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2010年のM&Aマーケット展望 ~過去10年間のマーケット動向を踏まえて~
株式会社アミダスパートナーズ
2010/2/1

はじめに

 昨年は、政治面においては民主党政権誕生、政権交代という大きな変化があり、一方経済面では、いわゆるリーマンショックに端を発する世界的金融危機に伴う景気低迷から抜け出すことができませんでした。年改まり、二番底不況となることが懸念されていますが、是非、反転攻勢の端緒となる年になって欲しいものです。

 翻って昨年のM&Aマーケットは総じて低調で、件数としては2003年以来の2000件割れの状況でした。首尾よくクロージングに至る案件についても、一つとしてプレーンな案件はなく、当事者間合意に至るまでに時間を要する案件が多かったというのは、筆者ばかりの印象ではなかったのではないでしょうか。

 2000年代に入り10年という節目を経て、本年は、どのようなM&Aマーケットとなるか、過去10年間のマーケット動向を振り返りつつ、その展望について私見を申し述べたいと思います。

1.過去10年間のM&Aマーケット・レビュー

 この10年間(2000年~2009年)は、企業価値向上のためのM&Aが産業界に定着する、発展途上期であったように感じています。件数推移を見てみると(図表1参照)、1999年に初めて1000件を突破しました。1998年以前の10年平均件数が約600件程度で安定的に推移していたことに照らせば、1999年にマーケットは非連続な変化を迎えたものと考えています。以降、ほぼ順調な推移を経て、2006年ないし2007年にピークとなり、その後は踊り場を迎えるといった推移を辿りました。

以下では、2000年以降10年間の特徴的な点を振り返ってみます。

【図表1】2000年~2009年のM&A件数推移
  2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年
件数 1,635 1,653 1,752 1,728 2,211 2,725 2,775 2,696 2,399 1,957
出典:株式会社レコフデータ発行「マール」2010年2月号「統計とデータ」


(1) ダウンサイジング目的の案件、再生案件
 「選択と集中」「過剰債務・過剰設備」等が重要な経営課題となり、バランスシート調整型の案件が増加すると共に、1999年ないし2000年ごろを中心として、大型の再生案件などが世間の耳目を集めました。民事再生法の施行、産業再生機構の発足等、事業もしくは企業の再生を支える仕組みも整備されると共に、この分野の各種専門家も増加したように感じています。また、最近では事業再生ADR制度の創設、企業再生支援機構の発足といった新たな動きもみられます。

(2) 経営統合案件
 経済成長は鈍化し業界再編圧力が高まると共に、株式交換・移転制度や、会社分割制度、組織再編税制などの諸制度が整備されたこともあり、JFEホールディングス、第一三共、アステラス製薬、三菱UFJフィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループ、三越伊勢丹ホールディングス、J・フロントリテイリング等、多くの業界において経営統合案件が行われました。

 また最近においても、キリンホールディングスとサントリーホールディングスや、住友信託銀行と中央三井トラスト・ホールディングスが統合を発表する等、業界再編のうねりは継続しているものと考えています。

(3)PEファンドの台頭とMBO案件
 PE(プライベート・エクィティ)ファンドによる投資案件は2003年ごろより増加し始め、その存在感が高まりました。大企業グループのノンコア子会社等の分離独立を目的としたMBO案件を中心に増加しました。また、上場維持に伴うコスト負担、株価低迷等の要因により、非上場化のためのツールとしても活用されるケースも見受けられました。

 2008年後半頃以降は、世界的な信用収縮に伴い、PEファンドが当事者となる案件が激減し、ストラテジック・バイヤーによる案件が主流となっている感がありますが、ノンコア子会社の分離・売却、事業承継案件等においてPEファンドによるリスクマネー供給や経営改革等の機能は今後の産業界にとって有用な面があり、期待したいところです。

(4)敵対的買収と防衛策
 王子製紙による北越製紙に対するTOBをはじめ、スティールパートナーズvsブルドックソース、ライブドアvs日本放送、村上ファンドvs阪神電鉄、等の敵対的買収が試みられ、お茶の間の話題ともなりました。なお、王子製紙vs北越製紙のケースは、伝統的な名門企業が買収提案者となっている点で、稀有なケースであったと思います。

 結果的に見て敵対的買収は、マーケットに定着するに至らず、金融危機等の影響もあり、ほぼ収束した感があります。

(5)クロス・ボーダー案件
 JTによるガラハー買収、日本板硝子によるピルキントン買収、東芝によるウエスチングハウス買収、第一三共によるランバクシー・ラボラトリーズ買収、キリンホールディングスによるサンミゲルビール買収、等、IN-OUT案件が活発化し、中長期の成長のために、海外に活路を求める企業が増加しています。

 またOUT-IN案件は低調の感がありましたが、フォルクスワーゲンとスズキの資本業務提携、ペプシコとカルビーの資本業務提携等といった案件は、外資の経営資源の活用を通じた成長を企図するという点で、従来では見られなかった動きとして記憶に残っています。

2.本年のM&Aマーケット展望

 2000年以降の10年間に、戦略実行手段としてM&Aが使われる様々なパターンが現れ、一部を除き産業界に定着しました。また、前回コラムで弊社石川が述べておりますように、M&Aの質が変化・深化し、発展してきているものと考えられます。2010年はさらにその傾向が強まると共に、今後の10年を見据えた布石が打たれる年になるかのではないかと感じています。以下では、本年のマーケット動向に関するいくつかの注目点を申し述べます。

(1)業界再編圧力の増加、経営統合とグループ内再編
 金融危機に端を発する景気低迷に伴い、M&Aマーケットは踊り場を迎えていましたが、業界再編圧力は高まっているものと考えます。5年、10年先にどういう企業になっていたいかあるいはなるべきか、という点を見据え、その布石としての統合案件が増加するものと感じています。また、企業グループの構造を見直す必要があるケースも増加傾向にあり、グループ内再編も注目されるものと考えます。

(2)ビジネスモデルの再検討、JV組み換え・新規組成
 事業環境の激変に伴い、JV組成当初のビジネスモデルが機能しなくなるケースが増加しており、既存のJV関係を一旦解消し、新たな相手とJVを組み直したり、新規のJVを組成するために子会社の一部持分を譲渡するようなケースも注目されるところと感じています。

(3)「選択と集中」再論、戦略的買収・売却
 かつて言い古された感もある「選択と集中」ですが、今後の中長期に亘る成長を見据え、コア・ノンコアの再検討を行う動きが見られ、次の景気回復局面での飛躍の布石となる戦略的な買収案件も増加するものと考えています。また、より高い成長を目指し、既存の枠組みにとらわれないような戦略的売却案件も組成されるのではないでしょうか。

(4)アジア域内のクロス・ボーダー案件
 民主党政権の東アジア共同体構想などアジア重視の空気が醸成されている中、成長著しい中国・インド等、アジア市場における事業展開を強化する、あるいは、アジア進出の橋頭堡を獲得するといった動きが強まるものと感じています。日本企業の持つ競争力ある技術・ノウハウが、こうした動きの中で、生かされるケースも多いものと考えます。

(5)注目業界、案件サイズ
 内需型産業、グローバル企業を問わずあらゆる業界においてM&Aは活発化するものと思いますが、特に、電機、情報通信、食品、不動産・建設、資源・エネルギー、環境、電子部品、素材、ノンバンク、地銀、ヘルスケアといった業界に注目しています。なお、案件サイズとしては中規模程度の案件が多数を占めるものと感じています。

むすび

 本年の干支は庚寅です。「庚」は新たな状態に変化する、ないし「更新」の「更」を意味し、「寅」は春が来て草木が発生する状態、あるいは伸びる意味を示すそうです。近時のM&Aマーケットは踊り場の状態にありますが、「庚寅」の干支どおり、本年は新たな状態に変化し伸びる年になるものと感じています。

 そのような局面において、筆者自身ないし弊社は、たとえ鋲たる存在であるとしても、企業価値向上に繋がる案件を一つでも多く成就させることで、日本の産業発展に寄与する存在でありたいと考えています。

以上

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