コラム

第七十六回目の専門家コラムは、JBLメコングループの代表である藪本雄登先生に執筆していただきました。藪本先生の略歴を文末に掲載させていただきます。今回のコラムにおいては、カンボジア、ラオス、ミャンマーの3国におけるM&Aに関して、各国の外資規制についてとりまとめていただいております。ご参考にしていただければ幸甚です。

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CLM(カンボジア、ラオス、ミャンマー)でのM&A -外資規制の観点から-
JBLメコングループ 代表
藪本 雄登
2016/6/15


 新しい投資先として、注目されるCLM(カンボジア、ラオス、ミャンマー)ですが、外資規制に対する考え方は、近隣国であっても国毎に大きく異なります。今回は、M&Aのストラクチャリングにおいて検討が必須となるCLM域内の外資規制の概要と留意点をご紹介致します。

1.カンボジア

 ご存知の方も多いと思いますが、下記の表の通り、カンボジアの外国投資関連法制度は、ミャンマーやラオスと比較して、極めて強く外国投資を奨励するように設計されています。外国法人は土地所有を除き内国法人と差別なく扱われており、多くの分野で自由に投資することが可能です 。

<各国の外資規制の特徴一覧>
カンボジア ラオス ミャンマー
特徴 原則自由 厳しい外資規制 厳しい外資規制
製造業 原則自由 原則自由 原則自由
飲食業 原則自由 原則自由 原則自由
小売業 原則自由 原則不可 原則不可
卸業 原則自由 原則不可 原則不可
フォワーダー業 原則自由 49%まで可能 原則80%まで投資可能
建設業 原則自由
(但し、ライセンスが必要)
49%まで出資可能 原則自由
人材紹介業 原則自由 原則不可 原則不可

 カンボジアがここまで外資開放を行う背景は、その産業構造・輸出物品構造に原因があると考えられます。ラオスの鉱物・電力、ミャンマーの天然ガスなどによる外貨獲得手段があるのに対して、カンボジアの輸出物品の大半を縫製品に依存しており、外貨を稼ぐ手段が限定されています。最低賃金が年々上昇しており(2016年1月からは140USD)、縫製工場の撤退が相次いでいます。最近のカンボジア政府の動きをみていると、外資企業から登記費用、各種申請費用や税金を確保することで、生き残りをかけているように思えます。その結果、外資規制がない反面、ラオス・ミャンマーと比較して、労働省など役所での登録申請項目が多いという傾向がみられます。

 また、ラオスやミャンマーと比較して、税の徴収スキームも抜け目ありません。カンボジアは、できるだけ多くの企業の投資を取り込み、色々な規制を駆使し、進出後、確実に申請費用や税収を確保しようとする傾向があります。「カンボジアは目先を見過ぎだ」と投資家から指摘されることもありますが、これもカンボジアが生き残りをかけた国家戦略だと理解しています。この点は、しっかりと事前調査を行わなかった投資家の責任ですし、「外資規制がない」ということの反面性や背景を十分に理解した上で進出を検討することが肝要です。

 カンボジアでは、ほとんど規制を気にせず事業が行えますが、その結果、競争は激化し、撤退事例も増えていますので、この点にも留意する必要があります。

 もっとも、どんな事業でも自由に実施ができるというわけではありません。カンボジアの外資規制については、「改正投資法施行のための政令NO.111」内の「投資禁止分野」に基づいて外資規制が規定されています。

<投資禁止分野>
  • a. 向精神薬および麻薬物質の生産・加工
  • b. 国際規則または世界保健機構により禁じられた有害性化学物質、農薬・農業用殺虫剤、および化学物質を使用したその他の商品で、公衆衛生および環境に影響を及ぼすものの製造
  • c. 外国から輸入した廃棄物を使用した電力の加工および発電
  • d. 森林法により禁じられる森林開発事業


 上記に加えて、カンボジアでは新規省令や通達等の施行等に伴い、一部、外資規制が認められる業種が確認されています。例えば、2013年に発行された労働職業訓練省令では、カンボジア人実習生の送り出し事業については外国人の持株比率は49%まででなければならないと規定されており、投資禁止分野に記載されていない業種でも規制がなされているケースがあります。

 また、その他実務上、外資の参入が実質的に規制されている分野もあり、進出の際には注意が必要です。さらに、現在時点においては自由に投資ができたとしても、上記の実習生事業のように、急に外資制限が課される可能性もあり得ます。進出前の法規制および進出展開後の法規制をしっかりと継続的にチェックすることが重要です。

2.ラオス

 2009年のラオス投資奨励法(以下、「新投資法」)は内外資の区別をせずに、広く投資を奨励することを明記しています。しかしながら、新投資法は 2004年外国投資奨励法に引き続き、投資を奨励しない例外的分野として、「短期的あるいは長期的に国家の安全保障に関わったり、自然環境に悪影響を与える地域や事業、または公衆衛生や国民文化に害を与える事業」を挙げています。

 また、投資禁止分野として、麻薬製造、調査・治安維持活動、中央銀行業務、外交や国防、政治的活動などが設定されており、外国投資家の参入は禁じられています。

<条件付き外国投資分野>
 条件付き外国投資許可分野の中には、ラオス人の資本参加が求められる分野が含まれているほか、鉱業や電力分野などでは、外国投資家は政府に対し、交渉によって決定された合弁会社持ち分を提供することが求められており、注意が必要となります。条件付き外国投資許可分野および外国投資不許可分野の詳細は、次の通達などで規定されています(2013年8月26日付 外国人投資家の条件付きビジネスリストについての通達(No.1591)および2015年7月13日付 ラオス国籍者のみに保全される事業リストについての通達(No. 1328) )。
 ただし、本リスト以外にも省庁内で独自に規定されているケースがありますので注意が必要です。

<ラオス国籍者のみに保全される事業>
 ラオス国籍者へ保全される事業リストに関する商工大臣令第1328号(2015年7月13日付)では、ラオスの伝統事業や大規模資本・先進技術を要しない事業でラオス人の雇用創出や生計向上に貢献する以下の14分野36業種を、ラオス国籍者のみに保全される事業として定めてられており、外資の参入は一切認められておりません。

 上記のようにラオスでは、数多くの外資規制が存在しております。投資・進出の際には、複数の専門家に必ず確認されることが重要です。このような外資規制をみると、ラオスには、豊富な鉱物資源や水資源を活かし、長期的に腰を据えた国家運営を可能にする隠れた国力があるように感じられます。また、外資規制が厳格だということは、他社が参入しづらいということでもありますので、逆に隠れたチャンスを見出せる可能性があります。法律面の規制はタイやカンボジアに比べて遅れており、課題が多いのも事実ですが、今後役所との協働作業や交渉によっては、運用レベルで、自社に有利なルールを構築できる可能性があり、それが魅力となりえるという側面もあります。

3.ミャンマー

 ミャンマーの外資規制については、国営企業法・外国投資法・外国投資規則及び外資規則通達に基づいて、ネガティブリスト方式で外資規制が規定されています。そもそも民間企業による事業が禁止されている事業、内資との合弁が必要な事業、関連省庁の許可が必要な事業等、具体的な禁止の対象事項や許可のための条件は様々となっています。当該リストに記載されていない業種については、外資企業は自由に投資ができると解されています。

 なお、外国人又は、1%でも株式等を外国人により、直接的または間接的に保有されている企業体は、外資企業として扱われます。

 実務上の留意点として、ミャンマーでは、不動産保有規制が存在し、事実上の外資規制となっています。外国人は、原則として、不動産(土地および建物)の長期利用権の保有ができず、また、一年を超える不動産の賃借も認められないと解されており、外国投資法による投資許可および経済特区法に基づく、投資許可を取得しない限り、不動産の長期利用を前提とする製造業等の事業に対する高いハードルとなっています。

 また、通達等によって、明確に禁止・制限されていませんが、貿易業・卸売業・小売業等のいわゆる商業取引は、原則として外資企業が行うことは認められないと考えられています。

 以上のように、ミャンマーでの外資規制は、様々な法律・規則により規定されており、その適用範囲が必ずしも明確でなく、対象業種であっても事業内容によっては、特別の許可を取得すれば認められる等、関連する規則・通達を踏まえて、個別に判断されています。

 ラオスと同様に、外資規制が厳格だということは、逆に隠れたチャンスを見出せる可能性があります。法律面の規制はラオスと比較しても、さらに制度整備が遅れているイメージであり、今後、新会社法の制定をはじめ、新政府のもとで各種の法改正が予定されており、これからの動向に注目です。

4.まとめ

 カンボジア、ラオス、ミャンマーの外資規制は不透明な部分も多く、事前調査が必ず必要となります。カンボジアに関しては、外資規制は原則存在していませんが、近年、一部の分野においては、外国人の参入を規制するような動きが散見されるような状態です。また、ラオス、ミャンマーの外資規制は、法令ではなく、各省庁の内規や個別判断等で処理されるケースも多く、規制に対する予見可能性が極めて低い状態です。今後、CLMでのM&Aについては、外資規制をはじめとした法律インフラの構築、発展に期待し、動向を注視しながら、不測の事態に備えることが肝要だと思います。

執筆者紹介

  • JBLメコングループ 代表
    藪本 雄登

    メコン地域での数年間の現地での法律実務経験を有し、メコン法務全般に対応します。メコン地域の法務に関する知識と現地での実務経験をもとに、メコン地域への進出戦略の策定、進出時のリーガルフォロー、紛争発生時の対応等を取り行います。

事務所紹介

JBLメコングループ
メコン地域に特化した日系法律事務所。タイ、カンボジア、ラオス、ミャンマーを中心に日系公的機関や日系大手企業の法務顧問として業務支援を執り行う。
連絡先:info@jblmekong.com
ホームページ:http://www.jblmekong.com

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