コラム

第五十九回目の専門家コラムは、木村会計事務所の公認会計士・税理士である木村俊治先生に執筆していただきました。木村先生の略歴を文末に掲載させていただきます。今回のコラムにおいては、会社の収益力をみるための代表的な指標であるROAとROEについて取りまとめていただいております。ご参考にしていただければ幸甚です。

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ROAとROE
木村会計事務所 公認会計士・税理士 木村俊治
2014/12/15

1.ROAとROE

 ROAとROEは会社の収益力をみるための代表的な指標です。その算定式は次のとおりです。



 このコラムでは、このROAとROEを用いて会社の収益力について考えていきたいと思います。

2.収益力とは

 会社の収益力をみる時に、何をみるでしょうか?

 一番に思いつくものは、売上高利益率ではないでしょうか。もちろん、売上高利益率が高くなれば、収益力は高くなる可能性はありますが、かならずしもそのようなことはありません。

 そもそも、会社の収益力が高いとはどういうことかを考えていきましょう。

 おカネという観点から、会社をみると、会社とはおカネを調達し、その調達したおカネを投下しておカネを稼ぐ存在です。会社というのはおカネを稼ぐ存在です。つまり収益力が高いということはおカネを稼ぐ力が高いことであり、その意味するところは投下したおカネに対して、どれだけたくさんのおカネをかせげたのかということになります。

 会社はおカネを調達して稼ぐという存在なのですが、この点を、貸借対照表(BS)と損益計算書(PL)で確認してみましょう。

 おカネの調達をあらわすのが、BSの右側の部分である負債と資本部分です。BSの右側は負債と資本でそれぞれどれくらいおカネを調達しているかをあらわしています。そして負債と資本で調達したおカネを投下している姿が一つにはBSの左側の資産になり、もう一つの投下された姿がPLにおける費用になります。おカネをどれだけ稼ぐのかを表すのがPLの売上になります。

 ここで利益について考えてみます。稼いだおカネは売上であらわされています。一方、その稼いだおカネにどれだけおカネが投下されたかを考えてみますと費用は投下されたおカネの一部を表しているにすぎません。利益というのは会社の稼いだおカネからおカネを稼ぐために投下されたおカネの一部である費用をひいたものに過ぎません。もちろん、稼いだおカネから費用に投下されたおカネを引いた利益と稼いだおカネを比較するという売上高利益率は意味のあることですが、会社の収益力であるどれだけおカネを使ってどれだけ稼いだかを考えるためには、売上高と利益の比較だけを考えてしまうと足りていません。

 何が足りていないか?資産に投下されたおカネの部分が足りていないのです。この資産に投下されたおカネを考慮しているのがROAです。会社が調達して投下しているカネを全て考慮していることから、ROAというのは収益力をみるための総合的指標といわれまる。ROAの分子は稼いだおカネから費用として投下されたおカネをひいたものであり、分母の総資産は会社が調達した資金のうちこれから会社が稼ぐために投下しているおカネとなります。

3.売上高利益率とROA

 ROAについて、売上高利益率の関係に言及しながら、具体的な数値でみていきましょう。

 ある会社のある期とその5年後の期の数字です。

 5年後には売上が2倍、利益は5倍、利益率も2.5倍に増えています。会社は増収増益、さらには売上高利益率も高くなっているのですから、会社の収益力は高くなったと考える人は多いのではないでしょうか?

 ここで資産の観点を加えてみてみましょう。当初、この会社の総資産は100でした、5年後は1000になっています。

 ROAを考えると

 これは当初は100投資して10稼げたのに、5年後は1000も投資しているのに50しか稼げていないことになっています。わかりやすく言えば、この会社は当初は投下した資産で10%の利回りを上げていたのに、5年後は5%の利回りしか稼げなくなり、収益力が半減してしまっていることになります。

 この点をもう少詳しくみていきましょう。ROAは次のように売上高利益率と回転率に分かれます。

 これを当初と5年後でみてみます。

 利益率は5年後増加していますが、回転率が下がっています。調達したおカネを資産へ投下したことで、利益率は増加したものの、投下した資産に見合った売上が上がっていないことになります。資産へ投下したばかりでこれから売上を上げていくのならいいのですが、売上に貢献しない資産へ投下してしまっていたら大変です。会社の収益力を考える上で、売上高利益率も大切ですが、ROAという視点も大切です。むしろ、ROAの方が大切です。

4.ROE

 ROEというのは利益÷純資産です。総資産が純資産に変わっただけですが、会社の収益を考えると、そのもつ意味はまったく異なります。純資産というのは株主から調達してきたおカネであり、いわば株主の持ち分です。この株主が投資しているおカネである純資産と利益を比較しているものがROEとなります。ROAは株主以外からも調達した資本を踏まえて会社の収益力の総合的指標であることに対して、ROEというのは株主の投下したおカネと利益を比較しているにすぎません。ROEというのはあくまでも株主という投資家からみると自分の投資したおカネでどれくらい利益が稼げているのかがわかることから大切な指標ですが、会社の収益力を高めるという点から考えるとあまり大切ではありません。  どういうことでしょうか?  ROEとROAの関係は次のとおりです。



 この式をみると、ROEを高めるには、まず、一つはROAを高めることです。ROAを高めた結果ROEは高まります。一方で、ROAが一定ないしは、下がっても「総資産/純資産」が高まれば結果としてROEが高まることになります。例えば、投資にあたり、負債でおカネを調達したものの、投資の結果ROAが下がってしまってもROEが高まることがあります。

 株主を重視のために、ROE重視することを大切ですが、あくまでも、ROEというのは株主からみた収益力に過ぎず、会社の収益力そのものをあらわす指標でないことに留意していただければと思います。

 プロフィール  995年神戸大学卒業。大学卒業後営業職を経て、公認会計士試験に挑戦し1度で合格。1999年、監査法人入社し、上場会社の監査から、株式公開業務、税務・経理コンサル業務に従事。2004年投資ファンド運営会社に入社し、企業再生業務に従事。2008年に木村会計事務所として独立開業。現在は、上場会社から中小企業の会計税務顧問として会計税務を通じて経営サポートを行っている。著書には、「決算書が読めない社員はいらない」、「面白いほど仕事に使える会計の本」などがある。

執筆者紹介

  • 木村会計事務所
    公認会計士・税理士
    木村俊治

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