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MBO事例について
株式会社アミダスパートナーズ
2010/6/1

1.はじめに

  MBO(*1)は2000年頃から急に増加し現在ではM&Aの一類型として定着している。一方、一口にMBOと括ってしまうのは実態を見誤らせるほどに一般的にMBOと言われるM&Aの内容は様々である。例えば、“上場維持のデメリットがメリットを上回ったとの判断のもとに創業経営者一族が行うMBO”もあれば、“ノンコア事業部門を当該部門の経営陣と投資ファンドが共同して買収するMBO”もある。また、実態は投資ファンドによる買収でありながらも経営陣が数%出資することでMBOと呼ばれるものもある。

 MBOは案件毎の実態に応じて把握することが必要であるが、MBOの「目的」や「出資者」の観点より案件を分類することが可能であり、本稿では、一般に “MBO”と括られているM&A取引について、上記、2つの観点から整理を示す。

MBO件数の動向

 

*1 “Management Buyout”の略称。買収対象会社の経営陣による企業買収のことをいう。

2.「目的」による分類(*2)

【1】 非公開型MBO:上場会社による非公開会社化を指向するMBO

 市場における短期的圧力を回避した長期的指向に基づく経営の実現や株主構成が変更されることによる柔軟な経営戦略の実現、上場維持のコスト解消等を理由として、行われるMBOであり、上場企業が対象となるMBOはほぼ全てがこれに分類されよう。

 ところで上場会社のMBOにおいてはスクイーズアウトが行われる。過去においてそのスキームは、金銭を対価とする株式交換や端株方式も採られていたが、平成18年税制改正後は専ら全部取得条項付種類株式によるスキームが取られている(*3)。またTOB価格に付されるプレミアムは近時拡大しているが、これは株式マーケット全体が軟調であったためにDCF法等により算出される株式価値であるTOB価格との乖離が拡大している結果と考える。ただし個々の案件毎の差は大きく(数%から100%を超えるものまで)一律にどの程度のプレミアムが付されているとは言い難い(*4)。

【2】 分割(暖簾分け)型MBO:非中核部門の分離・独立によるMBO

 日本で一般的に行われてきた“暖簾分け”も、暖簾分けをして独立する者が資本を出して従前の組織から事業を取得する場合はMBOに当る(*5)。ノンコア事業のリストラの意味で切り離すために、当該事業の経営陣に対して事業売却するケースは多く見られ、経営陣と投資ファンドの連合体に対して事業を売却し、数年後に株式上場を果たしたケースもみられる。

【3】 企業再生型MBO

 株主価値がゼロとなったような状態で、企業再生の目的で経営陣がスポンサーとして株式を取得する場合がこれに分類される。株主価値が既にゼロになっているために他の株主との利益相反が問題とならないという意味で他のケースとは異なる。

【4】 企業買収防衛策型MBO

 敵対的買収に晒されるリスクが高いとの見通しの中でMBOをするケースがこれに該当する。

*2 参考:北川徹「マネジメント・バイアウト(MBO)における経営者・取締役の行為規整」20頁
   available at http://www.rieti.go.jp/jp/publications/summary/07070007.html
   なお、北川教授は目的別の分類を利益相反構造を分析する枠組みとして提示している。
*3 スクイーズアウトに係るスキームの比較については下記記事が詳しい。
  渡辺邦広「全部取得条項付種類株式を用いた完全子会社化の手続」商事法務1896号(2010)25頁。
*4 プレミアムについて一律の基準で捉えようとする危険性については下記記事が詳しい。
  太田洋「我が国におけるMBOの実務と課題」『経営判断ケースブックー取締役のグッドガバナンスの実践ー』商事法務(2008)97-98頁。
  「現経営陣の経営方針として、会社が不必要に現預金を保有するのみで当該現預金を活用しようとしない場合や含み益の大きな不稼働資産を保有するのみでこれを活用していない場合等、経営が不効率であるが故に株価が会社資産の本来的な実力を反映せずに低く評価されている場合に、当該株価をベースとして一定のプレミアムを上乗せしただけで取締役がMBOを行うことを認めることは、当該現預金や不稼働資産について取締役が活用してこなかった価値を、正に当該取締役が独占することを認めることに繋がるため、不当であるといえよう。あるべきプレミアムの額について一律の基準を設けることは、このような不当な事案でさえも容認することにつながりかねない。逆に、市場価格が会社の本来的な実力を過大評価しているため、表面上のプレミアムは大きくなくとも価格としては適正であるといえる場合もあり得るであろう。」
*5 経済産業省「MBO研究会・提言『我が国におけるMBO導入の意義とその普及に向けての課題』の公表について」(1999)2頁。
  「『MBO』は、通常のM&Aとは異なり、いわゆる「暖簾分け」に近いものであることや、雇用の喪失が最小限にとどまること等の理由から、我が国には比較的受入れられやすい手法と考えられる。」

3.「出資者」による分類

 MBOは経営陣が買収者となるM&Aを指すが、上場企業を対象とするMBOにおいては経営陣や従業員以外の外部出資者が投資家として参加していることが多い。当初、経営陣以外の外部投資家が出資するケースは少なかったようであるが(*6)、上図のとおり、投資ファンド等の外部投資家が出資に参加するMBOは2000年以降一般的に行われている。

 経営陣がどの程度の割合で出資しているかは事案によって異なる。勿論、エクイティーの全額を創業経営者等、MBOを実行する経営者が出資するケースもあるが、エクイティーの数%しか出資せず、ほとんどを投資ファンド等が出資している場合もMBOと呼ばれている。

MBOを「出資」の観点から分類すると以下のように考えられる。

【1】 経営陣が自己資金のみで出資(金融機関からの借入金で調達をする場合も含む)
【2】 経営陣と投資ファンド等が共同で出資(経営陣も相当程度のシェア保有)
【3】 投資ファンド等がほぼ全額を出資(現経営陣の出資は5%程度等)

 一般的にイメージされるMBOは【1】又は【2】のような、経営陣が主導権をもっている又は投資ファンド等と共同しながらもある程度の発言権があるような出資内容ではないだろうか。【3】の類型は実態は投資ファンドによる買収とも同視でき、MBO後に、経営方針の相違等により経営陣が退陣したり、経営陣の株式持分を投資ファンドに売却し退出する事例もある。

*6 前注[5]経済産業省2頁1999年時点の資料では「既に我が国において行われた「MBOの事例は、中小・零細企業の事業承継を除いてはあまりなく、特にVC等の外部投資家が介在したケースは少ない。」と述べられている。

4.最後に

 本稿においては、一般的にMBOと呼ばれる取引の類型について説明を試みた。MBOは株主と経営陣の利益相反の問題であるエージェンシー問題(*7)を解決する有用な手段であるとされるが、MBOのために経営陣が株式を買い集める場面は、一般株主と経営陣の潜在的利益相反が最も懸念される場面である。近時、金融商品取引法や取引所規則の改正が進められ、TOB価格、株式買取請求に基づく買取価格等における価格の算定方法、少数株主排除の是非等について裁判上の判断が示されてもいる。次稿ではMBOに係る制度面や問題点等について概観したい。

*7 株主(委託者)と株主から経営を任される経営者(受託者)の利益が一致しない問題を指す。例えば、経営者が株主価値の最大化よりも経営陣の利益を優先した意思決定をする場合等がこれにあたる。

以上

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