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MBO事例について(3)-MBO取引における実務動向-
株式会社アミダスパートナーズ
2010/12/1

はじめに

 過去2回、MBO取引の目的・類型及びMBO関連の仕組み・ルールの整備について概観した。今回は、近時のMBO取引事例の傾向や実務動向について①MBO件数とプレミアム水準の推移及び、②MBO取引において実施される公開買付時の公正性の確保に関する対応状況に焦点をあてて取り纏めることとする。

MBO件数とプレミアム水準の推移

 2001年以降、この10年間で上場会社のMBO公表件数(*1)は84件(*2)に達したが、その約8割(68件)が06年以降に公表されており、特にこの5年間でMBOによる非上場化が加速していることが伺える。

 最近の事例におけるMBO実施の背景・理由としては、①景気低迷の影響により抜本的な改革が必要なものの改革遂行には追加的なコスト負担が生じ、一時的・短期的な業績悪化を余儀なくされること、②既存株主にとって短期的にはマイナスの影響を及ぼす可能性があること、③一方で上場維持費用・実務負担の増加により上場メリットを活かしきれていないことなどがあり、長期的な視野に立って業務改革を行うためには非上場化することが企業価値向上に繋がるものであるとの判断がなされている。

 また、MBOに際して実施される公開買付時の買付価格のプレミアム水準(*3)には次の様な傾向が見て取れる。

<01年から07年>
 各年平均プレミアム(*4)に若干ばらつきはあるものの20%~40%前後の水準で推移しており、個別案件毎のプレミアムは30%未満が大半であった。

<08年から09年>
 08年以降の2年間はこれまでのトレンドから一変し、平均プレミアムは08年95.03%、09年87.4%と07年の倍以上の水準となっている。また、プレミアムが100%を上回った案件はこの2年間に其々5件あったが、中にはプレミアムが300%を上回った案件もあり、個別案件毎のかい離が大きくなったのも1つの特徴である。08年9月のリーマンショック後、株式市場全体(日経平均株価)が大きく下落しており、個別案件において株価の下落率も考慮したプレミアムが付与されたているものと推察される。

 図表2のとおり、買付価格が100%超の高いプレミアムが付与されている案件は、100%以下のプレミアムが付与されている案件と比較した場合、公表日前日の株価の下落率(公表日前日から遡って1年間の株価最高値に対する下落率)は大きくなっていることから、プレミアム水準は株価変動にも一定程度、影響を受けている。

 一方、買付価格が対象企業の過去1年間の株価最高値を上回る案件は、図表3のとおり、08年は17件中10件、09年は15件中6件に留まっている。これは個別案件で見た場合には高いプレミアム水準ではあるものの、必ずしも過去1年間における対象企業の株価下落の影響を反映しきれたプレミアムとはなっていないとも考えられる。

<10年以降>
 本年入ってからは、平均プレミアムは53%と前2年に比して低い水準となっているが、11件中10件で買付価格が対象企業の過去1年間の株価最高値を上回る水準となっている。

MBO取引件数とプレミアム水準

過去1年間の株価最高値からの下落率とプレミアムの関係
対象企業の過去1年間の株価最高値と公開買付価格(TOB価格)の関係
  • *1 平成22年11月23日までの公表日ベースの上場会社を対象会社とするMBO取引(一般に買収対象会社の業務執行を行う取締役の全部又は一部が資金出資を行い買収対象会社の株式を取得する取引)の件数。
  • *2 その内、04年ソトー、07年テーオーシー、08年テン・アローズは不成立。
  • *3 公表日前日の株価に対するプレミアム。
  • *4 1年間に公表された案件の公表日前日の株価に対するプレミアムの平均値。

公正性の確保に関する対応状況

 MBO取引の手続きにおいて公正性を確保することで利益相反構造の弊害を排除しようとする流れが活発化し、MBO指針を始めとした仕組みの整備(07年9月のMBO指針公表、MBOに関する取引所規制等)がなされてきた。そこで、1つのターニングポイントとなったMBO指針公表以降に実施されたMBO取引50件の事例をもとに、近時の公正性の確保に関する対応状況について言及する。

 「意思決定過程における恣意性の排除」を目的に設置が望まれる独立した第三者委員会等の設置事例は、対象案件50件中21件あるが、本年公表案件11件の内、10件で設置されており、MBO取引における独立委員会の重要性がより高まっていると考えられる。さらには第三者委員会からの答申内容の開示(価格を含む条件面の妥当性・相当性である旨の答申等)の充実が図られている点も近時の特徴となっている。

 「価格の適正性を担保する客観的状況の確保」する措置として一般的になっている公開買付期間の延長については、30営業日以上としているケースが50件中48件でとなっており、比較的対応しやすい措置として定着しているものと思われる。

 なお、MBO指針では明示されていないが、独立した第三者算定機関からのフェアネスオピニオン(*5)の取得に関しては、昨年までは取得事例は無かったが、本年になって3件の取得事例が見受けられる。元々東証開示規則において取得の有無につき開示が求められているものであるが、本年6月の東証規則改正にて支配株主との重要な取引を行う場合に独立した第三者から条件の公正性にかかる意見書の取得が義務付けられたことによる影響と考えられ(*6)、今後も対応を行うケースが増える可能性がある。

  • *5 本公開買付価格の妥当性に関する意見書/本公開買付価格が財務的見地から妥当である旨の意見書。
  • *6 「買付者の特別関係者に該当する当社の応募予定株主及び非応募予定株主以外の一般の株主の皆様にとって財務的見地から妥当である旨の意見書」を取得したと記載されている事例もある。

おわりに

 対象会社取締役は、公正な手続きの履行を通じて価格の妥当性について判断し、株主に対し適切な説明責任を行うことが益々求められるようになっている。MBOを検討する取締役は、MBO指針の原則にある企業価値を向上させるか否かについての検討を十分行った上で、初期的な段階から専門家や独立した第三者を交え十分な準備を行い、適切な対応を講じることが重要であると考える。

以上

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