コラム

本コラムへのご質問やお問合せは弊社までご連絡下さい。
電子メール:info@amidaspartners.com ※全角「@」を、半角「@」に置き換えて、送信してください。

アジア系企業による日本企業のM&Aと上場企業の上場子会社への対応
株式会社アミダスパートナーズ
2010/7/1

始めに

 今回のコラムでは、最近ご相談が増えている、アジア系企業による日本企業のM&Aと上場企業の上場子会社への対応について書かせていただきます。

アジア企業による日本企業へのM&A

 まず、アジア系企業による日本企業へのM&Aについてですが、ここ数年、韓国、中国企業を中心に、アジア系企業による日本企業の買収案件が増加してきています。特に中国企業のM&Aは、件数こそまだ少ないですが、昨年から急増しています。今年に入ってからも、本間ゴルフ様、オギハラ様の館林工場、レナウン様と半年で昨年に並ぶM&Aが実行されています。弊社にも、ホームページを見ていただいた中国企業や中国企業のサポートをされているコンサルティング会社等の訪問を多数いただいており、その積極的な行動や前向きな姿勢には、見習うべきところも多いと感じています。

 アジア系企業による買収と書きましたが、中国企業と韓国企業ではその目的が異なるように感じます。韓国企業によるM&Aは、先日のNHN様によるライブドア様買収など、インターネット関連を中心に、自社の強みを生かし、日本のマーケットを睨んだ買収が中心となっています。一方、中国企業によるM&Aは、日本のマーケットにはあまり関心がなく、日本企業の持つ技術・ノウハウを目的としていることに特徴があるかと思います。

 中国企業によるM&Aを論ずる上で、1980年代後半の日本企業による米国企業の買収を引き合いに出すメディアもありますが、趣は全く違うと私は思っています。当時の日本企業は、新しいマーケットやコンテンツを目的として買収を実行していました。当時、アメリカの心を買うような話も出ていましたが、マーケットは米国内にあり、日本企業が資本を保有した後も、米国内での生産及び雇用は維持されていたと思います。

 しかし、現在の中国企業によるM&Aの目的は技術の獲得にあります。技術獲得を目的としたM&Aの場合、買収後当面は日本国内の製造拠点をベースとして製造は続けられると思いますが、将来的には、製造拠点が日本国内から無くなる可能性が高いのではないかと危惧しています。

 アジア系企業による日本企業のM&Aが増加している背景には、国内企業の現状に起因しているところもあると考えています。すなわち、業界によっては、経済環境や個別企業の状況などから前向きな投資に対し慎重な企業が多くなってきており、また、同額の投資を行うのであれば海外展開に投資を振り向ける企業が増えつつある状況です。そうした中で、国内企業M&A案件の買収先として、中国をはじめとしたアジア系企業の存在が大きくなってきているのも事実です。なお、これまでの中国企業による買収は、再生案件が中心でしたが、これからは再生案件のみならず、多様な買収が益々増えてくるものと考えます。

 技術力のある企業や事業等が、国内の企業からは評価されない場合でも海外の企業からは、高く評価されるケースなども増えてくるのではないかと思います。今後事業売却や資本提携等を検討する際には、海外での展開等も踏まえ、国内企業だけでなく、海外企業との取組みという選択肢も検討することが必要なのではないかと私は考えます。そのような検討の中で、当然各ステークホルダーをも配慮した上で、条件面も含め総合的な判断がなされるべきかと思います。

 また、上述の様な案件に直接の関わりはない国内企業様におかれましても、資本関係こそないものの取引関係があり、技術力のある企業が、海外企業の傘下になっても取引上または競争上も問題ないのか検討しておくことも重要かと思います。また、世界展開を踏まえた更なる技術開発を行うことが、当然ではありますが益々重要になってくるものと思います。

上場企業の上場子会社の対応

 二つ目のテーマは、最近再びご相談が増えてきている、上場企業の上場子会社の対応についてです。この問題は、以前からテーマとなっており、株式交換等による完全子会社化や持株会社化などの対応がなされてきました。最近、外資系のアクティビスト・ファンドによる株主質問がなされるなどの中で、再度テーマとして浮上してきています。

 この問題の根本は、支配株主がいる場合に、少数株主の利益が損なわれることはないかという点にあります。商事法務において「親子上場をめぐる問題提起」*1として取り上げられており、実証研究の結果として、親子上場のコスト・ベネフィットは相殺されており、むしろベネフィットが上回っていることが示されています。一方で、証券市場のグローバル化に対応するため、透明性を高めるための規制の必要性や他の利益相反関係に対する法規制との整合性も考慮し、事前の手続き規制および開示規制と、事後の審査制度の導入を検討すべきとの指摘がなされています。

 今後どのようなルールが制定されるのかを注視することも大切ですが、個々の事案に応じて、親会社・子会社それぞれの立場から、改めてコスト・ベネフィットを検証し、現状維持、完全子会社、スピンアウトのいずれを選択すべきなのか考える必要があるのではないかと私は思います。そうした検証を行うことによって、親会社は、子会社株主や経営陣並びに親会社の株主に対して明確な説明が可能になり、子会社は、親会社や株主に対して、十分な説明が出来るようになると思います。株式を公開された時期にもよるとは思いますが、環境は大きく変化してきており、改めて見直しをすべき時期が今なのかもしれません。

 その結論が、親会社・子会社共通なのであれば、その実現に向け、関係当事者各位に納得いただけるよう実行に移すことが必要かと思います。その際には、申し上げるまでもありませんが、それぞれの立場で、専門家も交え、実行プロセスを検証、実行することが肝要です。

 実行段階での一つの大きなポイントは、株主からの買取請求権かと思います。他の再編でもポイントとなるケースが増えていますが、想定外の行使を受け、予定外の資金が必要になることも実務上増えてきています。

 繰り返しになりますが、企業価値向上に繋がる再編の実現に向け、現状を把握し、今後の変化も見据えて、各ステークホルダーに納得いただける対応をしていくことが重要かと思います。

 以上最近ご相談の多い二つの件について取り上げさせていただきました。ご質問やご相談などございましたら弊社宛お問い合わせください。

*1
宍戸善一(一橋大学教授)
新田敬祐(ニッセイ基礎研究所主任研究員)
宮島英昭(早稲田大学教授)
「親子上場をめぐる議論に対する問題提起」
商事法務NO.1898,1899,1900

以上

最新コラム

アミダスパートナーズについて
お問い合わせ