コラム

第五回目の専門家コラムは、日本税制研究所の代表理事であり、税理士法人アクト22の代表社員である朝長英樹先生に執筆していただきました。朝長先生の略歴を文末に掲載させていただきます。
今回のコラムにおいては、平成22年度改正において創設されたグループ税制を踏まえ、「法人税法におけるグループの捉え方」について、纏めていただいております。ご参考にしていただければ幸甚です。

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法人税法における「グループ」の捉え方
日本税制研究所 代表理事 税理士法人 アクト22 代表社員 朝長 英樹
2010/4/16

 かつて、法人税の世界においては、「「グループ」は税金を減らすために悪いことをするもの」という捉え方が常識であったと言っても、過言ではありません。 同族会社に対する留保金課税や行為計算否認は、法人税におけるそのような「グループ」の捉え方を最も良く示すものということができますし、税務執行の現場におけるかつての認識も、間違いなく、そのようなものとなっていました。 平成13年度の組織再編成税制の創設は、そのような「グループ」の捉え方を根本から変えるものでした。

 組織再編成税制においては、予断なく「グループ」を眺め、その実態に合わせて税制を構築することとし、「グループ」であれば課税を繰り延べるが、「グループ」でなければ課税の繰り延べを行わせないとしたわけですが、これは、従来の「グループ」に対する捉え方のコペルニクス的転回と言ってもよいものでした。

 その後、平成14年の連結納税制度は、「グループ」が一体として活動している実態を踏まえて、「グループ」であれば一体として所得の金額と税額を計算して損益通算のメリットを受けてよいとしたものであり、「グループ」の捉え方はこれをもって後戻りすることのないものとなった、と言えます。

 その後、平成18年度改正において創設された特殊支配同族会社に係る税制は、この「グループ」に対する捉え方をやや後退させるものとなったことは否めませんが、平成22年度改正において、この特殊支配同族会社に係る税制が廃止され、グループ税制が創設されたことは、近年の税制改正における「グループ」の捉え方の大転換を改めて印象付けるものとなりました。

 このように、「グループ」は、近年の法人税法改正において、最も重要な概念であると言ってよいものです。

 このため、法人税法がこの「グループ」をどのようなものと考えているのかということは、非常に重要となります。

1.組織再編成税制における「グループ」

 平成13年度に創設された組織再編成税制においては、周知のとおり、「100%グループ内の組織再編成」と「50%超100%未満のグループ内の組織再編成」が「共同事業を営むための組織再編成」とともに適格組織再編成とされました。

 このように「グループ」内の組織再編成を特例として課税の繰延べを認めることとしたのは、「グループ」が一体的に活動しているという実態に着目したものです。組織再編成税制においては、「グループ」をその「支配関係」に基づいて捉えることとしており、その「支配関係」は「資本関係」によって捉えることとされていました。

 しかし、この「支配関係」と「資本関係」とを同じものと捉えていたわけではない点に留意する必要があります。

 「グループ」には、その外枠を画する「資本関係」もあれば、その枠内に存在する多様な「資本関係」もあるわけですが、組織再編成税制においては、その多くの「資本関係」の中で、その外枠を画する「資本関係」のみを「グループ」の判断の基準としているわけであり、「資本関係」のすべてを「グループ」であるか否かの判断の基準としているわけではありません。

2.連結納税制度における「グループ」

 平成14年度改正で連結納税制度が創設されましたが、連結納税制度は、正しく、「グループ」の税制そのものということになります。

 連結納税制度は、「グループ」が一体として活動しているという実態を税制度に反映させるべく考案されたものです。

 一体として活動する「グループ」ということになると、その頂点にあるものは、「支配」することがあり得る者であれば、いずれでも良いわけですが、個人や外国法人までを含めて一つにして課税を行うという制度を設けることは、現実には困難であるため、連結納税制度においては、内国法人のみの「グループ」を対象とすることとされています。

 この「グループ」の中においては、多様な「資本関係」が存在することとなりますが、組織再編成税制における「グループ」とは異なり、常に、頂点にある内国法人が 「グループ」内の他のすべての内国法人の株式を直接又は間接に保有する関係となっています。このため、連結納税制度の対象となる「グループ」は、常に一つの内国法人が頂点にあって他の内国法人の「支配」を行うというものとなるわけです。

 ただし、この連結納税制度における「グループ」に関しても、組織再編成税制の場合と同様に、「支配関係」に着目して制度設計が行われており、「支配関係」と「資本関係」とを混同しているわけではない、という点を確認しておく必要があります。

 仮に、連結納税制度が「支配関係」ではなく「資本関係」によって「グループ」を捉えるということであったとしたら、例えば、全体としては100%の「資本関係」にある「グループ」でありながらその中にお互いに「資本関係」のない法人や「グループ」が存在するという場合に、その大きな「グループ」の「資本関係」のみを考慮して課税所得や税額の計算を行い、その大きな「グループ」の中のお互いに「資本関係」のない法人や「グループ」の「資本関係」を考慮しないことを合理的に説明することはできません。

3.グループ税制における「グループ」

 平成22年度改正において創設されたグループ税制は、「グループ」の持分割合の考え方については組織再編成税制や連結納税制度と異なるところはありませんが、「グループ」の捉え方については組織再編成税制や連結納税制度とかなり異なるものとなっています。そして、単にグループ税制における「グループ」の捉え方が組織再編成税制や連結納税制度とは異なるというに止まらず、組織再編成税制や連結納税制度における「グループ」の捉え方まで変更されています。

 このため、グループ税制における「グループ」に関しては、同制度における「グループ」がどのようなものであるのかということだけでなく、組織再編成税制や連結納税制度における「グループ」がどのように変更されているのかということも問題となる可能性があります。

 まず、新法人税法施行令2条(定義)の12号の7の5と12号の7の6の規定を確認しておきましょう。



新法人税法2条(定義)

  • 十二の七の五 支配関係 一の者が法人の発行済株式若しくは出資(当該法人が有する自己の株式又は出資を除く。以下この条において「発行済株式等」という。)の総数又は総額の百分の五十を超える数若しくは金額の株式若しくは出資を直接若しくは間接に保有する関係として政令で定める関係(以下この号において「当事者間の支配の関係」という。)又は一の者との間に当事者間の支配の関係がある法人相互の関係をいう。

  • 十二の七の六 完全支配関係 一の者が法人の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する関係として政令で定める関係(以下この号において「当事者間の完全支配の関係」という。)又は一の者との間に当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係をいう。



 このように、グループ税制の創設に際し、「グループ」を表す「支配関係」と「完全支配関係」について統一的な定義を設けること自体には合理性がある、ということができますし、これらの定義を見る限り、「グループ」の内容が特に変わっているとは思われません。

 しかし、これらの用語がどのように用いられているのかということを見てみると、「グループ」の捉え方が従来とかなり異なっていることが分かります。

 例えば、「適格合併」の定義(法法2十二の八イ・ロ)においては、「いずれか一方の法人による完全支配関係」という表現が用いられており、各所においてこのような「・・・による支配関係」、「・・・による完全支配関係」という表現が用いられています。

 このような表現は、「支配関係」、「完全支配関係」という定義語を法人税法2条12号の7の5及び同条12号の7の6に規定された本来の内容に置き換えて読んでみると容易に分かることですが、そもそも正しい文章となっていないため、立法上、問題がある、ということになります。

 このため、本来は、この立法上の問題点を是正し、その是正後の規定を見た上でなければ、正しい検討はできないわけですが、上記のような表現振りから察すると、立法者は、「グループ」の中に更に小さな”グループ”を認識しているものと思われます。

 このような、「グループ」の中に更に小さな「グループ」があるという理解は、グループ税制創設の理由とされている「グループ」の一体性という認識と矛盾するものと言わざるを得ず、これは、「資本関係」と「支配関係」の相違の認識の不足に基因するものと考えられますが、現にこのような理解に立つということになると、”グループ“の中に税制上の取扱いが異なるものが並存するという状態が生ずるということになります。

 例えば、法人税率に関しては、次のような新たな規定が設けられており、100%の「資本関係」のある「グループ」内に資本金1億円超の法人とその法人が100%の株式を保有する法人があったとすれば、これらの法人は、その「グループ」内の他の法人とは適用される税率が異なるということになります。



 新法人税法66条(各事業年度の所得に対する法人税の税率)

  • 6 内国法人である普通法人のうち各事業年度終了の時において次に掲げる法人に該当するものについては、第二項の規定は、適用しない。
    一 省略
    二 次に掲げる法人との間に当該法人による完全支配関係がある普通法人
     イ 資本金の額又は出資金の額が五億円以上である法人
     ロ・ハ 省略



 このように、一つの「グループ」の中に税制上の取扱いが異なるものが並存するということは、「グループ」を一体として税制上の取扱いを考えるだけでは済まないことがある、ということを意味します。このため、本年10月1日以後の取引に関しては、グループ税制のみならず、組織再編成税制や連結納税制度においても、この「グループ」の捉え方が変わっているという点を常に念頭に置きながら、注意深く、各規定を見ることが必要となります。

 現在までのところ、「グループ」の捉え方をこのように変更することによってどの規定にどのような問題が生ずることとなるのかというような点についての十分な検証作業は行い得ていませんので、まだ、具体的な指摘はできませんが、現時点で言えることは、「いずれか一方の法人による完全支配関係」という表現が用いられている部分については、新法人税法2条12号の7の6の前半部分だけの関係と解し、「一の者による完全支配関係」という表現が用いられている部分に関しては、同号の後半部分だけの関係と解するのが適当であると考えられる、ということです。

執筆者紹介

略歴

1982年4月
東京国税局入局
1982年4月-1995年7月
成田・京橋税務署、東京国税局調査部において、主に法人税調査・審理に従事
1995年7月-2003年7月
財務省主税局において、金融取引に係る法人税制の改正(2000年)、組織再編成税制の創設(2001年)、連結納税制度の創設(2002年)などの改正を主導
2003年7月-2006年7月
税務大学校勤務、税務大学校教授を最後に退官
2007年3月-
日本税制研究所代表理事
2011年4月-
朝長英樹税理士事務所所長

主な著書

「企業組織再編成に係る税制についての講演録集」日本租税研究協会
「日本型連結納税制度の基本的な考え方と法令等の概要」日本租税研究協会
「公益法人税制」法令出版(共著)
「精説 公益法人の税務」公益法人協会(共著)
「リース税制」法令出版(編著)
「国際的二重課税排除の制度と実務 -外国税額控除制度・外国子会社配当等益金不算入制度-」法令出版(編著)
「会社合併実務必携」法令出版(共著)
「グループ法人税制」法令出版(編著)
「外国子会社合算税制(タックス・ヘイブン対策税制)」法令出版(編著)
「連結納税制度」法令出版(編著)
「組織再編成をめぐる包括否認と税務訴訟」清文社(編著)
「会社分割実務必携」法令出版(編著)
「株式交換・株式移転 実務必携」法令出版(編著)
「解散・清算 実務必携」法令出版(編著)

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