コラム

第七十九回目の専門家コラムは、一般社団法人日本経済団体連合会の小畑良晴先生に執筆していただきました。小畑先生の略歴を文末に掲載させていただきます。今回のコラムにおいては、今後広まることが見込まれるリストリクテッド・ストックを用いた報酬制度について、従来のストックオプションとともに取りまとめていただいております。ご参考にしていただければ幸甚です。

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譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)とストックオプション
一般社団法人日本経済団体連合会
経済基盤本部長 小畑良晴
2016/9/15

 平成28年度税制改正では、報酬として役員に交付された一定の譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)については、法人側で損金算入できることとなった。さらに、8月19日、金融庁が「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正を公布・施行し、株式報酬としてリストリクテッド・ストックの割り当てをする場合に、これが役員等に対する報酬の支給の一種であるということで、ストックオプションの付与と同様に、「第三者割当」の定義から除外し、有価証券届出書における「第三者割当の場合の特記事項」の記載を不要とすることとした(内閣府令19②一ヲ(3))。こうしたことにより、今後、リストリクテッド・ストックを用いた報酬制度が広まることが見込まれる。

 一方、株式等を用いたインセンティブ報酬制度としては、従来、新株予約権を用いたストックオプションが存在していたが、新たなリストリクテッド・ストックとの間で、税制上の取扱いに不整合があるのではないかとも見られる。

創設された特定譲渡制限付株式の損金算入

 法人税法では、法人の支払う役員報酬は原則として損金とはならず、例外的に、①定期同額、②事前確定届出、③利益連動、のいずれかに該当する場合にのみ損金算入が認められている(法法34①)。

 役員報酬の損金算入の制限については、かつては、それが獲得した利益の処分であることを根拠にしていたと見られるが、現在の制度の骨格が定められた平成18年度税制改正以後は、役員給与の支給の恣意性を排除することが適正な課税を実現する観点から不可欠という理由付けがなされているところである。

 平成28年度税制改正では、この例外のうち②の類型として、リストリクテッド・ストックを位置づけ、しかも、この場合には、「届出」を不要としている(法法34①ニ)。

 損金算入が認められるリストリクテッド・ストックの要件としては、「特定譲渡制限付株式」(法法54①、法令111の2①)であって、かつ、「将来の役務の提供に係るもの」(法法34①ニ)である必要がある。

 まず、「特定譲渡制限付株式」の要件としては、「譲渡について制限その他の条件が付されている株式」であり、かつ、役務提供を受ける内国法人またはその内国法人の100%親会社の株式で「役務の提供の対価として当該個人に生ずる債権の給付と引換えに当該個人に交付されるもの」であることが求められており(法法54①)、前者の要件については具体的には、次のように規定されている。

 ①譲渡についての制限がされており、かつ、譲渡制限期間が設けられていること(法令111の2②一)
 ②法人が無償で取得することとなる事由が定められていること(法令111の2②二)

 一方、「将来の役務の提供に係るもの」の点については、①職務執行開始日から1月を経過する日までに株主総会等において役員個人別の確定額報酬の決議が行われ、かつ、②その決議から1月を経過する日までに、その付与された報酬債権の額に相当する特定譲渡制限付株式が交付されること、が必要である(法令69②)。

 これらの要件を満たすリストリクテッド・ストックが交付され場合には、交付を受けた役員個人において給与等課税事由が生じた日において、法人においては、当該役員から役務の提供を受けたものとして、損金算入することとなる(法法54①、法令111の2④)。役務提供に係る費用の額は、その特定譲渡制限付株式の交付につき給付され、または消滅した債権の額に相当する金額とされている(法令111の2⑤)。

従来のストックオプション税制

 適格ストックオプションの場合には、役員側で権利行使時には給与所得課税を行わず、その後の売却時に譲渡所得課税のみが行われるので、給与等課税事由が生じることがなく、法人側で損金算入することはできない(法法54の2②)。

 一方、非適格ストックオプションの場合には、役務の提供を受ける対価として新株予約権を発行した場合は、給与等課税事由が生じた日において、当該役員から役務の提供を受けたものとして、損金算入することとなる(法法54の2①、法令111の3①)。役務の提供に係る費用の額は、その新株予約権の発行時の価額に相当する金額とされている(法令111の3③)。なお、役員報酬損金不算入に係る規制(法法34①)については、ストックオプションは、明文で除外されている。

 リストリクテッド・ストックと取扱いが異なっているのは、まず、リストリクテッド・ストックの場合には、役務提供を受ける内国法人の株式のみならず、その100%親会社の株式も対象とされている一方、ストックオプションの場合には、役務提供を受ける内国法人が発行する新株予約権に限られている点である。100%親会社が発行する新株予約権も対象とできないものか。また、リストリクテッド・ストックについては、前述のとおり詳細な要件が定められているが、ストックオプションについては「権利の譲渡についての制限その他特別な条件」(法令111の3②)のみである。また、ストックオプションについては、役員報酬としての位置づけがなく、役員報酬損金不算入の規定(法法34)の規制を受けていないという点も整合性の観点から今後の検討が必要となろう。

執筆者紹介

  • 一般社団法人日本経済団体連合会
    経済基盤本部長
    小畑良晴(おばた・よしはる)

略歴

1965年生まれ。1990年東京大学法学部卒業。同年(社)経済団体連合会(現 日本経済団体連合会)事務局入局。2006年経済法制グループ長 兼 税制・会計グループ副長、2009年経済基盤本部主幹。2015年より現職。

主な著書

『新しい合併・分割・現物出資の税務』(新日本法規出版)
『Q&A連結納税制度の実務解説』(新日本法規出版)
『会社法対応 企業組織再編の実務』(新日本法規出版)
等(いずれも共著)。

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