コラム

第108回目の専門家コラムは、日本税制研究所の代表理事であり、税理士である朝長英樹先生に執筆していただきました。朝長先生の略歴を文末に掲載させていただきます。今回のコラムにおいては、法人税法に関して、個人が欠損等法人の株式を取得した場合の欠損金の繰越の不適用の規定について、ご解説いただいております。ご参考にしていただければ幸甚です。

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個人が欠損等法人の株式を取得した場合の欠損金の繰越の不適用の規定の適用
日本税制研究所
代表理事/税理士 朝長英樹
2019/2/15

 例えば、親から子が欠損等法人の株式を取得した場合に、法人税法57条の2(特定株主等によつて支配された欠損等法人の欠損金の繰越の不適用)の規定が適用されるのか否かということについて考えてみましょう。

 法人税法57条の2第1項各号列記以外の部分は、次のとおりとなっています。

「 内国法人で他の者との間に当該他の者による特定支配関係(当該他の者が当該内国法人の発行済株式又は出資(自己が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額の百分の五十を超える数又は金額の株式又は出資を直接又は間接に保有する関係その他の政令で定める関係をいい、政令で定める事由によつて生じたものを除く。以下この項において同じ。)を有することとなつたもののうち、当該特定支配関係を有することとなつた日(以下この項において「支配日」という。)の属する事業年度(以下この項において「特定支配事業年度」という。)において当該特定支配事業年度前の各事業年度において生じた欠損金額(前条第二項又は第六項の規定により当該内国法人の欠損金額とみなされたものを含むものとし、同条第一項の規定の適用があるものに限る。以下この条において同じ。)又は評価損資産(当該内国法人が当該特定支配事業年度開始の日において有する資産のうち同日における価額がその帳簿価額に満たないものとして政令で定めるものをいう。)を有するもの(内国法人のうち各連結事業年度の連結所得に対する法人税を課される最終の連結事業年度終了の日において第八十一条の十第一項(特定株主等によつて支配された欠損等連結法人の連結欠損金の繰越しの不適用)に規定する欠損等連結法人(以下この条において「欠損等連結法人」という。)であつたものを含む。以下この条において「欠損等法人」という。)が、当該支配日(当該欠損等連結法人にあつては、政令で定める日。以下この項及び次項第一号において「特定支配日」という。)以後五年を経過した日の前日まで(当該特定支配関係を有しなくなつた場合として政令で定める場合に該当したこと、当該欠損等法人の債務につき政令で定める債務の免除その他の行為(第三号において「債務免除等」という。)があつたことその他政令で定める事実が生じた場合には、これらの事実が生じた日まで)に次に掲げる事由に該当する場合には、その該当することとなつた日(第四号に掲げる事由(同号に規定する適格合併に係る部分に限る。)に該当する場合にあつては、当該適格合併の日の前日。次項及び第三項において「該当日」という。)の属する事業年度(以下この条において「適用事業年度」という。)以後の各事業年度においては、当該適用事業年度前の各事業年度において生じた欠損金額については、前条第一項の規定は、適用しない。」

 この「他の者」には、その「他の者」が個人の場合であっても、その個人の親族等を含むものとはされていません。

 このため、法人税法57条の2第1項は、例えば親から子が法人の株式を買い取ったようなケースであっても適用になる可能性があるのではないかという疑問が湧いてきます。

 しかし、結論を先に述べておくと、法人税法57条の2第1項の「当該他の者による特定支配関係」を一つと捉えるとすれば(注)、「他の者」が個人の場合には、その個人の親族等を含めて「当該他の者による特定支配関係〔中略〕を有することとなつたもの」に該当するのか否かを判定することとなり、上記のようなケースであれば、それに当てはまらない、と解釈することができます。

(注)「当該」という用語を用いて「他の者」を規定しているということは、「他の者」、「による」と「特定支配関係」という3つが独立しているということを意味しますし、そもそも「・・・による・・・関係」という言い方が日本語として正しくない(「・・・による・・・支配」という言い方は正しいが、「・・・による・・・関係」という言い方は正しくない)というような問題もありますので、厳密に言えば、上記のような捉え方には、「他の者」は単独の用語として捉えて個人の親族等を含むものとはされていないと解すべきではないかという疑問が残ることは否定できません。

 これをもう少し詳しく説明しましょう。

 法人税法57条の2第1項の「当該他の者による特定支配関係」は、括弧書きで「その他の政令で定める関係」とされていますが、この「その他の政令で定める関係」は、法人税法施行令113条の2(特定株主等によつて支配された欠損等法人の欠損金の繰越しの不適用)の第1項において、次のように定められています。

「 法第五十七条の二第一項(特定株主等によつて支配された欠損等法人の欠損金の繰越しの不適用)に規定する株式又は出資を直接又は間接に保有する関係その他の政令で定める関係は、他の者(その者の組合関連者を含む。)と法人との間の当該他の者による支配関係(当該他の者と当該法人との間に同一者支配関係がある場合における当該支配関係を除く。)とする。」

 この「当該他の者による支配関係」という文言の中の「支配関係」とは、法人税法2条12号の7の5(支配関係の定義)において、次のように定義されています。

「 支配関係 一の者が法人の発行済株式若しくは出資(当該法人が有する自己の株式又は出資を除く。以下この条において「発行済株式等」という。)の総数若しくは総額の百分の五十を超える数若しくは金額の株式若しくは出資を直接若しくは間接に保有する関係として政令で定める関係(以下この号において「当事者間の支配の関係」という。)又は一の者との間に当事者間の支配の関係がある法人相互の関係をいう。」

 この「政令で定める関係」とは、法人税法施行令4条の2第1項(支配関係)において、次のように定められています。

「 法第二条第十二号の七の五(定義)に規定する政令で定める関係は、一の者(その者が個人である場合には、その者及びこれと前条第一項に規定する特殊の関係のある個人)が法人の発行済株式等(同号に規定する発行済株式等をいう。以下この条において同じ。)の総数又は総額の百分の五十を超える数又は金額の株式又は出資を保有する場合における当該一の者と法人との間の関係(以下この項において「直接支配関係」という。)とする。この場合において、当該一の者及びこれとの間に直接支配関係がある一若しくは二以上の法人又は当該一の者との間に直接支配関係がある一若しくは二以上の法人が他の法人の発行済株式等の総数又は総額の百分の五十を超える数又は金額の株式又は出資を保有するときは、当該一の者は当該他の法人の発行済株式等の総数又は総額の百分の五十を超える数又は金額の株式又は出資を保有するものとみなす。」

 このように、法人税法57条の2第1項の「他の者」に関しては、その「他の者」が個人の場合に親族等を含むものとはされていないわけですが、「当該他の者による特定支配関係」の定義を辿って行くと、法人税法施行令4条の2第1項に行き着き、「他の者」については、親族等を含めて「当該他の者による特定支配関係〔中略〕を有することとなつたもの」に該当するのか否かを判定する、と解釈することができることとなります。

執筆者紹介

略歴

1982年4月
東京国税局入局
1982年4月-1995年7月
成田・京橋税務署、東京国税局調査部において、主に法人税調査・審理に従事
1995年7月-2003年7月
財務省主税局において、金融取引に係る法人税制の改正(2000年)、組織再編成税制の創設(2001年)、連結納税制度の創設(2002年)などの改正を主導
2003年7月-2006年7月
税務大学校勤務、税務大学校教授を最後に退官
2007年3月-
日本税制研究所代表理事
2011年4月-2018年12月
朝長英樹税理士事務所所長
2018年12月-
税理士法人朝長英樹税理士事務所所長

主な著書

「企業組織再編成に係る税制についての講演録集」日本租税研究協会
「日本型連結納税制度の基本的な考え方と法令等の概要」日本租税研究協会
「公益法人税制」法令出版(共著)
「精説 公益法人の税務」公益法人協会(共著)
「リース税制」法令出版(編著)
「国際的二重課税排除の制度と実務 -外国税額控除制度・外国子会社配当等益金不算入制度-」法令出版(編著)
「会社合併実務必携」法令出版(共著)
「グループ法人税制」法令出版(編著)
「外国子会社合算税制(タックス・ヘイブン対策税制)」法令出版(編著)
「連結納税制度」法令出版(編著)
「組織再編成をめぐる包括否認と税務訴訟」清文社(編著)
「会社分割実務必携」法令出版(編著)
「株式交換・株式移転 実務必携」法令出版(編著)
「解散・清算 実務必携」法令出版(編著)
「現代税制の現状と課題 -組織再編成税制編-」新日本法規出版

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