コラム

第九十八回目の専門家コラムは、西村あさひ法律事務所のパートナーである中島和穂先生に執筆していただきました。中島先生の略歴を文末に掲載させていただきます。今回のコラムにおいては、中東諸国に進出する際の留意点として、典型的に問題となる外資規制、代理店保護規制及び自国民雇用義務について解説いただいております。ご参考にしていただければ幸甚です。

なお、本コラムへのご質問やお問合せは弊社までご連絡下さい。
電子メール:info@amidaspartners.com ※全角「@」を、半角「@」に置き換えて、送信してください。

中東進出の留意点
西村あさひ法律事務所 パートナー
ドバイ駐在員事務所/東京事務所
ドバイ駐在員事務所代表
中島 和穂
2018/4/16

 多くの中東諸国は、石油の輸出により経済発展を遂げてきましたが、近年、米国のシェール革命等、様々な要因により原油輸出による歳入が減少傾向にあります。また、中東では、若年層を中心として国民の人口が急増しており、国民の雇用機会の確保が喫緊の課題となっています。それらの国々は、国内産業保護や安全保障の観点を考慮しつつも、欧米やアジア諸国からの投資を誘致し、技術導入による産業発展や自国民の雇用機会確保を目指しています。また、原油収入から多数の富裕層が生まれており、様々な企業が商品やサービスの販売先として注目しています。

 日本企業が進出する主要な中東諸国は、①中東・アフリカの経済ハブであるドバイを擁するアラブ首長国連邦(UAE)、②近時就任した皇太子が国民の支持の下で急速な経済改革が進められているサウジアラビア、③人口約8000万人を有し、石油のみならず高い技術力のポテンシャルを有するイラン、④欧州と中東を繋ぐ要衝の地イスタンブールを首都とし、経済発展を続けるトルコ等が挙げられます。本稿では、これらの国に進出する際に典型的に問題となる外資規制、代理店保護規制及び自国民雇用義務について解説します。

(1) UAE

 UAEでは、商業代理業など、UAE国籍保有者のみが従事できるとされる限られた業種を除き、ほとんどの業種が外資に開放されていますが、次段落で述べるフリーゾーンを除く地域(本土)で会社を設立する場合に出資規制があり、その株式又は持分の51%がUAE国籍保有者又は同国籍保有者が全ての株式もしくは持分を有する法人によって保有されなければなりません。

 但し、UAEを構成する各首長国(ドバイ、アブダビ等)が設置するフリーゾーンでは、外国企業が100%出資会社を設置できます。フリーゾーンで設置された外国企業は、本土での商業活動は、原則として禁止されています。

 UAEには代理店保護法があり、外国企業が、フリーゾーンを除く本土において、自らの拠点を置かずに、商品やサービスの販売活動を行う場合、UAE国民又はUAE国民が100%保有する法人(現地企業)を代理店として選任し、当局に登録しなければならず、このような登録代理店には特別な保護が与えられています。

 例えば、登録代理店は、少なくとも一つの首長国において排他的な権限が与えられます。外国企業が代理店の取り扱う対象製品をUAE国内で販売した場合には、登録代理店は、その販売に何ら尽力していないくとも、手数料を徴収することができます。また、外国企業が登録代理店に無断でUAE国内で対象製品を販売しようとする場合には、登録代理店は輸入の差止めができます。さらには、外国企業が登録代理店との契約を解除したり、契約の更新拒絶をする場合には、正当な理由がなければならず、この正当理由を充足することは簡単ではありません。実務上は、このような特別な保護を回避するため、外国企業が選任した代理店を当局に登録しないケースが多く見受けられます。

 自国民雇用に関しては、輸入、小売、卸売等のトレードセクターに従事する会社、銀行業に従事する会社及び保険業に従事する会社に応じて、一定割合の自国民の雇用を義務づけています。しかしながら、実際には弾力的に運用されており、雇用義務を満たさずとも、業務停止等の罰則は科せられていません。この義務はフリーゾーンには適用されないとされています。

(2) サウジアラビア

 外国企業によるサウジアラビアへの投資は、石油探鉱、採掘、生産、二大聖地の不動産投資、軍事機器製造など一定の事業を除き、認められていますが、事前にサウジアラビア当局のライセンスを取得する必要があり、また、業種に応じて外資の上限出資比率が定められています。

 例えば、小売業及び卸売業については、原則として75%とされていますが、拠点国数、投資額、サウジアラビア人雇用比率等が一定数以上という条件を満たす場合には、100%までの出資が認められています。

 また、現地の販売法人を設立せずに、サウジアラビア企業を代理店として起用する場合には、当該代理店を当局に登録しなければなりません。この登録がない場合には、ブランド品をサウジアラビアに輸入できない場合やサウジアラビア政府向けの販売ができない場合があります。契約上、排他的な権限を与えられた代理店との契約を解除し、新しい代理店と選任しようとする場合には、元の代理店の登録が新しい代理店による販売の障害となることもあります。

 自国民雇用に関しては、各企業を業種別に分けた上で、総雇用人数や同人数に対するサウジアラビア人雇用割合に応じたポイントによって6段階で評価し、外国人ビザの発給や就労ビザ更新の可否等についてインセンティブやペナルティーを付与しています。

(3) イラン

 イランでは、石油や天然ガス、金融等の限られた業種を除き、外国企業が100%出資することを認めており、外国企業がイラン国内への投資する際に、イラン政府から投資ライセンスを取得することは可能ですが、義務づけられていません。また、日本及びイラン間の投資協定に基づき保護される投資に該当したり、イランの外国投資保護促進法に基づき、イラン政府から投資ライセンスを取得すれば、国家収用や投資元本・利息の海外移転などについて保護を受けることができます。

 外国企業がイランでの販売活動のために代理店を起用する場合、代理店一般を保護する法制度はありません。ただし、自動車、機械などの一定の資本財については、一定期間アフターサービスを提供する旨の誓約書を当局に提出した上で、現地の輸入代理店を当局に登録しなければ、イランへの輸入が認められません。また、医薬品については排他的な現地代理店を選任しなければならないという規制が課されることがあります。

 自国民雇用規制については、明確な法令はないものの、外国人1名の就労ビザの発給に当たり、国民3名以上の雇用が条件とされることが一般的な運用となっており、事実上国民の雇用が必要となっています。但し、フリーゾーンでは当該フリーゾーンで就労する従業員の90%がイラン国民でなければならないとされています。

(4) トルコ

 トルコの外国直接投資法は、外国企業による自由な投資や内国民待遇を定めています。多くの業種において外国企業が100%出資することを認められており、外国企業がトルコ国内に投資する際に、原則として外国企業であることを理由としたライセンスを取得する必要はありません。例外としては、放送メディアや民間航空分野が挙げられます。

 外国企業がトルコでの販売活動のために代理店を起用し、その代理店との契約を正当な理由なく解除する際に、代理店の努力によって形成された顧客との取引関係から外国企業が得る利益(いわゆるのれん代)について代理店に補償する義務を負うことがあります。

 自国民雇用規制に関しては、外国人1人に対して原則として国民5人の雇用義務が課されています。

執筆者紹介

  • 西村あさひ法律事務所 パートナー
    ドバイ駐在員事務所/東京事務所
    ドバイ駐在員事務所代表
    中島 和穂

略歴

2001年
東京大学法学部第一類卒業
2009年
コロンビア大学ロースクール卒業(LL.M.)
2009-2010年
ニューヨークのワイル・ゴッチャル&マンジズ法律事務所
2010-2011年
三井物産株式会社 法務部出向
2016年-
ドバイ駐在員事務所 代表

主な著書

2016年11月
「会社法実務相談」商事法務(共著)
2014年12月
「条解 独占禁止法」弘文堂(共著)
2013年7月
「知的財産法概説<第5版>」弘文堂(共著)
2011年12月
「会社法実務解説」有斐閣(共著)

最新コラム

アミダスパートナーズについて
お問い合わせ