コラム

第十一回目の専門家コラムは、日本税制研究所の代表理事であり、税理士法人アクト22の代表社員である朝長英樹先生に執筆していただきました。朝長先生の略歴を文末に掲載させていただきます。
今回のコラムにおいては、株主が個人の場合の「グループ」の捉え方について、纏めていただいております。ご参考にしていただければ幸甚です。

なお、本コラムへのご質問やお問合せは弊社までご連絡下さい。
電子メール:info@amidaspartners.com ※全角「@」を、半角「@」に置き換えて、送信してください。

株主が個人の場合の「グループ」の捉え方
日本税制研究所 代表理事 税理士法人 アクト22 代表社員 朝長 英樹
2010/10/15

 平成13年度改正で創設した組織再編成税制の後、「グループ」に関する税制は、平成14年度の連結納税制度、平成22年度のグループ法人税制と続いてきたわけですが、組織再編成税制と連結納税制度は大規模法人に適用されることが多かったことから、株主が個人の場合に「グループ」をどのように捉えるのかということは、従来、あまり意識されてこなかったように思われます。

 しかし、平成22年度のグループ法人税制は、強制適用の制度となっており、その対象に多くの中小法人が含まれることとなるため、現在、株主が個人の場合の「グループ」の捉え方が重要なテーマとならざるを得ない状況となっています。

 このため、以下、個人が株主となっている法人間で合併が行われることを想定し、「グループ」の捉え方に関して解説することとしますが、平成22年度改正においては「グループ」の捉え方自体についても変更を加えており、やや分かりづらい状況となっているため、次のようなシンプルなケースについて、同改正前の捉え方と同改正後の捉え方に分けて説明することとします。

完全支配関係

 なお、法人税法においては、「グループ」は「支配関係」や「完全支配関係」という用語を用いて示されているわけですが、本稿においては、この「完全支配関係」を取り上げることとします。

1.平成22年度改正前の完全支配関係の捉え方

 平成22年度改正前は、法人税法2条(定義)の12号の8イにおいて、100%グループ内の適格合併を定めており、その100%グループ内の適格合併となる合併における被合併法人と合併法人との間の関係については政令に委任しています。

 旧法人税法施行令4条の2(適格組織再編成における株式の保有関係等)の2項において、この関係を2つの号に分けて具体的に規定していますが、株主が個人である場合には、次の同項2号に該当するのか否かが問題となります。

  • 二 合併前に当該合併に係る被合併法人と合併法人との間に同一の者(当該者が個人であるときは、当該個人及びこれと前条第一項に規定する特殊の関係のある個人)によつてそれぞれの法人の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有される関係があり、かつ、当該合併後に当該者によつて当該合併法人の発行済株式等の全部を直接又は間接に継続して保有されること(省略)が見込まれている場合における当該合併に係る被合併法人と合併法人との間の関係


 この旧法人税法施行令4条の2第2項2号の「同一の者」が個人である場合には、基本的にはその個人が100%グループ内の全法人を支配する状態となっているということになりますが、同族会社の判定の場合にもあるように、個人の場合には、その個人の親族も実態としてはその個人と一体という状態になっていることが通例であると考えられるため、その個人にその個人の親族を含めて一体として100%グループ内の全法人を支配するという状態となっている場合のその100%グループ内の被合併法人と合併法人の関係も合併を適格合併とする関係としよう、としているわけです。

 ただし、この「同一の者」が個人である場合には、その解釈にやや幅があるという点に留意する必要があります。

 この旧法人税法施行令4条の2第2項2号の「同一の者」は、被合併法人又は合併法人の株主に限られていませんので、その括弧書き中の「個人」は、被合併法人又は合併法人の株主でなければならないというわけではなく、同号の関係をかなり広く解釈することも、可能です。

 他方、組織再編成税制に関しては、株式の所有を通じて支配されている「グループ」の中の法人の合併はそのような関係にない法人の組織再編成とは異なる取扱いをする必要があるという基本的な考え方で制度が創られており、旧法人税法施行令4条の2第2項2号の「同一の者」の括弧書きに関しても、「個人」が法人のすべての株式を保有することでその法人のグループを支配してそのグループの中に被合併法人と合併法人が存在しているという状態が想定されていることは間違いないことからすると、この「同一の者」は、少なくともグループ内の法人となる法人の株主でなければならない、という解釈を採ることができます。

 旧法人税法施行令4条の2第2項2号の「同一の者」の括弧書き中の「個人」に関しては、平成22年度改正前の実務においても、その対象者をグループ内の法人の株式を保有していない者まで広げて捉えることは行われていなかったものと思われ、上記の後者のような解釈が制度趣旨にも合致するものと考えられます。

 このような解釈を採るということになると、上記の4社は完全支配関係にある、ということになります。

 上記のようなケースでは、グループを支配している「個人」が乙又は丙であるということであれば、その親族である甲と丁を含めた者が「同一の者」となることとなり、この「同一の者」が4つの法人を支配するということになりますが、現に乙又は丙がグループを支配しているという場合を想定すると、甲が全株式を保有する法人と丁が全株式を保有する法人を含めて一つのグループとして乙又は丙が4つの法人を支配するという状態となることが通例であると考えられます。

2.平成22年度改正後の完全支配関係の判定

 平成22年度改正により、同改正前の法人税法施行令4条の2第2項2号に規定されていた内容は4条の3第2項2号に規定されており、次のとおりとされています。

  • 二 合併前に当該合併に係る被合併法人と合併法人との間に同一の者による完全支配関係(省略)があり、かつ、当該合併後に当該同一の者と当該合併に係る合併法人との間に当該同一の者による完全支配関係が継続すること(省略)が見込まれている場合における当該合併に係る被合併法人と合併法人との間の関係
      イ~ニ 省略


 この法人税法施行令4条の3第2項2号の「同一の者」には個人の場合の特別な定めは設けられていませんが、これには上記の旧法人税法施行令4条の2第2項2号の「同一の者」と同様の括弧書きが設けられているものとして解釈をする必要があると考えます(『税理 2010.9 臨時増刊号』Q16参照)』)。

 平成22年度改正後においては、立法担当者は、このような「同一の者」との間に当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係に関し、同改正前とは異なり、法人が100%グループの中に存在している法人であるのか否かという観点からではなく、その文言そのままに、相互に100%の資本関係にあるのか否かという観点から同号に該当するのか否かを判定すると説明しています。平成22年度改正前は、グループ内の組織再編成であれば適格となるという考え方に基づいて制度と法令の規定が作られているという前提に立って組織再編成税制の各規定を解釈することとされていたため、そのように判定するとは解されていなかったわけですが、解釈変更の理由は不明なものの、同改正後は、そのような判定となると説明されています。

 法人税法施行令4条の3第2項2号をこのように解釈するということになると、被合併法人又は合併法人となる法人のみを見て同号の関係があるのか否かを判定することとなり、上記のケースにおいては、被合併法人となる法人の株主と合併法人となる法人の株主はそれぞれ1人しかいないため、親族関係にない甲と丁がそれぞれ株式のすべてを保有するA社とD社に関しては完全支配関係がない、ということになります。

執筆者紹介

略歴

1982年4月
東京国税局入局
1982年4月-1995年7月
成田・京橋税務署、東京国税局調査部において、主に法人税調査・審理に従事
1995年7月-2003年7月
財務省主税局において、金融取引に係る法人税制の改正(2000年)、組織再編成税制の創設(2001年)、連結納税制度の創設(2002年)などの改正を主導
2003年7月-2006年7月
税務大学校勤務、税務大学校教授を最後に退官
2007年3月-
日本税制研究所代表理事
2011年4月-
朝長英樹税理士事務所所長

主な著書

「企業組織再編成に係る税制についての講演録集」日本租税研究協会
「日本型連結納税制度の基本的な考え方と法令等の概要」日本租税研究協会
「公益法人税制」法令出版(共著)
「精説 公益法人の税務」公益法人協会(共著)
「リース税制」法令出版(編著)
「国際的二重課税排除の制度と実務 -外国税額控除制度・外国子会社配当等益金不算入制度-」法令出版(編著)
「会社合併実務必携」法令出版(共著)
「グループ法人税制」法令出版(編著)
「外国子会社合算税制(タックス・ヘイブン対策税制)」法令出版(編著)
「連結納税制度」法令出版(編著)
「組織再編成をめぐる包括否認と税務訴訟」清文社(編著)
「会社分割実務必携」法令出版(編著)
「株式交換・株式移転 実務必携」法令出版(編著)
「解散・清算 実務必携」法令出版(編著)

関連コラム

最新コラム

アミダスパートナーズについて
お問い合わせ