コラム

第115回目の専門家コラムは、一般社団法人日本経済団体連合会の小畑良晴先生に執筆していただきました。小畑先生の略歴を文末に掲載させていただきます。今回のコラムにおいては、令和2年度税制改正で見直される連結納税制度につきまして、見直しの観点や、検討されている具体的な変更内容や、課題に対する論点についてご解説いただいております。ご参考にしていただければ幸甚です。

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連結納税制度の見直し
一般社団法人日本経済団体連合会
経済基盤本部長 小畑良晴
2019/9/17

 令和2年度税制改正において、法人税の最大の改正事項は連結納税制度の見直しである。

 昨年11月に開始した政府税制調査会の連結納税制度に関する専門家会合は8月までに5回議論を重ねてきた。8月27日の第24回政府税制調査会総会では、その検討結果「連結納税制度の見直しについて」(以下、政府税調報告書という。)が報告された。この報告書を踏まえて、年末に向けて具体的な制度設計が行われるものと見られる。

 連結納税制度は平成14年度税制改正で創設されて以来17年を経過し、わが国において連結納税制度を採用している法人数は、国税庁の発表資料(平成29年度分「会社標本調査」)によると、平成30年7月31日現在で、連結親法人数が前年度より81社(+4.9%)増加し1,726社で、連結子法人数が763社(+6.4%)増加し1万2,671社で、合計1万4,397社となっている(なお、全法人数は270万6,627社)。これは制度創設時に想定していた数のおよそ半分である。このような状況からすると、わが国においては、連結納税を採用する法人が増加する余地はまだまだあると考えられる。今回の見直しが、企業活力の向上は資するものとなり連結納税の一層の普及につながることが期待される。

 8月30日に公表された経済産業省の「令和2年度税制改正要望」では、その筆頭に「連結納税制度の見直し」が掲げられている。具体的には、「企業間連携を促し、機動的な事業再編の円滑化・効率的なグループ経営を後押しするため、連結グループへの加入時の時価評価課税や繰越欠損金切り捨ての対象を縮小するなど、連結納税制度を見直す。その際、研究開発税制や外国税額控除等、連結グループ一体となって活用されるべき税制措置の取扱や、連結グループ全体で活用できるとする親会社の繰越欠損金の取扱を堅持する。」とされている。

 元来、この連結納税制度は、連結グループが一体的に活動を行っているという実態があることを踏まえて、「実態に合った課税」を行うという観点に立って設けられたものである。こうしたことから、連結グループで事業活動を行って稼得した所得に対しては連結グループを一つの納税単位として捉えて、連結グループを一体として所得の金額や法人税額を計算する仕組みがとられてきた。つまり、連結納税制度の根幹に、連結グループ内の損益通算と税制上の措置の連結グループ内の調整計算があることは言うまでもない。

政府税調報告書の見直しの観点

 今回の連結納税制度の見直しの観点として、政府税調報告書では次の2つの観点が提示されている。

 一つ目は、事務負担の軽減を図る観点である。

 二つ目は、グループ経営の多様化に対応した中立性・公平性の観点からの見直しである。これには、同様の経営を行っている企業グループ間での課税の中立性・公平性の観点と、連結グループと合併等の組織再編を行った企業との間での課税の中立性、という二つの観点が含まれている。

個別申告方式への転換

 政府税調報告書では、事務負担の軽減を図る観点から、企業グループ内における損益通算を可能とする基本的な枠組みは維持しつつ、損益通算の方法を簡素化する方向性が提示された。

 グループ全体を一つの納税単位としたままでは、グループ全体で一つの課税所得・法人税額を計算する必要があるため、グループ内の1法人で後発的に修更正事由が生じた場合、グループ内の他の法人への影響を遮断することが困難となり、企業及び課税庁の事務負担の軽減に限界があることから、各法人を納税単位として各法人が申告をする制度とした上で、損益通算等を認める方法に見直すこととされた。

 これに伴い、連結納税制度の呼称を「グループ通算制度(仮称)」に改めることとされている。なお、各法人が納税単位となることから、新制度を適用した際、税効果会計における繰延税金資産の回収可能性の判断において、現行の連結納税制度のもとでの判断と異なることになるのかどうか、ASBJの実務対応報告の見直しの検討が必要となろう。

 損益通算の方法は、各連結法人の所得と欠損とをそれぞれ合算し、所得の合計額が欠損の合計額を上回る場合は、所得のある各連結法人の所得の金額の比に応じて欠損の合計額を、所得のある連結法人に配賦し(その結果、欠損のある各連結法人の所得はゼロになる)、欠損の合計額が所得の合計額を上回る場合は、欠損のある各連結法人の欠損の金額の比に応じて通算されるべき欠損の金額を、欠損のある連結法人に配賦する(その結果、所得のある各連結法人の所得はゼロになる)。

 現行制度では、各連結法人の連結所得に対する法人税額の負担額または法人税額の減少額として帰せられる金額が、各連結法人における連結法人税個別帰属額として、一定の基準により計算される。連結所得個別帰属額に法人税率を乗じた金額が連結法人税個別帰属額となる。一方、連結欠損金額が生じている場合には、個別欠損金額が生じている連結法人の連結法人税個別帰属額については、その連結法人の個別欠損金額からその連結法人の連結欠損金個別帰属額(損益通算できずその連結事業年度の連結欠損金額を構成することとなった部分の金額)を控除したものに法人税率を乗じた金額となる。なお、連結法人間で連結法人税の個別帰属額の授受は行う必要はないが、仮に授受を行った場合には、支出側では損金不算入となり、受領側では益金不算入とされている。個別申告方式となれば、このような連結法人税の個別帰属額の計算がなくなるのではないかと考えられる。

 個別の連結法人において生じた修更正については、当該連結法人のみで処理することとなるが、例えば、欠損法人に増更正がなされ税額の追徴が行われる場合、その納付を確保する観点から、他の連結法人に連帯納付責任を負わせることが提示されている(この点は現行制度と同じである)。また、減更正により欠損金が生じる場合、欠損金の繰越期間のリセットに悪用されたり、連結グループから離脱する予定の法人に敢えて誤った当初申告を行わせ減更正により欠損金を持たせたりするおそれがあることが指摘されている。こうした悪用に対しては、法人税の負担を不当に減少させることとなると認められるときは、職権更正において、全体を再計算することができるようにする必要があるとされている。

 このような租税回避行為を防止するための規定は個別に設けることとする一方、現行制度と同様に、包括的な租税回避行為防止規定の必要性も指摘されている。

連結調整計算の見直し

 政府税調報告書では、事務負担軽減の観点からは、連結固有のグループ調整計算の見直しも課題として挙げられている。もっとも、「現行制度を前提とした企業経営を行っている企業グループに対する影響に配慮が必要である」ともされている。また、上述の経済産業省の要望では、「研究開発税制や外国税額控除等、連結グループ一体となって活用されるべき税制措置の取扱…(中略)…を堅持する」とされている。

 掲げられている主要な論点は、受取配当益金不算入(①株式区分判定の保有割合、②負債利子控除、③短期保有株式の判定)、外国子会社配当等の株式保有割合、寄附金の損金算入限度額、貸倒引当金の繰入限度額、過大支払利子税制の損金不算入額 、所得税額控除 (銘柄別簡便法)、外国税額控除、特定同族会社の留保金課税、研究開発税制、設備投資に係る税額控除(租税特別措置)、定額控除限度額等(①中小法人の軽減税率対象所得(800万円)、②収用等の場合の定額控除限度額(5000万円)、③過大支払利子税制の適用免除基準(2000万円)、④交際費の損金算入限度額(800万円))、である。

 これらの各論点においては、連結固有のグループ調整計算をやめるのか、存続するのかという二者択一の議論だけではなく、例えば、受取配当益金不算入に関して、株式区分判定の保有割合については、現在、連結納税で行っているグループ調整計算を単体納税におけるグループ税制にも及ぼす案や、負債利子控除の簡素化(概算控除)を単体納税にも導入する案も示されている。同様に、貸倒引当金に関しても、連結納税と同様、グループ法人税制として、グループ内の法人間の金銭債権を除いて計算することも提示されている。今回の連結納税制度の見直しは、単体納税制度にも影響を及ぼす可能性があることに注意が必要である。

連結親法人の連結開始前欠損金の取り扱い

 現行の連結納税制の下では、連結親法人の連結納税開始前の繰越欠損金額には控除制限が生じず、他の連結法人の個別所得を含めて連結所得と相殺することが可能である。また連結親法人同等法人が有する欠損金額も同様の取り扱いとされている。

 一方、連結親法人同等法人を除く特定連結子法人の連結納税開始前の繰越欠損金額は、特定連結欠損金額となり、その特定連結子法人の個別所得を限度として連結所得と相殺することができることとされている。

 政府税調報告書では、個別申告方式へ移行するのであれば、連結親法人の連結開始前欠損金についても、特定連結子法人と同様に、「自己の所得の範囲内でのみ繰越控除することができる制度とすることが考えられる」とされている。一方で、現行制度を維持する考えも併記されている。上述の経済産業省の要望にも、「連結グループ全体で活用できるとする親会社の繰越欠損金の取扱を堅持する」とされているところである。

連結開始・加入時の時価評価・欠損金

 現行の連結納税においては、連結開始・加入時の時価評価課税と欠損金の持ち込みとの要件は同じである(適格組織再編による100%化、開始時における完全支配関係5年超、新規設立等)。

 一方、組織再編税制(合併)においては、資産の時価評価課税と欠損金の引継ぎとは要件が異なる場合がある。共同事業を営むための組織再編においては、両者の要件は同じであるが、特定支配関係(50%超)のもとでの組織再編においては、適格再編(時価評価課税なし)であっても、支配関係成立後5年内の組織再編については、みなし共同事業要件を満たさなければ、支配関係成立前の資産(特定資産)の含み損益の損金・益金算入が制限されるとともに、支配関係成立前の未処理欠損金の引継ぎが制限される。

 こうしたことから、政府税調報告書では、組織再編税制と連結納税制度の中立性を確保する観点から、連結納税の開始・加入時においても、時価評価課税はないが、含み損益の利用制限、欠損金一部切捨てを行うカテゴリー(支配関係が5年以内であり、かつ、共同事業性がない場合)を設けることが提示されている。一方で、時価評価の対象は縮小することが提示されており、これによれば、開始時においては、親法人との間の完全支配関係継続の見込みみさえあればクリアできる。加入時においても、適格組織再編の再編当事者、または再編当事者以外の加入法人で当該法人と親法人との間の完全支配関係継続、従業者継続、事業継続等の見込みがあればよいこととなる(下図参照)

 【図1】連結納税開始時

【図1】連結納税開始時

 【図2】連結納税加入時

【図2】連結納税加入時

執筆者紹介

  • 一般社団法人日本経済団体連合会
    経済基盤本部長
    小畑良晴(おばた・よしはる)

略歴

1965年生まれ。1990年東京大学法学部卒業。同年(社)経済団体連合会(現 日本経済団体連合会)事務局入局。2006年経済法制グループ長 兼 税制・会計グループ副長、2009年経済基盤本部主幹。2015年より現職。

主な著書

『新しい合併・分割・現物出資の税務』(新日本法規出版)
『Q&A連結納税制度の実務解説』(新日本法規出版)
『会社法対応 企業組織再編の実務』(新日本法規出版)
等(いずれも共著)。

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