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食品小売業界を取巻くM&A動向
株式会社アミダスパートナーズ
2011/4/4

1.はじめに ~食品小売業界の概観~

 本稿では、食品及び飲料関連の小売業を主体とした企業(以下、「食品小売業者」と言い、これら企業によって形成される業界を「食品小売業界」と言います。)に焦点をあて、近年のM&Aの傾向を取りまとめました。

 食品小売業界のM&A動向を把握する上では、その背景として以下の様な特性を理解することが必要だと考えられます。

  • (1) 国内においては成熟したマーケットであり、面的な意味での空白地帯がない。
  • (2) 国内では、人口減少による市場縮小や単身世帯の増加等による顧客ニーズの変化等の影響を大きく受けることが見込まれる。
  • (3) 生鮮食品の取扱いや地域毎の嗜好の違い(食文化)、食品自体の地域特性(特産物)等から、各地域に食品小売業者が発展・存在し、業界全体としての寡占度は低い。
  • (4) ダイエーをはじめとした全国型チェーンストアの隆盛以後、セブン&アイ・ホールディングスやイオンといった大型店舗(いわゆる「GMS(*1)」)を中心とした大手小売業グループが形成されている。

*1 General Merchandise Store

2.近年の食品小売業界主要M&A事例

 近年の食品小売業界のM&Aの傾向を捉えるため、2000年1月から2011年3月までの主要なM&A事例(*2)から下図を取りまとめました。大きな傾向として、(1)大手GMSの再編・他業態への展開、(2)継続的な食品スーパー同士のM&A、(3)大手商社及び異業種からの出資・買収、MBO等が見て取れると考えられます。

2.近年の食品小売業界主要M&A事例


(1)大手GMSの再編・他業態への展開

 2000年から2002年にかけ、ダイエーへの金融機関の再生支援(その後、産業再生機構による支援を受ける)、マイカルの経営破綻など、90年代から凋落傾向にあった大手スーパーを代表する2社の経営危機が鮮明になりました。また、米ウォルマート社による西友の買収等、食品小売業界の大きな転機となった時期だと考えられます。

 その後、2005年にイトーヨーカ堂及びセブンイレブン、デニーズの株式移転によりセブン&アイ・ホールディングスが設立され、同年、ミレニアムリテイリングを買収します。また、経営破綻に陥ったマイカルをイオンが買収し、さらに、2006年に産業再生機構による支援を終えたダイエー及びマルエツにイオンが資本参加することで、セブン&アイグループとイオングループという2大小売業グループが成り立つことになりました。

 2006年以降は、当該2大グループにより、食品小売業という枠を超えた他業態への資本参加、買収が多くなっています。

(2)継続的な食品スーパー同士のM&A

 食品スーパー同士のM&Aは、調査期間を通じ継続的に行われています。当該M&Aは、基本的には、既存エリアの強化・拡充、いわゆるドミナント戦略と呼ばれるものだと考えられます。大手GMSの再編とは別の文脈で、イオングループの食品スーパーを担うマックスバリュ各社による担当地域の食品スーパーの買収も活発であり、当分野に関しては、大手GMSと中小食品スーパーの違いを超えた共通の戦略・競争が見て取れます。

 ただし、既存・隣接エリアを超えて全国的な店舗網を展開するようなM&Aは調査期間中にはなく、全国展開を行う大手GMSとそれ以外の中小食品スーパーとの間に、一定の線引きがなされていると言えます。

 また、原信とナルスの合併やアークスによるふじの買収といった地方の有力企業同士の統合やアークスによる札幌東急ストアの買収にみられる大手スーパーのエリア再編等、食品スーパー同士のM&Aにおいても様々な取組みの可能性が考えられるように思います。

(3)大手商社及び異業種からの出資・買収、MBO等

 上述の(1)、(2)のような再編・統合が行われる一方で、大手商社による川下への資本参加が継続的に行われてきました。大手商社の安定取引先の確保、食品小売業者の資本政策及び大手商社の信用力・流通網・情報力の活用を企図した提携と考えられます。

 また、時期により、再生や独立、非上場化等目的は様々ですが、ファンドを活用したMBOが案件数は少ないものの継続して行われていることが分かります。現在の厳しい市況の中、今後もMBOの検討が多くなるのではないかと考えます。

*2 出所:レコフM&Aデータ

3.近年の食品小売業界M&Aの類型整理

 前節におけるM&A事例の傾向から、その目的に従い、近年の食品小売業界のM&Aの類型を以下のように整理できると考えました。

  • (1)商圏獲得
    1. ・ドミナント戦略
    2. ・新エリア進出/撤退
    3. ・海外進出
  •  
  • (2)機能強化
    1. ・他業態の買収:コンテンツ強化/顧客の囲い込み
    2. ・商社との資本・業務提携:バリューチェーン強化
    3. ・異業種による買収
  •  
  • (3)企業再生


 (1)は、食品小売業者の基本戦略ではありますが、近年においても積極的なM&Aが繰り返されており、規模の大小を問わず様々な食品小売業者で今後も大きなテーマとなると思われます。また、札幌東急ストアのアークスへの売却や、ローソン沖縄のサンエーへの売却等、大手小売業のエリアの見直し等も起こりうるものと思います。さらに、国内の市場が縮小する中、海外進出を検討する企業が今後増えると考えます。

 (2)は、他業態への展開は主に大手GMSを中心に展開されていますが、三菱商事系の丸の内キャピタルによる成城石井の買収やJR東日本による紀伊国屋の買収等、特徴を持った食品小売業者への異業種からの資本参加・買収は今後も可能性があると考えられます。

 (3)は、国内での厳しい市場環境が続く中、中堅スーパー等の再生が必要となる可能性が考えられます。

4.まとめ

 食品小売業という括りで、業界のM&A動向を検討してきましたが、基本的には商圏を拡充するという基本戦略が重要な位置を占めるものの、セブン&アイグループ及びイオングループに代表される他業態との取組みや、大手スーパーのエリア再編、他業種からの参入など、多くの選択肢があると考えます。未だ寡占度が低いと言われ、且つ、国内市場が縮小することが見込まれる食品小売業界においては、今後も生き残りを懸けた国内外でのM&Aが増加すると見られ、各社があらゆる選択肢について、例外を持たずに検討をしていく必要に迫られてきたのではないかと感じています。

以上

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