る側そして使用する側が各情報サービス会社のデータ集計方法やサンプルの選定基準を理解したうえで、参照・使用することが重要だと考えます。

以上

最新コラム

アミダスパートナーズについて
お問い合わせ