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合弁解消のM&A
株式会社アミダスパートナーズ
2011/8/1

1.はじめに

 「合弁」という事業形態は企業が自社にない機能を他社と相互補完するために一般的に行われていますが、その一方で「合弁の解消」も多く見られます。合弁解消事由については、対外的に公表されたリリース等からだけでは十分に真意が分からないことも多くありますが、理由としては、「発展的解消」、「経営方針の不一致」、「事業環境の変化で合弁事業のモデル自体が成り立たなくなった」等が挙げられています(後ろ向きな印象を与えることを避けるために、合弁開始時には対外的にPRした案件でも合弁解消時には積極的に公表しないということもあるようです)。

 合弁事業の解消の方法として、合弁会社を清算する方法も採ることができますが、どちらか一方の当事者にとって価値があれば、又は事業継続する必要があれば、合弁相手の株式持分等を買取るということとなります。こうした合弁解消にともなうM&Aのアドバイザリー業務を弊社でも何度か経験させて頂いておりますので、本稿では合弁解消に伴うM&Aに特有の問題についてご紹介させて頂きます。なお、後述する問題の多くは合弁契約等に予め規定しておくことで、ある程度問題を回避できる可能性があることをまず付言させて頂きます。

合弁解消のM&A

*本稿では、国内企業同士での合弁会社による合弁を念頭においてポイントと考える点をご紹介させて頂きます。

2.問題となるポイント

(1)譲渡価格

 合弁開始時の契約等で事前に合弁解消時の売買価格の算出方法等を規定していない場合、市場価格のない合弁会社株式の取引価格は、合弁当事者の相対交渉により決まることとなります。一般的なM&Aでの価格交渉においては、売り手側は「その価格だったら他社に売却する」という交渉カードを持ちますが、売り手にとっては合弁会社の株式の第三者への譲渡は通常制限されているため、合弁相手方以外の別の買収希望者を連れてきて価格を競わせることが難しい場合がほとんどです。一方、買取りたい側のM&Aでの一般的な価格交渉としては「同業事業を行っている他社の買収」という交渉カードもありますが、既に一定の経営資源を投入している合弁会社では、合弁会社の他の株主から株式を買収するしか方策がありません。つまり合弁を解消したい側は、選択肢が狭められている為に、通常のM&Aに比べて、価格等厳しい交渉が必要とされます。

 弊社で過去に経験した合弁解消のために合弁会社持分を合弁相手方に売却する案件でも、合弁契約に譲渡価格についての規定がなく、更に第三者への売却も合弁契約で禁止されているケース(*1) がありました。このケースでは、弊社のクライアント側からの支援なしには経営が維持できない状態に合弁会社があったので、合弁会社を清算する選択肢を交渉カードとして、清算した場合の財務シミュレーションを睨みながら交渉を行いました。

(2)口頭・暗黙の取り決め事項の取扱い

 合弁会社に係る当事会社のリスク・リターンについては、通常、出資比率に応じて負担をし、出資比率に応じないリスクについては、別途契約等をして定めています。しかし、合弁事業の中で、両社での口頭や暗黙の合意で一方当事者側寄りのビジネスを行っていることもあります。こうした場合、当事者間では、「あれは相手のビジネスだから損失は相手が負担するのが当然」といった合意が形成され、書面上の合弁契約とはリスク・リターン等の負担がやや異なるということがあります。

 こうした場合、責任割合について突き詰めた話がなされていないために、合弁解消時に責任負担を明確にするために条件を詰めると、“総論賛成、各論反対”というような両者間での認識の違いが顕在化し、合弁解消契約での重要な論点となります。

 弊社で過去に経験したケースでは、弊社が協議に参加する前に“総論賛成”の認識に基づいて特定事業に関連する損失を負担する旨の確認書を合弁解消協議の開始時に差し入れていたために、不利な立ち位置で交渉をしなければいけなくなったことがあります。

(3)従業員の処遇

 合弁会社には合弁当事会社の従業員が出向・転籍しているケースがほとんどです。合弁解消に伴っての出向・転籍者の取り扱いは多くの場合重要な問題となります。合弁期間が長い場合や合弁解消に伴って事業撤退する場合等、合弁先にて出向・転籍させていた従業員が、合弁当事会社に戻ってもポジションがない等も考えられますし、合弁会社に残る場合でもその処遇が維持されるか等は合弁解消の交渉の中で重要なポイントとなります。

(4)撤退する株主との継続的な取引関係

 合弁解消により株式を売却する株主であっても、合弁会社との営業上の取引関係は合弁解消後も継続することがよくあります。合弁期間中にグループ会社としての取引条件を採用している場合は、合弁解消後に一般的な取引先と同等の取引条件に変更する等の交渉が生じる可能性がありますし、資本関係にない会社には一部サービスを提供できない等となる場合もあり得ます。

*1 この案件は弊社ウェブサイト上の実績一覧には記載していない非公表案件であることを念のため付言させて頂きます。以下、同様です。

3.おわりに

 上述のとおり、合弁解消に際しては幾つかの争点となり得るポイントがあります。合弁開始時にもそうしたことは想定できるはずですが、相互の信頼関係や前向きな雰囲気に水を差すことを避ける心理からか、合弁を解消する場合の取り決めがきちんと定められていない場合も多いように感じます。勿論そのような判断が不合理なものとは言えません。しかし合弁解消に係る定めを置いていないために、合弁解消に際して通常のM&Aと同等か、それ以上の作業負荷が掛かる可能性があるということも念頭に置かれた上で、合弁事業については検討されることが必要かと考えます。

 また合弁解消に係る定めを事前に置いていたとしても、全ての問題をカバーすることは現実的に困難です。合弁解消に際しては多くの論点が生じ得ますので、問題をきちんと把握・整理した上で交渉を開始することが重要かと思います。

以上

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