コラム

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M&Aアドバイザリー業務についての私見
株式会社アミダスパートナーズ
2010/4/1

始めに

 今回のコラムでは、M&Aのアドバイザリー業務をさせていただく中で、私が感じていることの中から、M&Aの検討、報酬、デューディリジェンス、双方代理の4つについて、書かせていただければと思います。

 その前に、前回のコラムで触れさせていただいた、キリンホールディングスとサントリーホールディングスの統合が見送りとなりました。報道によれば、株主の問題が解決されなかったことが要因のようですが、初期的な段階から明らかに問題になると思われる事項であっただけに残念に感じました。しかし、様々なことを検討された上での結論かと思いますので、両社の最終判断に敬意を表し、両社の今後の事業発展を祈念したいと思います。

M&Aの検討

 M&Aについて話を伺う機会をいただいた際、売却の場合でも、買収の場合でも「どこか良い先があればご紹介下さい。」という返事をいただくことが以前は良くありました。

 特に子会社や事業部門の売却を社内で検討される場合には、具体的な相手先があった方が、進めやすいというお話もよく頂戴しました。そうした際、情報管理の問題や子会社、事業部門の現状理解や進め方を決めるために、出来れば秘密保持の契約を締結し、事前に検討の機会をいただけないかとのお願いをしておりました。

 事前検討が重要と考えるのは、弊社が逆の立場(買収側のアドバイザー)で、売却側から資料(ケースによっては、何の加工もされていない生のデータだけを頂くこともあります。)を頂戴しますと、情報が不十分であったり、その結果対象会社の管理体制に疑問をもってしまうなど、準備不足等が原因で、案件の進行が妨げられることが少なくないからです。

 最近では、弊社の趣旨をご理解いただき、事前の準備期間をいただけるケースが増えてきました。具体的には、事業内容の理解、他社に提案をする前に整理しておくべき事項への対応、想定される質問についての整理、提案先としてどこを選択するのかの検討、事業計画の作成、売却条件の整理などを事前に支援させていただいています。

 戦略的な売却を検討されるのであれば、アドバイザーともよく相談し、事前の準備を怠らない事が、良い相手先、条件を確保する為には必要かと思います。特に、現在の厳しい環境下においては、事前準備の差が、獲得できる条件の差に顕著に現れていると私は思います。

 一方で、買収を検討されている企業の姿勢も大きく変わってきています。戦略的に伸ばしていく分野だけではなく、具体的な事業や場合によっては相手先企業まで絞って検討されることも増えてきました。

 日本国内では、敵対的(何をもって敵対的というのかは議論の余地がありますが)買収はあまりありませんが、マネージメントに対しての統合等の提案やその提案について株主の方々に問うような案件が今後増加してくるのではないかと思っています。

 もし、現在のマネージメントより、より良い経営が出来、従業員や取引先などの理解も得られるのであれば、例え現マネージメントの反対があったしても、株主にその是非を問うことがあっても良いのではないかと私は思っています。それが、より企業を強くし、マネージメントの質を高めることに繋がるのではないかと考えます。

 敵対的な買収防衛策の議論も冷静さを取戻しつつある中、経営と資本について新たに考える段階に来ているのではないかと思っています。

M&Aの報酬について

 M&Aの報酬体系は会社によって様々ですが、拝見していますと相談無料との記載を良く見かけます。相談が無料なのは当たり前のことですが、問題は、成功報酬のみなのか、事前に着手金や中間金が必要なのかということかと思います。個人的には、M&Aアドバイザーの報酬は、成功報酬のみで、売買等の代金が決済され、お客様の要請に応えられた時に報酬をいただくのが良いと思っています。

 しかしながら、ストラクチャーの立案などで、専門家の実費(弁護士、会計士、税理士等の専門家はタイムチャージが基本)が必要になることがあります。また最近では、依頼内容も多様化しており、前述のように事前に相当のM&A準備をする場合などが出てきています。そうした場合には、ケースバイケースで着手金や中間金等をお願いしています。当然、相談段階で報酬が発生することはありませんし、お客様の了解を得ずに専門家を起用する事もありません。M&Aを検討することが具体的になって始めて、双方の合意で報酬についての取り決めをさせていただいています。より良いM&Aを実現するために、お客様と十分協議させていただき、サービス内容と報酬についてご提案していく必要があると思っています。

 次に、M&Aの一般的な手数料体系であるリーマン方式について触れさせていただきます。取引金額等に応じて報酬を計算するものです。この取引金額による報酬体系は、売却側では理に適っていると思いますが、買収側では若干の違和感があるのではないでしょうか。すなわち、売却側では取引金額が増えることは手取金額が増え好ましい事であり、そうしたインセンティブをアドバイザーに与える事は意味のあることと思います。一方で、買収側では、買収金額が増加して、報酬額も増えるという事に納得出来ないという意見も理解できます。弊社では、そうした要請にも応え報酬体系を柔軟に考え対応しています。

 取引金額に応じた報酬体系の契約で注意すべき点を一点記載しておきます。それは、合併や株式交換など合併比率等に応じて株式が交付されるM&Aの場合です。このようなケースで、双方の価値がより高まること(比率なので、互いの価値がそれぞれ上がる事は、双方の株主にとってはあまり意味の無い結果になります。一方で、当事会社の暖簾代は大きくなります。)は、アドバイザーの報酬を増やすだけという結果になることもあり、価値が向上したからといって決してプラスだけではないことにご留意頂ければと思います。

デューディリジェンスについて

 デューディリジェンス(以下、「DD」と記載。)の目的は、(1)それまでに入手していた情報と事実が相違していないかの確認、(2)資料に表れない隠れた瑕疵がないかの確認、(3)買収後の経営改善に生かすための調査があるかと思います。(1)(2)は当然重要ですが、今後の経営を軌道に乗せ、成長させるには(3)が特に重要かと私は考えます。(3)の事例を一つご紹介したいと思います。

 飲食関連の会社がファミリーレストランチェーンを買収した際に通常のDD以外に、ファミリーレストランチェーンのジャガイモと玉ねぎの仕入れ価格を3年分調査しました。この調査に基づき、買収後、原価をどれだけ低減することが可能かの試算を行いました。また、この原価低減によっても、赤字になってしまう店舗について、違約金を払ってでも契約満期前に店舗を閉鎖した方が良いのか、契約満期まで待って店舗閉鎖をするほうが良いのかをシュミレーションしました。結果として、赤字店舗を全て買収後閉鎖する方が、税務面等を考慮しても良いとのことになりました。買収された会社は、買収後、直ぐに赤字店舗を閉鎖し、原価の低減に努められ、半年後には、大幅な利益改善と買収価格の25%アップまで株価を押し上げることに成功されました。

 上記例に留まらず、M&Aの過程において、DDは特に重要です。対象会社を精査する中で、様々な問題点が浮き彫りにされます。問題が発見された場合には、それが解決可能なのかどうか、解決するにはどうすれば良いのかを見極め、対応することが求められます。解決不能な問題が生じた場合には、リスクとして取れるものかどうかを見極め、場合によっては、案件を見送る事も大切です。

 案件の規模によっては、DDが軽視されることも見受けられますが、万が一のことが生じた場合には、対象会社だけでなく買収会社も大きな影響を受ける恐れがあります。それがM&Aであり、規模は小さくてもDDが必須な理由でもあります。DDで確認したことを最終契約までに双方納得がいくよう詰める事、また買収後どうすれば企業価値を向上することが出来るのかを確認した上で買収の実行はなされるべきだと思います。また、買収後DDで発見した企業価値向上策を実際に実行することがとても大切だと思っています。

 次に、DDの費用について書かせていただきます。これは、良く受けるご質問の一つでもあります。DDの費用については、何をどこまで確認するのかで費用は大きく異なります。DDについては、一般的なものとして、会計、税務、法務のDDがあります。また、資産の中で不動産が多い場合には、土壌、アスベスト、境界問題など不動産特有の問題があり、工場を所有していれば環境問題、特許等が重要な場合には知的財産権の問題、従業員の問題として年金や健康保険等の問題、とDDの範囲は多岐に渡ります。その中で、対象会社のDDとして、何を中心に調査すべきかを、事前の資料や説明等から明確にしておくことが重要です。

 また投資額や、株式売買契約など契約の中で、売却側による表明・保証の範囲によっても、対応は違ってきます。限られたDD費用を如何に配分し最良のDDを行うかも、買収側アドバイザーの大きな仕事の一つかと思います。無論、全てのリスクについて、詳細な分析が出来ればそれに越した事はありませんが、コストだけでなく、時間的な制限もある中で、最適なDDを行うことが必要です。以上のようにDD費用と効果はその内容によって大きく変わる事をご理解いただければと思います。何千万掛けても効率的ではないDDになってしまうこともあれば、数百万でも納得できるDDにすることも可能なのです。

双方代理について

 最後に、双方代理について触れたいと思います。双方代理とは、売却側、買収側双方のアドバイザー、所謂仲介として案件に携わることをいいます。一部のアドバイザーは、双方代理を一般的なものとして扱い、その一方で、双方代理はM&Aのアドバイザーとしては有り得ないとの立場にたっているアドバイザーもいます。私も、双方代理には難しい面が多いと思っています。なぜなら、特に価格においては、利益相反が必ずおきるからです。

 但し、良い面が全くないわけではありません。双方の思いや問題としている点を双方から聞くことによって理解が深まり、どの部分をお互いが譲歩すれば、案件が双方にとって良い案件になるかをアドバイス可能な点もあるからです。また、ストラクチャーの立案時点において双方の協力を仰げることは、より合理的な選択肢も広がり、ストラクチャーの検討を効率的に進めることができる可能性もあります。

 しかし、双方代理をするには、次の2つに十分留意する必要があると思います。一つは、明らかに利益が相反する価格算定などについては、第三者意見を取ること。もう一つは、重要な情報を得た場合には、それを双方に明確に伝えることです。

 M&Aアドバイザーとして最も重要な事は、事実を明確に伝え、場合によっては案件を止めるようアドバイスをすることが出来ることです。その案件では報酬がいただけないにしても、そうしたアドバイスをすることが長期的な信頼関係を築くと私は確信しています。

 双方のお客様から信頼を得ていて、双方から依頼された場合には、上記に十分配慮した上で、双方代理を受けることも検討に値するものと私は思っています。

結び

 今回のコラムでは、M&Aの検討、M&Aの報酬、DD、双方代理について、私が思っていることを書かせていただきました。今回書かせていただいた内容については、お客様や同業のアドバイザーにも沢山のご意見があるのではないかと思います。是非とも、多数のご意見をお寄せいただければと思っております。最後まで、ご拝読いただきありがとうございました。

以上

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