コラム

第六十回目の専門家コラムは、 西村あさひ法律事務所のパートナー弁護士である松浪信也先生に執筆していただきました。松浪先生の略歴を文末に掲載させていただきます。今回のコラムにおいては、増加している上場会社における社外取締役選任と、 「監査役会設置会社」及び「指名委員会等設置会社」に続く第三の選択肢である「監査等委員会設置会社」について取りまとめていただいております。ご参考にしていただければ幸甚です。

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複数の独立社外取締役選任と監査等委員会設置会社の活用
西村あさひ法律事務所 パートナー弁護士・ニューヨーク州弁護士
松浪信也
2015/1/15

1.社外取締役の複数化の流れ

(1)社外取締役の選任状況

 上場会社において社外取締役選任の流れが加速している。

 2014年6月に公布された改正会社法において、社外取締役の選任義務化は見送られたものの、①有価証券報告書提出会社である監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る。)が、②事業年度の末日において、③社外取締役を置いていない場合、取締役は、当該事業年度に関する定時株主総会において、社外取締役を置くことが相当でない理由を説明しなければならないものとすることとされた(会社法327条の2)。また、法務省令には、上記のような社外取締役を置かない一定の会社について、その事業報告及び取締役選任議案に関する株主総会参考書類の内容として、「社外取締役を置くことが相当でない理由」の記載が必要であること、また、事業報告や株主総会参考書類における「相当でない理由」の記載は、個々の株式会社の事情に応じて行う必要があり、社外監査役が2名以上であることのみをもって「相当の理由」とすることはできないことが規定されることが見込まれている。

  このような「社外取締役を置くことが相当でない理由」の開示は、Comply or Explainルールとして機能するものであり、単に社外取締役を置かない理由を述べるだけでは足りず、社外取締役を置くことが相当でない積極的な理由を説明する必要があるものとされている。従って、上場会社が、社外取締役を置かないこととした場合に、「社外取締役を置くことが相当でない積極的な理由」を記載することは、一般に容易ではないことが見込まれる。

  また、東京証券取引所の有価証券上場規程は、上場会社は、独立役員に取締役会における議決権を有しているものが含まれていることの意義を踏まえ、独立役員を確保するように努めるものとする、と規定していたところ、2014年2月5日に、有価証券上場規程を改正し、上場会社に、取締役である独立役員を少なくとも1名以上確保する努力義務を定めている(有価証券上場規程445条の4。なお、同改正は同月10日より施行されている。)。

 このような流れを受けて、2014年7月現在、社外取締役を1名以上選任する東証一部上場企業は74.3%(前年から12.0%増)、うち、取締役である独立役員を選任するものは61.4%(前年から14.5%増)にのぼり、全上場会社では64.4%(前年から10.2%増)、うち、取締役である独立役員を選任するものは46.7%(前年から12.9%増)となっている(東京証券取引所「東証上場会社における社外取締役の選任状況<確報>」(2014年7月25日公表。http://www.tse.or.jp/news/09/b7gje6000004qjly-att/b7gje6000004qjp9.pdf))。

 (2)複数の独立社外取締役の選任

 このように社外取締役の選任が実務の趨勢となっていることに伴い、独立社外取締役の複数化の要請が高まっている。

  議決権行使助言会社であるISSとグラスルイスは、社外取締役の選任の有無を重視している。ISSは、従来から総会後の取締役会に社外取締役(独立性は問わない。)が一人もいない場合、経営トップである取締役の選任議案に反対を推奨することとしており、2015年議決権行使助言方針においては、2016年2月より、取締役会に複数名の社外取締役がいない企業の経営トップに反対を推奨することとした(但し、適用対象企業を日経225構成銘柄やJPX日経400構成銘柄等、機関投資家が幅広く保有し監督機能の強化がより求められる大企業に限定することも考えられるとしている。)。これに対し、グラスルイスは、取締役会に2名と取締役会の20%の員数のいずれか多い数の独立取締役が在任しない場合は取締役会長(会長が不在の場合は社長)の選任議案に反対を推奨するとされている。

  また、「物言う株主」として知られる米カリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)をはじめとする海外機関投資家20社が連名で、時価総額が大きく、かつ社外取締役の比率が低いとされる日本の上場会社33社に、今後3年以内に独立性が高い社外取締役の比率を3分の1以上に引き上げることを求め、達成されない場合は2017年度の株主総会で取締役選任議案に反対することを検討する旨の書簡を送付した(2014年6月5日付日本経済新聞朝刊2面)。

 更に、平成26年12月17日にコーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議により公表された「コーポレートガバナンス・コードの基本的な考え方(案)」において、「独立社外取締役は会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に寄与するように役割・責務を果たすべきであり、上場会社はそのような資質を十分に備えた独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきである。また、業種・規模・事業特性・機関設計・会社をとりまく環境等を総合的に勘案して、自主的な判断により、少なくとも3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考える上場会社は、上記にかかわらず、そのための取組み方針を開示すべきである」との提案がされている。コーポレートガバナンス・コード(案)は、パブリックコメントに付せられることになるが、東京証券取引所において必要な制度整備を行った上で、平成27年6月1日から適用することが想定されている。そして、コーポレートガバナンス・コード(案)に規定された原則のうち、各会社の置かれた状況に応じ適用当初から完全に実施することが難しいものについては、上場会社が、まずは上記の適用開始に向けて真摯な検討や準備作業を行った上で、今後の取組み予定や実施時期の目途を明確に説明(エクスプレイン)することにより、対応を行う可能性は排除されるべきではないとされている。従って、複数の独立社外取締役の選任が求められることとなった場合、その適用までに独立社外取締役を複数選任しない上場会社は、そのような説明を迫られることになる。

2.監査等委員会設置会と社外取締役の複数化

 監査等委員会設置会社は、「代表取締役をはじめとする業務執行者に対する監督機能を強化することを目的として、三人以上の取締役から成り、かつ、その過半数を社外取締役とする監査等委員会が、監査を担うとともに、業務執行者を含む取締役の人事(指名および報酬)に関して、株主総会における意見陳述権を有することとする制度」であり(坂本三郎=髙木弘明=宮崎雅之=内田修平=塚本英巨=辰巳郁=渡辺邦広「平成二六年改正会社法の解説[Ⅱ]」商事法務2042号(2014)19頁)、監査役会設置会社及び指名委員会等設置会社に続く第三の選択肢である。

 既存の監査役会設置会社において、大規模な上場会社を中心に複数の社外取締役を選任している会社は多い。しかし、監査役会設置会社において複数の社外取締役を選任すると、社外監査役最低2名とあわせ社外役員が4名以上となり、よりコンパクトな取締役会を組成している上場会社においては、社外役員に余剰感が生じ得る。

 これに対して、監査等委員会設置会社において求められる最低限の社外役員は、監査等委員である社外取締役2名であるので、そのような事態を避けることも可能である。また、上記のとおり、機関投資家を中心に複数の社外取締役の選任への圧力が高まりつつある中で、監査等委員会設置会社に移行することにより、社外役員の総数を過大にすることなく、そのような要請に応えることができることとなる。

 社外取締役を複数置くことにより、経営者の業務執行に対する監督の強化、社外の知見の積極的な活用といった社外取締役の導入メリットをより享受しやすくなると考えられる。すなわち、取締役会において社外者を意識した説明が必要となることや、社外取締役の有する外部の知見を生かしたより視野の広い客観的な議論がなされることにより、会社の施策をより効率的なものとするとともに、社外取締役による監督により業務執行の適正化が図られる等のメリットが期待される。

 監査等委員会設置会社の導入に際しては、それに伴う負担についても検討する必要があることも事実である。しかしながら、監査等委員会設置会社は、社外役員の員数の最適化のみならず、複数の社外取締役選任のメリットをより容易に実現することを可能とする等、複数のメリットがある制度であり、今後とも注目が高まるものと見込まれる。

 
以上
 

執筆者紹介

  • 西村あさひ法律事務所
    パートナー弁護士・ニューヨーク州弁護士
    松浪信也

略歴

2000年
西村総合法律事務所(現西村あさひ法律事務所)に入所し、複数のクロスボーダーM&A案件等に関与
2005年-2006年
ニューヨークのシュルティ・ロス・アンド・ゼイベル法律事務所に勤務
2009年-
成蹊大学法科大学院・非常勤講師(M&A特殊講義担当)

主な著書・論文

2014年
「監査等委員会設置会社の実務」(中央経済社)
2014年9月
「監査等委員会設置会社への移行によるコーポレートガバナンス」(Business Law Journal)
2013年
「The International Comparative Legal Guide to: Corporate Governance2013(Japan Chapter)」(Global Legal Group Ltd.)
2011年
「会社法実務解説」(共著 有斐閣)
2010年
「アーンアウト条項における検討事項」(商事法務)

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