コラム

第五十六回目の専門家コラムは、西村あさひ法律事務所の弁護士である有吉尚哉先生に執筆していただきました。有吉先生の略歴を文末に掲載させていただきます。今回のコラムにおいては、 株式投資型クラウドファンディングに関する規制や、新たな非上場株式の取引制度の動向について取りまとめていただいております。ご参考にしていただければ幸甚です。

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非上場株式取引制度を巡る近時の動向
西村あさひ法律事務所
パートナー 弁護士 有吉 尚哉
2014/7/15

非上場株式取引制度の見直し

近時、非上場株式取引制度の見直しが進められている。

 2013年6月以降、金融審議会「新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループ」では、起業や新規ビジネスの創出を活性化させる観点から、資金調達を巡る問題等についての検討が行われ、その結果として12月25日に報告書(以下「金融審WG報告書」)を取りまとめ、公表した。金融審WG報告書の内容は多岐に渡っているが、事業化段階等におけるリスクマネーの供給促進策として、非上場株式取引制度に関連する①投資型クラウドファンディングに係る制度整備と②非上場株式の取引・換金のための枠組みの整備という2項目が制度改正の提言として盛り込まれた。

 そして、金融審WG報告書の提言を踏まえた非上場株式取引に関する制度改正の取組みが進められている。2014年5月23日には「金融商品取引法等の一部を改正する法律」(以下「本件改正法」)が成立し、金融商品取引法(以下「金商法」)の関連事項の改正が行われた(施行時期は公布日(5月30日)から1年以内)。また、6月17日には日本証券業協会より、株式投資型クラウドファンディングおよびグリーンシート銘柄制度等に代わる新たな非上場株式の取引制度のあり方についての検討結果を取りまとめた「非上場株式の取引制度等に関するワーキング・グループ」報告書(以下「日証協WG報告書」)が公表された。

 以下、株式投資型クラウドファンディングに関する規制と新たな非上場株式の取引制度の動向を紹介する。

 

株式投資型クラウドファンディングの制度整備

 「クラウドファンディング」とは、一般的には、資金需要のある者がインターネットを通じて不特定多数の者から資金を調達する手法を意味する概念として用いられている。一概にクラウドファンディングといっても、そのスキームは多様であり、投資型、貸付け型、売買・役務提供型、寄付型などの類型に大別される。金融審WG報告書の提言の対象となっているのは、このうちの投資型のスキームである。投資型のスキームでは、株式や匿名組合などが利用されるため、金商法の規制の対象となるところ、本件改正法においては、インターネットを通じて投資勧誘を行うクラウドファンディング業者に対する規制を整備するための法改正が行われている。以下では、このうちの株式を利用したスキームに関する規制の改正について概説する(匿名組合などのファンドを利用する投資型クラウドファンディングに関する規制についても改正が行われているが、紙幅の都合から本稿では解説を省略する)。

 他者の発行する有価証券の投資勧誘を行うためには、参入要件として金融商品取引業の登録が必要であり、現行の規制の下では、株式の勧誘には第一種金融商品取引業(証券会社)の登録が必要となる(株式投資型クラウドファンディングにおいてインターネットを通じて投資勧誘を行うことも対象となる)。本件改正法により、新たに非上場の株式についての電子募集取扱業務(インターネットを利用する方法による有価証券の販売勧誘)であって有価証券の発行価額が少額であること(発行総額1億円未満、一人当たり投資額50万円以下とすることが予定されている)などの要件を満たすもののみを行う業者(第一種少額電子募集取扱業者)について、登録に必要な最低資本金基準を引き下げたり、兼業規制を適用しないこととするなどの規制の緩和が図られることとなった。同時に、非上場の有価証券について電子募集取扱業務を行う金融商品取引業者には、投資判断に影響を与えるような一定の事項について、インターネットを利用する方法により投資者が閲覧することができる状態に置くことが義務づけられるなど、クラウドファンディングにおける投資者保護を拡充するための規制の整備も図られている。

 また、日本証券業協会の現行の自主規制では、協会の会員である証券会社が非上場株式の投資勧誘を行うことが原則として禁止されているところ、日証協WG報告書においては、証券会社と第一種少額電子募集取扱業者が行う株式投資型クラウドファンディングにおける投資勧誘を例外的に認めることが提言された。併せて、(a)第一種少額電子募集取扱業者に対して基本的に証券会社と同様の自主規制を適用すること、(b)証券会社にも「少額」のものに限って非上場株式を対象とする株式投資型クラウドファンディングの投資勧誘を認め、かつ、電話、対面などのインターネット以外の勧誘手法の併用を認めないこと、(c)株式投資型クラウドファンディングに係る自主規制を整備することなども提言されている。なお、自主規制の詳細な内容は、本件改正法に関連する政令・内閣府令の内容が明らかになった後に検討されるものと見込まれる。

 これらの制度の見直しにより、株式投資型クラウドファンディングにおいて業者が投資勧誘を行うための規制の障壁が低くなる一方で、株式投資型クラウドファンディングの特殊性を踏まえた投資者保護のための規制が整備されることになる。

「投資グループ」制度

 現在、証券会社を通じて非上場株式の取引を行う制度として、日本証券業協会が運営するグリーンシート銘柄制度やフェニックス銘柄制度が存在するが、近年、その利用が低迷している。制度の利用が低迷している原因としては、インサイダー取引規制が適用されることや、自主規制による開示の負担が重いことなどが指摘されていた。

 本件改正法では、このような状況を踏まえて、日本証券業協会の規則により流通性が制限されていると認められる非上場の有価証券を、金商法上、インサイダー取引規制が適用される「取扱有価証券」から除外することを可能とする改正が行われている。

 この改正を受けて、日証協WG報告書では、グリーンシート銘柄制度とフェニックス銘柄制度を廃止する一方で、証券会社が非上場株式の銘柄ごとに組成する「投資グループ」に加入する投資者に限り、当該非上場株式の投資勧誘を認めるという新しい非上場株式取引制度を創設することが提言されている(なお、「投資グループ」という呼び名は仮称であり、今後、変更される可能性がある)。投資グループ制度による取引については、前述の金商法の改正により、インサイダー取引規制の適用が除外され、さらに、自主規制による適時開示も不要とすることが想定されている。一方で、投資グループに加入する投資者に対して、金商法や会社法により発行者が作成する書類を証券会社が提供することにより、必要最小限の情報提供が図られるとともに、投資グループを組成する証券会社に対しては、適切な情報提供・業務管理を行うための体制整備が自主規制により求められることが想定されている。

 投資グループ制度の活用方法としては、公共交通機関や百貨店などの地域に根ざした非上場企業が提供する株主優待を目当てに当該企業の株式を取得しようとする者に取引の場を提供するケースや、新規・成長企業の株式を対象に、そのような企業を支援しようとする者に取引の場を提供するケースなどが利用例として指摘される。もっとも、日証協WG報告書の提案では、規則によってグループに加入できる投資者の要件を定めることはせず、投資グループを組成する証券会社の裁量によって加入者の範囲を決定できるようにすることが想定されている。また、非上場株式のセカンダリーの売買だけでなく、投資グループに参加する投資者に対して、新たに発行される株式の投資勧誘を証券会社が行うことも許容することが想定されている。そのため、投資グループ制度を利用できる場面が制度として限定されるわけではない。

非上場株式取引への期待

 リスクマネーの供給促進や地域経済の活性化などの観点から、非上場株式取引に関わる制度整備を進めることに社会経済的な有用性が認められる一方で、これまで非上場株式の取引による投資者被害が生じる事例も少なくなかったことにも留意しなければならない。

 非上場株式は、基本的に流動性が乏しく、売却により投資資金を回収することが困難であったり、売却できたとしても割安な価格でしか取引できないことも多い。また、ファンドや債券と異なり、一定の期日に償還が予定されているものではなく、収益配当や利息の支払いの有無・金額が約定によって定まっているものでもない。開示される情報も限られており、投資判断に関わる情報が十分に得られない場合もあり、また、上場株式と比べて開示された情報の正確性を担保するための制度も十分ではない。非上場株式の取引を行う投資者は、このような非上場株式の特性やリスクを十分に理解して取引を行うことが必要であり、非上場株式取引の特性に関する周知・啓蒙や、詐欺的な行為を抑止するための自主規制などを通じた規律が重要といえる。

 同時に、発行者となる非上場企業の側も、クラウドファンディングなどを通じて資金調達は達成できたとしても、多数の小口株主が生じることによって、株主管理のコストがかさんだり、企業経営の柔軟性が損なわれるといったデメリットが生じうることも勘案して、非上場株式を利用したファイナンスの当否を検討することが必要になる。

 このように、一般論としては、非上場株式の取引に難点もあることは否定できないが、投資者・発行者双方のデメリットを緩和する方策として、例えば、種類株を利用した非上場株式取引の可能性が指摘されることなどもある。これまで金商法や自主規制により一律的に制限されていた非上場株式取引について、今般の制度整備により利用可能性が高まることとなり、民間の創意工夫により、投資者保護を確保しつつ、投資者・発行者のニーズを満たした非上場株式取引のスキームが活用されていくことを期待したい。

以上

執筆者紹介

  • 西村あさひ法律事務所 パートナー 弁護士
    有吉尚哉

略歴

2001年
東京大学法学部第一類卒業
2009年
金融法委員会 委員
2010年-2011年
金融庁総務企画局企業開示課出向
2013年
京都大学法科大学院 非常勤講師
2013年
日本証券業協会「JSDAキャピタルマーケットフォーラム」専門委員
2013年
日本証券業協会「非上場株式の取引制度等に関するワーキング・グループ」委員

主な著書・論文等

2014年6月
「論点体系 金融商品取引法 1・2」(共著) 第一法規
2014年5月
「日本版スチュワードシップ・コードへの実務対応」 旬刊商事法務2034号
2014年4月
「「貸金業」の範囲見直しによるグループ内金融・合弁事業への影響」(共著)
 旬刊商事法務2031号
2013年9月
「クラウドファンディングの類型と規制の適用関係」 NBL1009号
2012年11月
「速報! 会社法改正」(共著) 清文社

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